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相続放棄した空き家は誰が解体するの?費用についても解説

        
公開日 2025.11.04 更新日 2025.11.05
    

「相続放棄した実家だが、そろそろ解体してしまおうか」と考えたとしても、放棄していたら叶いません。
ご兄弟がいらしても、全員相続放棄をしていたら、空き家は解体することも売却することもできないのです。

 

ではどうすればよいのか、本記事ではそのあたりを詳しく解説し、相続して解体する場合の費用の相場も紹介します。

相続放棄した空き家は解体できない

まず大前提として、相続放棄した人は空き家を解体できません。
なぜなら、相続放棄した時点で所有者ではなく、他人の財産である空き家を勝手に処分(解体)することは許されないからです。

 

ただし相続放棄した人であっても、相続財産の保存行為は認められます。
2023年4月の民法改正で、管理行為から保存行為へ名称変更されましたが、内容は同じで旧実家の建物を管理保全することを指します。

 

これには割れた窓ガラスの修理や、庭の草むしりなどが該当しますが、空き家の解体は保存行為ではなく処分行為なので、相続を単純承認したものと見なされてしまうのです。

相続放棄に関する2023年4月ルールとは

2023年4月の民法改正では、管理行為から保存行為への名称変更とともに、ルールが一部変更され、相続放棄後の管理義務が明確化されました。
それまでの民法では、相続放棄をした相続人であっても、次の相続人が管理を引き継ぐまでのあいだは、“自己の財産と同一の注意義務をもって”管理する必要がありました。

 

それが2023年4月の民法改正によって、「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している者」に管理義務が移行しました。

 

「現に占有している者」とは、事実上、支配や管理をしている者を指します。

 

具体的には、以下の人が該当します。

  • 相続放棄をした相続人が実際に住んでいる場合
  • 相続財産である建物を賃貸借契約で借りている場合
  • 相続財産である土地を駐車場として使用している場合

たとえ、自分以外に相続人がいない場合や自分も含めた相続人のすべてが相続を放棄した場合でも、「現に占有している者」でなければ管理義務は負わないことになったのです。
相続人全員が相続放棄をした場合は、後述のように空き家は国庫に帰属します。
国庫に帰属した空き家は、競売にかけられて売却されます。

 

参照元:「民法等の一部を改正する法律(令和六年法律第三十三号)第九百四十条」

空き家を相続放棄するメリット

なぜ、空き家となってしまった物件は、相続放棄を検討すべきなのでしょうか。
ここからは、空き家を相続放棄するメリットについて解説します。

メリット①負債を相続せずに済む

相続人になると、被相続人(故人)のプラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産も無条件ですべて相続することになります。
財産を“えり好み”して相続することはできないので、「家屋だけいらない」というわけにはいきません。
マイナスの財産を引き継ぎたくなければ、すべての相続権利も放棄しなくてはいけないのです。

 

また、空き家が、ローンで購入されていて、その残債があった場合、相続人がローンを引き継ぐことになりますが、相続を放棄すれば、ローンの返済義務を免れることができます。

メリット②空き家の管理責任を負う必要がない

相続放棄をすれば、費用の負担だけでなく、空き家の管理責任もなくなります。
ルール改正で「現に占有している人」以外は管理義務を負わないことが決まったので、相続放棄してしまえば万全というわけです。
遠方に住んでいる、あるいは、忙しくて管理ができない場合でも、建物と縁を切ってしまえば管理業務や修繕費、管理費などの支払いから解放されます。

 

ただし、空き家を売却する場合には、清掃や修繕を行い、買主が見つかるまで管理する必要があるので、この場合は「相続放棄しても管理義務が残るケース」となります。

メリット③固定資産税や都市計画税などからの支払いを行わなくて済む

空き家を相続すると、ローンだけではなく、固定資産税や都市計画税などの税金も支払わずに済みます。
毎年30万円程度の固定資産税を支払っている空き家所有者は少なくありませんが、相続放棄すればこの費用も無用になります。
今の時代、これだけでも、相続放棄の大きな理由となりそうですね。

空き家を相続放棄するデメリット

相続放棄すると、メリットばかりでなくデメリットも甘んじて受けなくてはなりません。
いくつか典型例を紹介します。

デメリット①プラスとなる財産を相続放棄できない

相続放棄は、プラスの財産も含めてすべての相続財産を放棄することになりますから、空き家が首尾よく売却できた場合も、その売却益には関与できません。
預貯金や土地などほかのプラスの財産も相続できなくなります

