「親から相続した空き家。解体したいけど、費用は誰が払うの?」
「兄弟で相続した場合、支払いはどう分ければいい?」
「もし相続放棄したら、解体の義務はなくなるの?」
土地活用や売却を考え、空き家の解体を検討する際、多くの人が最初にぶつかるのが、この「費用負担」の問題です。特に相続が絡むと、誰が、いつ、どのように支払うべきなのか、話が複雑になりがちです。
支払い責任の所在が曖昧なままでは、計画を進めることはできません。また、費用負担の問題を先送りにした結果、放置された空き家が原因で、より大きなトラブルや金銭的負担を招く恐れもあります。
そこでこの記事では、
「空き家の解体費用は、いったい誰が払うのか?」
という核心的な疑問に、様々なケースを想定しながら詳しくお答えします。
さらに、費用の目安、資金の調達方法、万が一払えない場合の具体的な対処法まで、解体費用にまつわるお金の問題を網羅的に解説します。
目次
空き家の解体費用は誰が払うことになる?
空き家の解体費用を誰が負担するのかは、その空き家がどのような経緯で所有されるに至ったかによって決まります。
ここでは、代表的な4つのケースに分けて、費用負担者が誰になるのかを解説します。
関連記事:空き家の解体にかかる費用の相場は?費用を抑える方法も解説

ケース①空き家の実家を相続した場合
親などが亡くなり、その実家を相続した場合、解体費用を支払う義務があるのは、原則としてその空き家を「相続した人(相続人)」です。民法では、不動産のようなプラスの財産だけでなく、それに付随する義務や負債といったマイナスの財産も相続の対象となると定められています。つまり、建物の所有権と共に、それを適切に管理・解体する責任も引き継ぐことになるのです。
もし、兄弟など複数人で空き家を共同相続(共有名義)した場合、解体費用はそれぞれの持分(所有権の割合)に応じて負担するのが基本です。
例えば、兄弟2人で均等に相続したのであれば、費用も半分ずつ負担します。ただし、そのためには相続人全員が解体に同意していることが大前提です。後のトラブルを避けるためにも、誰がいくら負担するのかを事前に明確に取り決めておくことが極めて重要です。
ケース②実家の空き家を相続放棄した場合
「解体費用を払いたくないから」という理由で相続放棄を考える方もいるかもしれません。相続放棄をすれば、確かに法的には相続人ではなくなり、建物の所有権も解体義務もなくなります。しかし、それで全ての責任から逃れられるわけではない点に、最大の注意が必要です。
2023年4月1日に施行された改正民法により、相続放棄をした人にも、放棄時に占有していた財産を、次の相続人や相続財産清算人が管理を始めるまで保存する義務(管理責任)が残ることになりました。つまり、他に相続人がおらず、自分が相続放棄をしたことで空き家が管理不能な状態に陥る場合、その空き家が原因で第三者に損害を与えないように管理する責任が残るのです。
万が一、空き家が倒壊して隣家を破損させた場合などは、損害賠償を請求される可能性があります。結局、リスクを回避するために、自己負担で解体せざるを得ないケースも少なくないのが実情です。
ケース③古家付きの土地を購入した場合
土地活用を目的として、あえて古い家が建ったままの「古家付き土地」を購入するケースもあります。この場合、解体費用の負担者が誰になるかは、売主と買主の間で交わされる「売買契約書」の内容によって決まります。
契約書に「建物は買主の負担で解体する」といった特約が盛り込まれていれば、当然ながら買主が費用を支払います。「現況有姿(現状のまま)」での引き渡しとなっている場合も、一般的には買主負担となります。土地の価格交渉の際に、解体費用を考慮して値引きを求めることもありますが、いずれにせよ、契約を結ぶ前に解体費用の負担について売主と明確に合意し、その内容を契約書に明記しておくことがトラブル回避の鍵となります。
ケース④借地に空き家が建っている場合
他人の土地(借地)を借りて、そこに自分の家を建てているケースもあります。この借地契約が終了し、土地を地主に返還する際には、原則として土地を借りた当初の状態に戻す「原状回復義務」が生じます。
つまり、建物を解体して更地にし、地主に返還する必要があるのです。したがって、この場合の解体費用は、借地人(建物の所有者)が負担することになります。地主との間で「建物を地主が買い取る」といった特別な取り決めがない限り、解体責任は借地人にあると覚えておきましょう。
空き家の解体費用はどのくらいかかる?
