「空き家解体の見積もりを依頼したが、思ったより高額だった…」
そんな方におすすめなのが、“空き家解体ローン”です。
その名の通り、低金利で利用できる解体費用専用ローンで、低金利、担保・保証人不要、返済期間が柔軟に設定できるといったメリットがあります。
気になるのは、審査が通りやすいかどうかですね。
この記事ではそのあたりのところを含め、空き家の解体に使えるローンのあれこれを紹介します。
目次
空き家解体ローンとは
空き家の解体には、通常、数十万円以上もの費用がかかります。
自己資金では賄いきれず、費用捻出に頭を悩ませている方もいるのではないでしょうか。
そんな空き家解体に利用できる専用ローンがあります。
難工事が予想され100万円以上の見積もりが出た場合でも、ローンを活用すれば、解体費用の資金調達は可能です。
解体費用の支払い方法は、現金での一括払いないし分割払いが一般的です。
着工前に全額支払うか、工事代金の2〜3割を前払いして、工事完了後に残りを支払うかたちが通常のパターンです。
クレジットカード払いや分割払いに対応している業者は少なく、解体工事を行うには手元にまとまった資金を準備しておく必要があります。
空き家解体専用ローンは、手元に十分な資金がない場合でも、工事を依頼できる有効な方法です。
地場の銀行が空き家除却による地域活性化を目的に取り扱っていることが多く、担保や保証人が不要、金利が低い、比較的審査に通りやすいといった特徴があります。
申請方法は住宅ローンと変わりません。
融資を申し込み、審査を受けて融資を受けるという流れになります。
空き家解体ローンの必要性
空き家解体の費用相場は30坪で100万~120万円、50坪で150万~200万円、100坪で300万~350万円と高額です。
後述する補助金を利用したとしても、交付されるのは工事完了後であるため、あらかじめ自分で解体費用を準備しておく必要があります。
そこで空き家解体ローンの出番というわけです。
空き家の解体に利用できるローン
空き家の解体に利用できるローンは次の4つです。
空き家の解体に利用できるローン
- 空き家解体ローン
- 住宅ローン
- プロパーローン
- フリーローン
それぞれのメリット、デメリットは下表の通りです。
解体工事に活用できるローン一覧
| ローンの種類 | メリット | デメリット |
| 空き家解体ローン | ・低金利 ・柔軟な返済期間 ・解体費用専用ローン ・審査は比較的通りやすい |
・金融機関によっては審査が厳しい場合がある ・業者選定に制約がある・借入額に上限 |
| 住宅ローン | ・低金利 ・長期返済が可能 ・高額借入が可能 |
・解体費用専用ではない ・手続きが複雑 ・担保が必要 |
| プロパーローン | ・低金利 ・返済期間が柔軟 ・高額融資が可能 ・用途が自由 |
・審査が厳しい ・担保が必要な場合がある ・手続きが複雑 |
| フリーローン | ・利用目的が自由 ・迅速な審査と融資 ・担保不要 ・必要額に応じた融資 |
・金利が高い ・返済期間が短い ・借入限度額に上限あり ・厳しい審査基準 |
続いて各ローンの詳細を説明します。
空き家解体ローン
空き家解体ローンは、その名の通り、低金利で利用できる解体費用専用ローンです。
自治体と金融機関が連携して空き家対策を進めるために創設されました。
取り扱いは主に地方銀行や信用金庫といった地域密着型の金融機関です。
担保や保証人が不要であること、低金利で借りられること、比較的審査に通りやすいといった特徴があります。
以下、本記事のメインテーマである空き家解体ローンについて、少し詳しく紹介します。
空き家解体ローンは、空き家となっている建物の解体工事で借入ができるローンです。
空き家解体に特化しているため、原則はほかの用途には使用できません。
しかし、特に空き家認定が必要なわけではないため、誰も住む予定がなければ利用可能なのです。
解体工事を行うということは、“誰も住まない=空き家”ということですから、個人の住宅であればほぼすべての解体工事に使えるといってもよいでしょう。
ご自身名義の家だけでなく、“3親等以内の親族”など家族・親族が所有する空き家にも使える便利なローンです。
以下は、神奈川JAバンクの“空き家解体ローン”の概要です。
| 利用可能者 | 借入時満年齢:満18歳~満75歳未満 最終償還時満年齢:満80歳未満 続して安定した収入がある方 収入状況に不安がない方 |
| 使途 | 空き家解体資金、空き家解体にかかる諸費用 |
| 融資金額 | 500万円以内 |
| 融資期間 | 1年以上10年以内 |
| 返済方法 | 元利均等返済(ボーナス併用返済可) |
| 担保 | 不要 |
| 融資金利 | 固定金利選択型、変動金利型 |
最終返済時の年齢や費用に含まれる項目などは、金融機関によって違いがあります。