デメリット②手続きに手間と時間がかかる

相続を放棄するには、家庭裁判所に申述する必要があります。
この申述が受理されるまでには3か月程度かかることもしばしばです。
自分で相続放棄手続きをするのが面倒であれば、弁護士・司法書士に依頼するのもよいでしょう。

デメリット③一度相続放棄すると、撤回できない

相続放棄は、一度手続きをしてしまうと、基本的に撤回できません。
相続放棄をしたあとに、空き家に高値の買い手がついてもあとの祭りです。

 

相続放棄をする前に、本当によいのか、空き家以外に見落としている資産はないのか、慎重に検討しましょう。

空き家を放置するリスク

相続放棄の際に被相続人が所有する不動産に住んでいた相続人などは、相続放棄後も空き家の保存義務が生じる場合があります。
これは相続財産清算人が決定するまでのあいだ、相続放棄した元相続人が「現に占有している者」として空き家を管理する責任を負うからです。

 

もし、空き家を相続してから管理をせずに放置していると、次のようなリスクが考えられます。

 

空き家を放置すると考えられるリスク

  • 損害賠償請求されるおそれがある
  • 解体費用の負担を求められるおそれがある
  • トラブル・事件に巻き込まれるおそれがある

築年数が浅ければ別ですが、老朽化した空き家は建物の耐久性が低下し、強風や地震などでいつ倒壊するかわかりません。
倒壊して隣家や通行人に被害を与えた場合、損害賠償請求されるおそれがあります。
また、放置空き家は火災発生のリスクも高く、衛生・環境面でも近所迷惑な存在であり、事故が発生すればたちまち訴訟沙汰となる可能性が高いので気をつけましょう。

 

放置された空き家で建物の倒壊や放火、不審者の不法侵入といったトラブルが起きた場合、警察から事情を聞かれたり、共犯を疑われたりするおそれもあります。
民事に加え場合によっては刑事責任を問われかねないので、老朽空き家はきちんと責任を持って管理しましょう。

 

法律改正で自分以外に相続人がいない場合や相続人のすべてが相続を放棄した場合でも、「現に占有している者」でなければ空き家の管理義務は負わないことになりました。

 

ただ、建物の解体が必要な場合はまた別です。
そこに住んでいない全員が相続放棄したら、解体することはできません
それではまずいので、後述のような方法をとる必要があります。
もし、自治体から特定空き家に指定され、強制的に建物が解体された場合(強制代執行)にも、相続放棄をしていれば解体費用を負担することはありません。

空き家を解体する権利は誰にある?

繰り返しになりますが、相続放棄した人は空き家を解体できません。
なぜなら、相続放棄した人は所有者ではないので、他人の財産(空き家)を勝手に処分(解体)できないからです。
相続放棄すると相続人ではないので、空き家を解体する権限を持っていません。
冒頭でも述べた通り、相続放棄した後に空き家を解体すると、単純承認とみなされる可能性もあります。

 

相続放棄したあとの解体問題などが気になるのであれば、相続財産清算人の選任申立てをしましょう。
相続財産清算人は、相続人がいない場合に、遺産を清算して国庫へ帰属させるまでの一連の業務を担う制度であり、民法951条以下に定められています。
空き家の管理を引き継ぎ、買手がいれば引き渡すのも当該清算人です。

 

相続財産清算人を選任する場合は予納金として20万~100万円程度かかるほか、申立費用として数千円、専門家報酬として月1万~5万円程度かかります。

 

空き家の解体費用はもちろん、相続財産清算人の予納金も高額ですから、空き家を相続しなくても手元にまとまったお金があると安心です。

 

空き家の解体を決める権利は、相続人である所有者にありますが、相続人全員が相続放棄した場合は、自治体か空き家の買い手ということになるでしょう。
それぞれ説明します。

自治体

相続人が全員、相続を放棄した財産は、「相続人の不存在」が確定したのち国庫に帰属することになります。
この相続人の不存在を確定させるには、相続財産清算人の選任が必要です。

 

相続人の不存在が確定すれば、国の財産なので空き家が不要であれば解体します。

 