解体費用の負担者が誰かがわかったところで、次に気になるのが「具体的にいくらかかるのか」という点です。解体費用は、建物の「構造」「延べ床面積(広さ)」、そして「立地条件」の3つの要素で大きく変動します。
まず、構造別の1坪あたりの費用相場は以下の通りです。
- 木造(W造): 坪単価4万円~5万円
- 鉄骨造(S造): 坪単価6万円~7万円
- 鉄筋コンクリート造(RC造): 坪単価7万円~8万円
例えば、ごく一般的な木造30坪の空き家を解体する場合、「30坪 × 4万~5万円」で、建物の本体工事費だけで120万円~150万円程度が目安となります。
しかし、実際の費用はこれだけでは収まりません。この本体工事費に加えて、足場の設置や養生シート、廃材の処分費、重機の運搬費などが「付帯工事費」として加算されます。
さらに、庭木やブロック塀、カーポートなどの撤去、家の中に残された家具(残置物)の処分、アスベストの除去作業などが必要な場合は、追加で数十万円、場合によっては百万円以上の費用が発生することもあります。
正確な費用を知るためには、必ず複数の解体業者から現地調査の上で見積もりを取り、その内訳を詳細に比較検討することが不可欠です。
空き家の解体費用の資金調達方法
百万円単位となる解体費用を、自己資金だけですぐに用意するのは難しい場合もあるでしょう。しかし、諦める必要はありません。
解体費用を賄うための、いくつかの資金調達方法が存在します。
方法①補助金を利用する
多くの自治体では、危険な空き家の解体を促進するために、費用の一部を補助する制度を設けています。倒壊の危険性がある「特定空き家」に認定されることなどが条件となりますが、審査に通れば、解体費用の2分の1(上限50万円)といった形で補助金を受け取れる可能性があります。
これは返済不要のお金であり、最も活用したい資金調達方法です。制度の有無や条件は自治体によって大きく異なるため、まずは空き家が所在する市区町村の役所のウェブサイトを確認するか、担当窓口(建築指導課など)に問い合わせてみましょう。
関連記事:空き家の解体に利用できる補助金はある?注意点も解説
方法②空き家解体ローンを利用する
金融機関によっては、空き家の解体費用に特化した「空き家解体ローン」という商品を用意しています。また、一般的なリフォームローンや、使途を限定しないフリーローンを解体費用に充てることも可能です。無担保で借りられるローンが多いですが、その分、住宅ローンなどに比べて金利は高めになる傾向があります。
複数の金融機関の商品を比較検討し、返済計画に無理がないかを慎重に判断することが重要です。解体後の土地活用で収益が見込める場合は、その事業計画を提示することで、融資審査が有利に働くこともあります。

空き家の解体費用が払えない場合の対処法
ローンを組むのも難しい、補助金だけでは足りないなど、どうしても解体費用が払えないという状況に陥ることもあるかもしれません。そのような場合でも、いくつかのできる対処法があります。
対処法①相続後に貸出・売却する
解体するのではなく、建物をそのままの形で活用する方法です。リフォームや修繕を行って、賃貸物件として貸し出し、家賃収入を得るという選択肢があります。また、古家付きの土地として、現状のまま売却することも可能です。
買主側でリノベーションして住む、あるいは解体して新築するなど、活用方法は買主に委ねられます。解体費用がかからないのが最大のメリットですが、買い手が見つかりにくい、売却価格が安くなるといったデメリットもあります。
対処法②相続財産清算人の申し立てを行う
相続人全員が相続放棄をし、他に管理する人がいない場合に、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てる方法です。相続財産清算人は、弁護士などが選任され、故人の財産(空き家や預貯金など)を管理・清算します。空き家を売却するなどして現金化し、その中から解体費用や管理費用を支払い、残った財産があれば国庫に納められます。ただし、この手続きには、裁判所に数十万~百万円程度の予納金を納める必要があり、時間もかかるため、最終手段と考えるべきでしょう。
対処法③更地にして土地を活用・売却し解体費用を回収する
解体費用を「先行投資」と捉える考え方です。ローンなどを利用して一旦解体費用を支払い、更地にした土地を駐車場経営などで活用して、その収益でローンを返済していく方法です。
特に、一括借り上げ方式のコインパーキングであれば、初期投資や管理の手間をかけずに安定した収入を得られます。また、更地にすることで土地の価値が上がり、より高く、早く売却できる可能性も高まります。売却で得た資金で解体費用を賄うというのも有効な手段です。
対処法④空き家付きの土地を売却する
「古家付き土地」として、現状のまま個人に売却する方法です。解体費用を負担する必要がなく、現状のまま手放せるのが最大のメリットです。
ただし、建物の状態が悪かったり、立地が悪かったりすると、なかなか買い手が見つからない可能性があります。また、買主は解体費用を負担することになるため、その分、土地の売却価格は更地の場合よりも安くなるのが一般的です。
対処法⑤業者に買い取ってもらう
個人への売却が難しい場合、不動産買取業者に直接買い取ってもらうという方法もあります。業者は、買い取った後にリフォームして再販したり、解体して駐車場や新築住宅用地として活用したりします。仲介手数料が不要で、スピーディーに現金化できるのが大きなメリットです。
ただし、買取価格は市場価格の7〜8割程度になることが多く、売却価格は最も安くなる傾向にあります。手間をかけずに、早く確実に手放したい場合に有効な選択肢です。
空き家の解体費用を安くする方法
解体費用は高額ですが、工夫次第で少しでも安く抑えることが可能です。
業者に依頼する前に、できることから始めてみましょう。
方法①自力でできる作業を事前に済ませる
解体費用の中には、建物の本体工事以外の費用も多く含まれています。その中で、自分でできることを事前に済ませておけば、その分の費用を削減できます。
最も効果的なのが、家の中に残された家具や家電、衣類などの「残置物」の処分です。これらを業者に処分を依頼すると高額な産業廃棄物扱いになるため、自治体の粗大ごみなどを利用して自分で片付けておくだけで、数十万円の節約になることもあります。
また、庭の草刈りや、自分で撤去できる範囲の小さな庭木や物置の解体なども、事前に済ませておくとよいでしょう。
方法②解体業者の閑散期に依頼する
解体業界にも繁忙期と閑散期があります。公共工事が増える年度末(2月~3月)や年末(11月~12月)は繁忙期にあたり、業者のスケジュールが埋まっているため、価格交渉が難しくなります。
一方で、天候が不安定な梅雨時期(6月~7月)や、酷暑で作業効率が落ちる夏場(8月)は、比較的仕事が少ない閑散期とされています。工事の時期を特に急がないのであれば、こうした閑散期を狙って依頼することで、業者が価格交渉に応じてくれやすくなり、費用を抑えられる可能性があります。
自力で空き家を解体することは可能?
