誰も住まない空き家でも相続したら固定資産税を支払わねばなりません。
解体してしまうと、住宅用地の特例がなくなり固定資産税が跳ね上がります。
一部の自治体では、空き家を取り壊しても、固定資産税の減免を継続する措置を実施していますが、空き家と所有者にいくつかの適用要件があります。
手続き方法も自治体ごとに異なるため、確認が必要です。
今回は空き家の固定資産税の減免申請の方法や流れについて、詳しく取り上げます。
目次
空き家の固定資産税はいくら?
空き家であって居住用の建物が建っている土地は、“住宅用地の特例”により固定資産税、都市計画税が減免されています。
住宅用地の課税標準の特例
| 区分 | 面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
| 小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 価格×6分の1×1.4% | 価格×3分の1×1.4% |
| 一般住宅用地 | 200㎡超の部分 | 価格×3分の1×1.4% | 価格×3分の2×1.4% |
200㎡以下の部分は、固定資産税は更地の6分の1まで減額され、これを越える部分には3分の1の減額が適用されます。
たとえば、土地の評価額が1,000万円の小規模住宅用地の場合、建物が建っていなければ固定資産税額は年間14万円です(固定資産税の税率は1.4%)。
しかし、住宅用地の特例によって、固定資産税は6分の1の約2万3,000円に減額されています。
都市計画税についても同様で、住宅用地の特例により最大3分の1まで軽減されています。
固定資産税の支払いを放置すると発生するリスク
固定資産税は年1回の納税義務がありますが、万が一滞納してしまった場合はどうなるのでしょうか?
ここでは、固定資産税の支払いを放置すると発生するリスクを解説します。
リスク①延滞金が発生するケースがある
納付期限までに税金の支払いができなかった場合、納付期限から20日以内に市町村から督促状が送付されます。
この時点で本来の納税額に加算して払う延滞金が発生しており、その額は東京都の場合納付期限から1か月以内で税額の2.4%、1か月を超えると税額の8.7%と上がっていきます。
督促状が届いたあとも、そのまま滞納し続つづけてしまうと、今度は催告書が届きます。
催告書とは、催告書はこれ以上支払いを待つことはできない、法的手段に訴えるという、という意味の、いわば最後通告です。
リスク②財産を差し押さえられる可能性がある
解体費用を支払えない場合、最終的に財産を差し押さえられてしまうこともあるので、注意が必要です。
滞納者の承諾を得ることなく、役所の徴収職員が滞納者の身辺調査や財産調査を実施し、その結果に基づき、滞納者に対して差押予告書を送付します。
そこに示された期日までに固定資産税と延滞金を納めなかった場合には、財産の差し押さえが確定してしまうので注意が必要です。
差し押さえはまず、預貯金や給与から行われ、それでも支払いきれなかったら家財道具や現金、建物、不動産なども差し押さえられてしまいます。
リスク③財産を公売にかけられる可能性がある
固定資産税の滞納によって差し押さえられた土地や建物は、すぐに退去する必要はないものの、市町村によって公売(競売)にかけられた際には強制的に退去させられてしまいます。
これは、売却額で滞納した分の税金を支払うことになるためです。
以上、固定資産税を滞納した場合の流れをまとめると以下の通りです。
- 督促状の送付
- 財産調査の実施
- 不動産などの財産差し押さえ
- 公売
空き家を所有している方で、もし固定資産税の支払いが困難になった場合は早めに税務担当窓口に相談することが大切です。
特定空き家に指定されると減免の対象外になる
“特定空き家”とは、所有者に放置され、倒壊などの恐れがあると自治体から認定された空き家のことです。
適切な維持・管理が行われないと空き家は朽ちる一方で、倒壊や放火、ゴミの不法投棄、害虫・害獣の発生、犯罪者の拠点使用などさまざまなトラブルの温床ともなります。
そうなると、近隣への被害や、周辺住環境の悪化も十分に予想されます。
そこで国は2015年に「空き家対策特別措置法」を施行し、自治体の判断によって状態の悪い空き家を「特定空き家」に指定して管理・処分に強制力を持たせることにしたのです。
特定空き家の指定にあたっては、1年中、人の出入りがない、水道や電気・ガスが使用された形跡がない、なども判断材料となります。
特定空き家に指定されると発生するリスク
自治体から特定空き家に指定されると、まずは所有者に対して管理や修繕を速やかに行うよう助言・指導がなされます。
この段階で空き家の状態を改善すれば、特定空き家の指定は解除されます。
しかし、指導を受けたにもかかわらず改善が見られない場合は勧告へと進み住宅用地特例が解除され、翌年以降の税負担が重くなって空き家を残しておく意味がなくなります。
また、固定資産税の減免措置が適用されなくなる以外にも次の2つのリスクが生じる可能性があるため注意しましょう。
- 50万円以下の過料が科される
- 行政代執行が実施され解体費用が強制徴収される
それぞれのリスクについて、具体的に解説します。
50万円以下の過料が科されるおそれがある
自治体から「空き家状態の改善」を勧告・命令されたにもかかわらず、それを無視していると、空き家の所有者に対して50万円以下の過料(罰金)が科されます。
自治体はまた、空き家の所有者に事前通知したうえで立ち入り調査を行えますが、正当な理由なくこれを拒否した場合には20万円以下の過料が科されるおそれもあります。
参照元:政府広報オンライン|空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!