また、さまざまなタイプの解体専用ローンがあるため、複数の金融機関のサイトをチェックすることをおすすめします。
住宅ローン
解体費用に住宅ローンを使うこともできます。
主に、新築や中古住宅の購入、リフォーム、建て替えに利用するローンですが、建て替えの場合には解体費用を建築費用と一緒に融資してもらえます。
銀行に相談する際は、建築会社からの見積書と解体費用の見積書を一緒に提出すると手続きがスムーズです。
ただし、解体費用のみには利用できません。
また解体工事と建て替え工事を別々の業者に依頼することも基本的にはできないことが多いです。
プロパーローン
プロパーローンは“無担保ローン”とも呼ばれ、結婚や旅行、引っ越し、教育費など多目的に利用できるローンです。
担保や保証人が不要で、低金利で利用できますが、その分審査は厳格で安定した収入や信用情報が求められます。
申請から融資まで2週間から1か月以上かかる場合があるので、かなり前からの準備が必要です。
フリーローン
フリーローンはプロパーローンと同様、多目的に利用できるローンで、利用用途に制限がないため、解体費用にも利用可能です。
ただし、借入可能額は低め(300万~500万円)に設定されています。
審査が比較的簡単で、融資までのスピードが早いため、急ぎで資金が必要な場合に向いています。
用途の自由度が高い分、金利はプロパーなどほかのローン商品より高めです。
また、返済期間が比較的短期(1〜7年程度)に設定されることが多く、毎月の返済額が高い傾向にあります。
ローンを提供している主な銀行
続いて、大手都市銀行が扱っている解体に使えるローンを具体的に紹介します。
解体工事を行う際は住宅ローンや解体ローンだけでなく、プロパーローンやフリーローンなどのローンも利用できることを説明しました。
複数の金融機関のサービス例を把握し、選択肢を持っておくと役に立ちます。
下表を参考に各銀行のサービス内容を把握しましょう
三井住友銀行
まずは、三井住友銀行から。
ローンはフリーローンで借入可能金額は上限300万円となっています。
| ローンの種類 | フリーローン(無担保) |
| 借入可能金額 | 10万~300万円 |
| 借入可能期間 | 1年~10年 |
| 担保・保証人の有無 | 不要 |
| 金利 | 変動金利方式、固定金利方式 |
| 借入可能年齢 | 満20歳~満65歳以下 |
| 条件 | 前年度税込年収が200万円以上、現在安定した収入がある方、プロミス株式会社の保証を受けられる方、契約時に来店できる方、日本国内在住の方 |
みずほ銀行
続いてみずほ銀行のプロパーローンです。
こちらも借入可能金額の上限は300万円です。
| ローンの種類 | 多目的(無担保)ローン |
| 借入可能金額 | 10万円~300万円 |
| 借入可能期間 | 6か月~7年 |
| 担保・保証人の有無 | 不要 |
| 金利 | 変動金利方式、固定金利方式 |
| 借入可能年齢 | 満20歳~満66歳(最終返済時年齢が満71歳未満) |
| 条件 | 勤続年数2年以上、前年度税込年収200万円以上で継続した安定収入が見込める方、保証会社の保証を受けられる方 |
三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行もフリーローンで借入可能金額は300万円までです。
借入可能年齢が70歳の誕生日までと多少長めとなっています。
| ローンの種類 | フリーローン(無担保) |
| 借入可能金額 | 10万~300万円 |
| 借入可能期間 | 1年~10年 |
| 担保・保証人の有無 | 不要 |
| 金利 | 変動金利方式、固定金利方式 |
| 借入可能年齢 | 満20歳~満70歳の誕生日 |
| 条件 | 前年度税込年収が200万円以上、勤続1年以上 |
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は、スルガ銀行のローンを代理業者として媒介しているところに特徴があります。
借入可能金額は500万円までと他行より多額です。
借入可能年齢は満70歳に設定されています。
| ローンの種類 | スルガ銀行フリーローン(無担保型) |
| 借入可能金額 | 10万~500万円 |
| 借入可能期間 | 6か月~7年 |
| 担保・保証人の有無 | 不要 |
| 金利 | 固定金利方式 |
| 借入可能年齢 | 満20歳~満70歳(最終返済時年齢が満77歳未満) |
| 条件 | 満77歳までに返済可能な方 |
空き家解体ローンを選ぶ際にチェックしたいポイント
空き家解体のローン選ぶときにチェックすべきポイントはどれでしょう。
以下の3つのポイントを挙げてみます。
ポイント①利用条件
空き家解体ローンの借り入れを受ける際は、銀行が指定する利用条件を満たしているかどうかの確認が必要です。
空き家解体ローンの主な利用条件は、以下の通りです。
空き家解体ローンの利用条件