「費用を極限まで抑えるために、自分で解体できないか?」と考える方もいるかもしれません。結論から言うと、専門的な知識や資格を持たない素人が自力で空き家を解体することは、現実的に不可能であり、絶対に避けるべきです。
その理由は多岐にわたります。
まず、建物の構造を理解せずに解体を進めると、予期せぬ倒壊を招き、自らが重傷を負うだけでなく、近隣の家屋や通行人を巻き込む大事故に繋がりかねません。また、解体で発生した木材やコンクリートガラなどの廃棄物は、「産業廃棄物」として法律に則って適正に処分する必要があり、無許可で処分すると不法投棄として厳しく罰せられます。
さらに、アスベストが使用されていた場合、飛散防止措置を講じなければ大気汚染防止法違反となり、健康被害を引き起こす恐れもあります。このように、安全面、法律面、環境面のいずれから見ても、自力での解体はリスクしかありません。解体は、必ず建設業許可や解体工事業登録を持つ、専門の業者に依頼してください。

空き家を放置するリスク
解体費用が払えないからといって、空き家をそのまま放置し続けることには、費用負担以上に大きなリスクが伴います。
放置がもたらす危険性を具体的に見ていきましょう。
リスク①維持費が継続的に必要になる
空き家は、所有しているだけでお金がかかります。毎年課税される固定資産税・都市計画税はもちろんのこと、建物の劣化を防ぐための修繕費、庭の草刈りなどの管理費、火災保険料など、
継続的な出費が必要です。これらの費用は、空き家である限り、永遠にかかり続けます。
リスク②老朽化による倒壊リスクが高まる
適切な管理がされない空き家は、急速に老朽化が進みます。屋根や壁が剥がれ落ちたり、建物が傾いたりし、最終的には台風や地震などの自然災害をきっかけに倒壊する恐れがあります。
もし倒壊によって近隣の家屋や通行人に被害を与えてしまった場合、所有者は多額の損害賠償責任を負うことになります。
リスク③犯罪が発生する可能性がある
人の気配がない空き家は、犯罪の温床になりやすい場所です。ホームレスや非行少年の不法侵入、ゴミの不法投棄の場所にされる、さらには放火されるといった事件に巻き込まれるリスクが高まります。
これらの犯罪は、近隣住民に大きな不安を与えるだけでなく、所有者自身の管理責任が問われることにもなりかねません。
リスク④害獣・害虫が増殖する
管理されていない空き家は、ネズミやハクビシン、ゴキブリといった害獣・害虫にとって格好の住処となります。一度住み着かれると、建物内で繁殖し、悪臭や騒音、建物の損傷を引き起こします。
さらに、そこから近隣の住宅へと被害が拡大し、地域全体の衛生環境を悪化させる原因にもなります。
解体費用を誰が払うかは複雑な問題だがさらなるリスクを避けるため早期に解決しよう
「空き家の解体費用は誰が払うのか」という問題は、その状況によって様々ですが、基本的には「その建物の所有者」が負担の義務を負います。相続した場合は相続人が、共有名義であれば持分に応じて、というのが大原則です。
そして、その費用は決して安いものではありません。しかし、ローンや補助金といった資金調達の方法があり、万が一払えない場合でも、売却や買取、土地活用といった多様な対処法が存在します。
最も避けなければならないのは、費用負担の問題を先送りにして、空き家を放置し続けることです。放置は、倒壊や犯罪、衛生問題といった様々なリスクを生み出し、結果として解体費用以上の損害や責任を負うことになりかねません。
解体費用は、土地という資産を安全に、そして有効に活用するための「先行投資」と捉えることが重要です。この記事で紹介した知識を参考に、ご自身の状況に合った最適な解決策を見つけ、専門家とも相談しながら、前向きに土地活用への一歩を踏み出してください。