解体費用が強制的に徴収されるおそれがある
空き家の所有者が再三にわたる改善要求に従わない場合、あるいは所有者が行方不明の場合、自治体は行政代執行によって強制的に建物を解体する権限を有しています。
行政代執行は、放置されたゴミの撤去や樹木の枝の伐採、家屋の解体などを強制的に執行するものです。
その際に発生した解体費用は、空き家の所有者に請求されますが、安い業者を探してくれるわけではないので、ときに数百万円という高額請求となることもあります。
強制代執行にまで及ぶと、経済面で大きな負担を覚悟しなければなりません。
特定空き家ではなくても、減免の対象外になるケース
「空き家対策特別措置法」の施行後も、周囲に悪影響を及ぼすおそれのある空き家の数は減少せず、むしろ増えつづけている現状にあります。
そこで国は2023年3月の法改正で、放置すると特定空き家になるおそれのある不動産を新たに“管理不全空き家” として区分することとしました。
特定空き家同様、管理不全空き家に指定された物件の所有者には、自治体から改善を促す指導がなされます。
それでも状況が改善されない場合は、住宅用地の特例が解除されるという流れです。
管理不全空き家に指定される可能性がある物件の主な条件は、「窓が割れている」「庭に雑草が生い茂っている」の2つです。
法改正に伴い、全国で管理不全空き家に指定される物件は50万戸に上るという試算も出されています。
所有している空き家が管理不全空き家に指定されないよう、定期的なメンテナンスが欠かないようにしましょう。
もし、「これ以上維持費をかけられない、」「管理作業の労苦がしんどくなってきた」という場合は、なるべく早く空き家を手放すことを検討したほうがよいでしょう。
参照元:国土交通省|空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律
固定資産税減免制度の背景と内容
近年、空き家を解体しても固定資産税を減免する自治体が増えていますが、その背景には全国で空き家問題が深刻化していることが挙げられます。
空き家の解体に踏み切れないでいる理由のひとつは、家を解体して更地にすると住宅用地の特例が受けられなくなり、固定資産税が数倍に膨れ上がってしまうため。
さらには、高額な解体費用を負担しきれないという事情もあります。
こうした家主の事情に配慮し、複数の自治体で、空き家を取り壊しても固定資産税を据え置く措置を取るようになったのです。
これにより、空き家が老朽化する前に、あるいは老朽化してしまった空き家の解体を促進しようという狙いです。
減免となる空き家は基本的に「特定空き家等で、住宅用地の特例が解除されていないもの」が対象となります。
これにくわえ「1981年(昭和56年)5月31日以前に工事着工した家」という条件や、空き家バンクへの登録を求めている自治体もあります。
減免される期間は2年~10年で通常、空き家を解体した年の翌年度からの適用です。
固定資産税の賦課期日が毎年1月1日時点なので、翌年度からの減免対象になるには前年12月31日までに解体を済ませておく必要があります。
固定資産税を減免申請する際の流れ
ここからは、空き家の固定資産税減免申請の具体的な手順を解説します。
手続きのおおまかな流れは、各自治体共通して次の通りです。
①自治体に相談する
固定資産税の減免申請をする前に、まず減免を受けられるかどうか、自治体に事前相談しましょう。
国土交通省の調べによると、2023年12月の時点で全国66市町村が何らかの固定資産税減免措置を実施しています。
全国1,741市町村のうち、実施率はわずか4%弱に過ぎませんからまだまだ高い実施率とはいえません。
お住まいの自治体に減免措置があるか、空き家を解体する前に確認することが大切です。
②自治体による現地調査を受ける
事前相談の後、自治体による現地調査が行われます。
申請者と物件が補助対象の要件を満たしているかを判定するもので、空き家の状態(構造、劣化度合い、居住可能性など)が詳しくチェックされます。