- 資金使途確認資料(解体費用の見積書)
- 事業用の建物ではないこと
- 申込人または親族が所有する建物
上記条件をすべて満たしていないと、空き家解体ローンは利用できません。
利用目的が自由なフリーローンと違い、使途は厳しくチェックされます。
自身が所有する居住用の建物の解体であることはもちろん、解体業者からの見積書は必ず提出できるよう用意しておいてください。
ポイント②金利条件
金利については利率とともに、金利のタイプもチェックしましょう。
ローンの金利には、変動型と固定型の2種類があります。
変動型は、融資期間中に金利が変動するタイプです。
固定型よりも利率は低めですが、政府の金利政策や社会情勢の変化で金利が上昇するリスクがあります。
短期間で返済予定であり、かつ、借入額が少ない場合は変動型がよいでしょう。
一方、固定型は、融資期間中の金利が基本的に変動しないタイプです。
利率は変動型よりも高めですが、社会情勢による金利上昇リスクを軽減できるため、資金計画が立てやすくなります。
逆に、金利が低下した場合は高い金利で固定されてしまうリスクを背負うことになります。
固定型をおすすめしたいのは返済予定が長期で、かつ、借入額が大きい場合です。
返済計画と照らし合わせて、ローンの金利のタイプをじっくり検討してください。
ポイント③返済方法
ローンを借り入れる際には、返済方法の確認も忘れてはなりません。
総返済額(元金+利息分)が増加することもあるためです。
ローンの返済方法には、元金均等返済と元利均等返済があります。
元金均等返済は毎月支払う返済額のうち、元金の返済額を一定にする方式です。
借入額を返済回数で割った金額が元金の返済額となり、これに残高に応じた利息を加えて返済していきます。
返済当初の毎月の返済額は高くなりますが、返済が進むにつれて元金が減り、利息も減っていくため、毎月の返済額は徐々に少なくなります。
対して元利均等方式は、元金と利息で調整して、毎月の返済額を一定にする返済方式です。
返済当初は利息の割合が大きく、元金の減るペースが遅いですが、返済が進むにつれて元金の割合が増えていきます。
毎月の負担額が一定のため、家計の見通しが立てやすいのが利点です。
ただし、総返済額は元金均等返済と比較して、高額になります。
元利均等返済と元金均等返済のイメージ図

したがって、返済額を抑えたい方には元金均等返済、計画的かつ返済当初の負担を抑えたい方には元利均等返済が向いているといえます。
空き家解体ローンを利用する際の注意点
解体ローンは、解体を急ぐ家主にとってはありがたい存在ですが、一般的なローン同様、あくまで借入れをしているという意識も重要です。
毎月返済を続ける以上、家計への負担は当然考慮しておくべきです。
当然、審査も当然ありますし、利用するための条件もあります。
ここでは空き家解体ローンを利用する際にどういった注意点があるのかを確認していきます。
注意点①審査や融資までに時間がかかる可能性がある
空き家解体ローンを利用する場合、銀行や信用金庫に提出する申込書の作成や必要書類の取得に時間を要します。
これらを揃えて審査を受けるわけですが、融資が実行されるまでに数か月を要することもあります。
こうした事態を見越して、ローンを組んでの空き家解体は、早めに申請を行うようにしましょう。
注意点②見積書を提出する必要がある
解体費用のローンを申請する際には、金融機関から見積書の提出を求められることがあります。
増資額の根拠として提出する、解体工事の具体的な費用を明示した書類です。
適切な融資額を判断する根拠となる書類なので、正確で詳細なものでなければなりません。
解体業者から見積書を取得する際は、複数の業者に依頼して比較すると費用を適正に把握できます。
見積書を早めに用意し、準備を進めておくことで、スムーズな審査に役立ちます。
注意点③利用要件を確認する
金融機関や融資商品の利用要件を事前に確認することも大切です。
ローンの条件や審査基準は金融機関ごとに異なり、利用できる金額や返済期間、金利、用途の範囲も違います。
一部のローンでは解体費用全額が対象にならない場合や、特定の業者の見積り書が必要な場合もあります。
申請者の収入状況や信用情報によっては、希望する融資額が認められない可能性もあるので必ず確認してください。
不明点は事前に金融機関へ相談し、利用要件を十分に理解しておくことで、後のトラブルを防ぎ、スムーズな手続きが可能になります。
注意点④解体費用を支払う時期と融資の入金時期を確認する
解体費用の支払いは通常、工事の完了後か着工時ですが、ローンの融資審査は時間を要するので、そのタイミングに間に合わない可能性があります。
融資実行、入金までに数週間から、長いときには数か月かかることもあるので、事前に業者と支払い条件を確認しておきましょう。
金融機関にも融資実行のタイミングについて相談しておくことが重要です。