相続財産清算人を選任せずに、行政代執行により自治体が解体することもありますが、それは、“特定空き家”に指定され、改善命令に従わない場合などかなり特殊なケースです。
行政代執行による解体が可能なら、相続人の不存在が確定するまで待つ必要はないものの、あくまでペナルティとして実行されるものであり、モラル面でもおすすめできません。
かかった解体費用は請求されないとはいえ、そこまで放置していると近隣への迷惑であり倒壊でけが人が出たら訴訟問題に発展するおそれもあります。

空き家の買主

相続人が全員相続放棄した後に、空き家の買手(引取手)が見つかったとしても、相続財産清算人を選任しなければ売却できません。
空き家を解体するかどうかは購入した所有者の一存です。

相続放棄した空き家の解体費用

相続放棄した家の管理を誰かが引き継いだ際、いずれ必要になるのが解体費用です。
最後にこの解体に関するお金についても触れておきましょう。

 

木造住宅であれば、相場は、1坪あたり3万~5万円あたり。
一般的な広さである30坪の木造住宅を解体する場合は、90万~150万円ほどかかる計算になります。
建物の大きさや建物の構造、立地条件によっては、これより高くなり、特に、道幅が狭く重機が入れない場所や、アスベスト建材が使用されている場合は跳ね上がります。
なかには数百万円単位というケースもあるので、事前に見積もりを取っておきましょう。
解体費用を抑えるために、自治体の補助金制度を利用できる場合があります。

 

一般的な解体費用の相場(坪単価)

  • 木造:3万1,000~4万4,000円
  • 鉄骨造:3万4,000~4万7,000円
  • RC造(鉄筋コンクリート):3万5,000~8万円

解体費用を抑える方法

解体費用をできるだけ安く抑えるためには、解体費用の相場を知っておくことはもちろんですが、それ以外にも次のようなポイントがあります。

自身でできる解体は業者への依頼前に先にやっておく

解体前に自分でできるところは作業を済ませておくのも、解体費用を抑えるコツです。
建物の解体はプロに任せるにしても、DIYで作業できる場所はほかにもあります。

 

解体工事の前に自分でできる事前作業

  • 家の中の残置物の片づけ
  • 納屋や倉庫の解体
  • 花壇や庭石の撤去
  • 庭の樹木の伐採

残置物の不用品処分は時間がかかるので早めに手を付けておきましょう。
業者に任せると別途費用が発生します。
大きめの粗大ごみは自治体の処分を利用すると費用を節約することができます。

自治体が提供している補助金を活用する

老朽化した空き家問題解消のために、各自治体が解体費用への助成を行っています。

 

岡山市のように、空き家解体や敷地内の門扉・植木等の撤去などに、工事金額の3分の1まで補助している自治体もあります
なるべく解体費用を抑えるためには、こうした自治体の補助金も利用するとよいでしょう。

解体業者の閑散期を狙う

可能であれば、解体工事は公共工事が多く解体業者の繁忙期である2月、3月を避けて依頼するのがおすすめです。
シーズンピークは料金も高くなります。
比較的すいているのは4月から10月くらいまでの期間です。

相続放棄した空き家の処分は想像以上に厄介!

空き家を相続放棄すると、管理責任を免れますが、ほかの資産も相続できなくなるので、よく検討してから決めましょう。

 

老朽空き家は放っておくと、トラブルのもと。
早めに解体したほうが安心ですが、相続放棄してしまえば勝手に解体することはできません。
他に相続人がいなければ、自分で管理するか、相続財産清算人を選任して空き家の処分を一任することになりますが、これには少額とはいえないお金が必要です。
空き家を相続して解体するにも、まとまった費用が必要なので、相続リストに空き家があったら、早めに対策を考えましょう。

 

解体後の土地活用でお悩みでしたらコインパーキング運営の老舗ユアーズ・コーポレーションにご相談ください。

コラム監修者

太田 佳里

太田 佳里(オオタヨシサト)

株式会社ユアーズコーポレーション

パーキング事業部 マネージャー

宅地建物取引士 2級土木施工管理技師

<略歴>

駒澤大学を卒業後、不動産業界へ就職

<コメント>

弊社では創業から50年不動産の有効利用、資産管理を一貫して行ってまいりました。土地活用のエキスパートとしてオーナー様のご要望にお応えするサービスの提供を行ってまいります。

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