自治体によっても異なりますが、固定資産税が減免される要件をまとめると”人“と”空き家“でそれぞれ以下のような内容です。
| 減免される人 | 減免の対象となる空き家 |
| ・除去した空き家のある敷地の所有者 ・税の滞納がないこと |
・市が「老朽空き家」と認定したもの(自治体の基準による) ・空き家になってから90日~10年以上経過したもの ・1981年5月31日以前に建築されたもの ・特定空き家などに指定され住宅用地の特例が解除されていないもの、など |
減免される人の条件は多くの自治体で共通していますが、減免対象の空き家については自治体によりさまざまな条件が設定されており、上記はほんの一例に過ぎません。
③空き家を解体する
解体費用は基本的に所有者負担ですが、空き家の解体費用に補助金を支給している自治体もあるので、調べてみましょう。
補助対象は自治体によって異なるので、空き家のある自治体のホームページで確認してください。
ただし、補助金は解体後の審査で交付が確定するため、解体前に実費分の現金を用意しておく必要があります。
④減免申請を行う
空き家の解体が済んだら、固定資産税の減免申請を行います。
申請書面の主な記載事項は以下の通りです。
減免申請書面の記載事項
- 除却した空き家の所在地
- 登記上の敷地面積
- 空き家の構造
- 床面積
- 除却(解体)年月日
申請に必要な書類は自治体ごとに異なり、解体の前後の状態がわかる現場写真を求める自治体もあります。
減免が決定したら、市町村から減免決定通知書が送付され、解体された翌年度の固定資産税及び都市計画税が減免されます。
減免申請する際の注意点
減免申請時の注意点を説明します。
これを押さえていないと、申請が認められなかったり、減免が途中で取り消しとなったりすることがあります。
空き家の固定資産税を減免申請する際の注意点は、以下の2つです。
注意点①適用要件は自治体によって異なる
先ほどもお伝えした通り、固定資産税の減免制度は全国一律のものではなく、自治体ごとに制度の有無や、減免の適用要件が違います。
減免期間も解体の翌年度から最長3年間などの規定が設けられており、この期間も自治体によって異なりますが、制度の効力が永続しない点は頭に入れておきましょう。
注意点②減免措置が停止されるケースもある
自治体が設定している減免の期間中であっても、途中で終了となることがあります。
たとえば、福岡県久留米市では、以下の該当した場合は翌年度より減免の適用が停止となります。
- 相続以外の理由で所有者が変わったとき
- 住居としての利用が開始された場合
- 収益を目的とした利用が始まった場合
売買や賃貸の仲介契約が終了した場合
固定資産税の減免を最大限活用するためには、こうした停止条件を理解し、適切な管理を続けることを心がけましょう。
減免申請以外で空き家の固定資産税を抑える方法
空き家の固定資産税を軽減する方法は、減免申請する以外にも以下の5つの対策があります。
売却する
当然ですが不動産を売却してしまえば、毎年の固定資産税や都市計画税等の支払いから解放されます。
売却にかかる税金も「空き家の3,000万円控除」の適用を受ければ減額が可能です。
さらに相続の場合は、相続開始後約3年以内に売却すると譲渡所得を軽減することもできます。
もちろん、不動産の売却によって、まとまった現金を手に入れるメリットも大きいですが、あまり長く放置していると、いざ売却したいときに売れなくなります。
荒廃して価値が大幅に下がってしまうこともあるし、そもそも不動産の価値は年々下落していくからです。
とにかく売却を考えるのであれば、早めに行動するのが得策です。
仲介業者に売却を依頼する
空き家の売却でよくあるのは、①仲介業者に売却先を見つけてもらう、②業者に直接買い取ってもらうといった方法です。
それぞれの特徴を理解し、自身の希望や空き家の状態に応じて最適な方法を選択しましょう。
まず、仲介業者に依頼して売却先を見つけてもらう方法から紹介します。
仲介業者(不動産会社)に買い手を探してもらうと、仲介手数料がかかりますが、こちらの希望価格で売却できる可能性があります。