手順としては、工事業者に解体費用の見積もりを出してもらい、ローンの審査、手続きを受け、融資実行が決まったタイミングで業者に工事を申し入れるのがベストです。
ただ、業者の繁忙期など時期によっては、お金の工面がついてすぐに工事に取り掛かってもらえないので、ローンを申請した段階で業者と工事時期について相談するとよいでしょう。
空き家の解体費用を用意できない場合の対処法
ローンを利用する以外にも、空き家の解体費用を用意できないときの対処法はあります。
ここでは、自治体の補助金制度の活用と、空き家買取業者への売却という2つの方法を取りあげます。
補助金制度を活用する
ローンを組む以外にも自治体の補助金を活用すれば解体工事費を軽減できます。
補助金は返済しなくて良いので、ローンと併用すれば解体費の負担をさらに軽減できるでしょう。
自治体が提供する補助金制度は、年度毎に募集されるのが一般的です。
2024年度に実施された自治体の補助金制度の一例を挙げると以下の通りです。
2024年度自治体別空き家解体補助金制度例
| 自治体 | 補助金制度名 | 補助内容 |
| 北海道苫小牧市 | 空家等解体補助金 | 工事費の1/2(上限50万円) |
| 東京都 | 東京都空き家家財整理・解体促進事業 | 解体費用の1/2(上限10万円) |
| 東京都台東区 | 老朽建築物等の除却工事費用の助成 | 解体費用の最大1/3(上限50万円) |
| 大阪府大阪市 | 狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度 | 解体費用の最大1/2〜2/3、(上限75万〜100万円) |
| 大阪府東大阪市 | 空き家解体費補助制度 | 定められた計算式で算出(最大100万円) |
| 広島県広島市 | 広島市老朽危険空家等除却補助制度 | 定められた計算式で算出(上限50万円) |
| 福岡県福岡市 | 木造戸建住宅の耐震建替費補助事業 | 20万~30万円の補助金(2階建以下の木造住宅対象) |
| 熊本県熊本市 | 老朽空き家除却補助 | 定められた計算式で算出(上限40万円) |
補助金を利用するには、各自治体が設定する要件を満たす必要があります。
自治体によっては募集件数に上限が設定されていることもあり、早めに募集枠がなくなってしまうこともあります。
まずは、空き家が所在する自治体で当該補助金制度があるかどうか、各自治体に問い合わせてみましょう。
なお、補助金情報は自治体のホームページで必ず最新情報をチェックして、支給条件や申請期限を確認してください。
買取業者に売却する
どうしても解体費用の工面がつかなければ、空き家専門の買取業者に物件を売却するのもおすすめです。
売主から直接物件を買い取り、リフォームをしてから他の買主へと再販するシステムで、首尾よく売却できれば解体工事の手間から解放されます。
リフォームが前提のため、老朽化が進んでいて一般の仲介業者から断られるような物件でも買い取ってくれることが多いです。
ただし、売却価格は市場相場より2~3割程度下がってしまいます。
修繕箇所が多い場合は、さらに下がるかもしれません。
あくまで解体費用の準備ができない方におすすめの方法です。
なお、土地の価値が高ければ、「家付き物件」という形で、一般の不動産会社を通じて売却できる可能性もあるので問い合わせてみましょう。
空家を解体したらそのあとはどうする
空き家解体後の土地の扱いですが、もし売却を検討しているのであれば、解体費用を回収するためにもなるべく高い値段で売ることを考えましょう。
また、建物を解体し、更地となった土地をそのままにしておくと、住宅用地の税制優遇から外れるので固定資産税などが爆上がりします。
住宅地としての特例が適用されないと、固定資産税は部分的に最大6倍、都市計画税は最大3倍となる可能性もあります。
そのため、いくら待っても高く売却できる見通しがつかなければ、早期売却に軸足を移したほうがよいでしょう。
相場を理解し、信頼できる不動産業者に仲介をお願いすることをおすすめしますが、老朽家屋を撤去したあとの土地であれば売却しやすくなっているのでその点は安心です。
空き家解体ローンに使えるローン商品は複数あり 特徴理解して利用を
空き家解体工事にかかる費用は高額なので、一括して用意できない場合はローンを利用するという方法があります。
なかでも、地方銀行や地元の信用金庫が用意する“空き家解体ローン”は空き家の解体工事用に特化した専用ローンです。
ただし、審査が厳しい、業者選定に制約がある、融資額に上限がある、手続きに時間がかかり、手付金の支払いに間に合わないといったデメリットもあります。
こうした場合は、大手都市銀などで扱っている使途自由なフリーローンやプロパーローンの利用を検討しましょう。
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