不動産会社に仲介を依頼するにあたって、売主と仲介業者が結ぶのが「媒介契約」です。
媒介契約とは、売主に代わって仲介業者が売買成功に向けて営業努力を約束する契約です。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
一般媒介契約は、同時に複数の仲介業者へ売却活動を依頼できる契約で、購入希望者があらわれた際に、より良い条件で売却しやすいのがメリットです。
専任媒介契約は、契約をした1社にしか売却依頼ができない契約ですが、自分で見つけた買主とは契約できます。
専属専任媒介契約は、契約をした1社にしか売却依頼ができない契約で、自分で見つけた買主であっても契約は禁止されています。
買取業者に売却する
買取は、売主の所有物件を、不動産会社が直接買い取ることです。
不動産会社に直接買い取ってもらうと、市場価格を下回ることが多いですが(7割程度が相場)、その分早く売り切ることができ、煩わしい思いをしなくてすみます。
物件を買い取った不動産会社は、リフォームなどで再生して商品化し、その後に自社で運用したり再販したりして収益を得るのが一般的です。
また、同業者のネットワークで業者から、買取を希望する業者へ直接譲渡されることもあります。
この場合はリフォームなども買取側で行うので、売主には有利な条件が示されることが多いようです。
賃貸物件として活用する
リフォームしてその空き家を賃貸物件として再生させるのも一案です。
建物の劣化が酷い場合はもちろん、そこまで傷みが酷くなくても、賃貸物件化する以上、ある程度の修繕やリフォームは必要でその分の工費はかかります。
空き家を所有することで毎年固定資産税などが発生しますが、賃貸に出して家賃収入から補うことができれば、それだけで賃貸化する意味はあるでしょう。
賃借人の仲介から、その後の物件の管理まで不動産会社に任せることも可能です。
空き家を取り壊す
空き家が老朽化して賃貸が難しい、買い取ってもらうにしても値段が折り合わない、といった場合には、解体して更地にし、土地活用を考えてみるのも1つの手です。
たとえば、駐車場などにして活用すれば、建物を維持管理する手間や費用がかからず、居住用物件ほど初期投資を要しません。
ただし更地にすると固定資産税が跳ね上がるので、解体費用やランニングコストを回収するには駐車場経営でそれなりの利益を上げる必要があることを踏まえておきましょう。
駐車場は税制上更地扱いですが、コンテナハウスを建てて倉庫として貸し出したり、カフェを開いたりすることで、住宅用地の税制優遇を受けられる可能性があります。
空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、空き家の売主・貸主と買主・借主をマッチングさせる自治体のサービス事業です。
移住・定住の促進や地域活性化を目的としており、主に自治体のウェブサイトなどで空き家情報を公開しています。
登録や閲覧は基本的に無料ですが、自治体が行うのは物件情報の提供までで、契約交渉や契約手続きは当事者間で直接行います。
提携する不動産会社の紹介がある場合もありますが、買主との交渉やトラブル対応は自力で行わなければならないため、トラブルが発生しないよう注意が必要です。
固定資産税減免制度で空き家解体を後押ししている自治体もある
誰も住まなくなった空き家にも、住宅用地の特例が適用され、固定資産税が最大6分の1まで減免されています。
もし、特定空き家や管理不全空き家に指定されてしまったら、この税制優遇が受けられなくなってしまいますが、そうなる前に解体してしまうのも手です。
一部の自治体は、空き家を取り壊しても固定資産税を据え置く措置を取っており、解体費用にも補助金を出すなどして空き家の解体促進を後押しする政策をとっているからです。
お住まいの自治体にこの制度があったら減免申請を行ってみてください。
空き家を解体後の土地活用にコインパーキング運営はいかがですか。
ユアーズ・コーポレーションにご相談ください。





