コインパーキングは手軽に始められる土地活用法として人気がありますが、立地条件や競合の存在、予期せぬトラブルの頻発など、経営失敗のリスクは決して少なくありません。
本記事ではそんなコインパーキング経営で失敗しやすい原因を紹介し、“どこに気をつければよいのか”を重点的に解説します。
これからコインパーキング経営を始める方や、情報収集中の方は必読です。
目次
コインパーキング経営を始める前に知っておきたい基本情報
コインパーキング経営をスタートするには、まずいくつかの基本を理解することが大切です。
ここでは、コインパーキングの種類と経営方式について解説していきます。
- 【種類】
- コインパーキング
- 月極駐車場
- 【経営方式】
- 個人経営
- 一括借り上げ
順に見ていきましょう。
関連記事:コインパーキング経営のすべてを集約!失敗しない始め方を徹底解説
コインパーキング
コインパーキングは、短時間から数時間単位で駐車スペースを利用者に提供し、時間に応じた利用料を徴収するタイプの駐車場です。
フルオートメーションのシステムにより管理され、顧客が自分で駐車料金を支払うセルフサービス形式が一般的です。
繁華街や駅の周辺などに多く、出張先や旅行中、ショッピングなど、不特定かつ短時間の利用者を想定した駐車場経営のスタイルです。
月極駐車場
月極駐車場とは、月単位で駐車スペースを契約し、専有的に利用できるタイプの駐車場です。
この方式では、利用者は毎月一定の料金を支払うことで、自分専用の駐車スペースを確保できます。
主にレンタルオフィスや住宅地で見かけることが多く、同じ場所を継続して利用したい個人や事業者をターゲットとした駐車場経営のスタイルです。
通勤やビジネス利用、住宅地での長期契約などが多く、安定した駐車環境が求められる立地の場合は、こちらを選択するとよいでしょう。
関連記事:月極駐車場の料金の相場とは?損しない駐車場の選び方も紹介
個人経営
個人経営は、土地を所有する個人が、駐車場の運営管理を直接行う方法です。
外部の駐車場管理会社に委託せず、自らの手で集客やマーケティングを行い、地域に根差したサービスを提供することが可能です。
経営者は、駐車場設備の投資、価格設定、清掃といった日々の運営責任を担います。
コインパーキングを個人経営するメリットとして、収益全額が経営者のものになるため、運営が上手くいけば高い利益を得られるという点が挙げられます。
また、価格設定やサービスの内容を柔軟に調整でき、地域の需要やイベントなどに応じて迅速に対応することが可能なのも、メリットの一つです。
顧客と直接関わることで、ユーザーの意見やニーズを経営に反映させやすく、顧客満足度を高めるサービスの提供が行えます。
その一方で、初期投資は全額経営者持ちとなり、設備の運営・維持費も必要になります。
また、日々の運営管理やトラブル対応は経営者の責任となるため、手間や時間が必要で、副業として取り組みたい場合には不向きです。
さらに、市場の変動や競合の出現により、収益が安定せずリスクを負うこともあり得ます。
個人経営方式は豊富な資金力か円滑な資金繰り能力、さらにはコインパーキング経営にかかり切りになる時間的余裕がないと継続は難しいかもしれません。
一括借り上げ
一括借り上げは、管理や運営のすべてを専門業者に委託する経営手法です。
土地所有者は、固定的な賃料収入を得られるうえ、運営リスクや日常の管理負担から解放されます。
この方法では、業者が価格設定や顧客サービスを担い、収益最大化を図るプロのノウハウを活用できる点が魅力です。
そのほか、リスクが少なく低額ながら安定した収入が見込めるのもメリットとして挙げられます。
所有者は業者からの一定の料金を受け取るため、市場変動の影響を受けにくく、経済状況が不安定なときでも一定の賃料収入を確保できます。
また、運営や管理の手間が省けるため、ほかの事業や職務に時間を割くことができ、資産運用を行いながらも日常生活に負担をかけずに済むでしょう。
逆にデメリットとして挙げられるのは、利益の最大化に制限がかかる点です。
借り上げ価格が固定されているため、仮に市場の駐車料金が高騰、あるいは稼働率上昇で利用料収入が増加してもその恩恵を受けにくくなります。
また、土地所有者はパーキング運営に関する意思決定権を事実上放棄するため、業者の経営方針に強く依存することにもなります。
運営業者の財務状況やビジネスモデルの変更が、直接的なリスクへと影響を及ぼす可能性があるのです。
一括借り上げ方式は、長期契約による固定的な賃料収入という安定感はあるものの、それ以上は望めない点で経営の面白みに欠けるのは否めません。
コインパーキング経営で失敗してしまう原因とは
ここからはいよいよ、コインパーキング経営で失敗してしまう原因について詳しく解説していきます。
基本的には、以下に挙げる13個のいずれかに当てはまるケースがほとんどです。
関連記事:コインパーキング経営の失敗とは?原因と対策ポイントを紹介
原因①周辺に競合ができた
コインパーキング経営において、周辺に新しい競合が出現すると、潜在的な顧客を分け合う結果になります。
これによって、利用者が分散し、売上が減少する可能性があります。
また、競合が低料金や割引サービスを提供する場合、顧客を引きつけられる価格競争が発生し、利益率の低下につながるケースもあるため、事前に知っておきましょう。
原因②現地の調査が足りていない
コインパーキング経営において現地の十分な調査が不足していると、需要が見込めない場所に駐車場を設けてしまうリスクがあります。
実際の需要を把握せずに開設すると、結果として空きスペースが続出し、収益は見込めなくなります。
適切なマーケットリサーチを行うことは、安定した収益を生み出すうえで極めて重要です。
原因③適切な料金設定ができていない
コインパーキング経営において料金設定が適切でない場合、利用者にとって魅力的でなくなり、収益に直結する問題が生じます。
高すぎる料金は顧客を遠ざけ、低すぎると経営が成り立たなくなります。
市場調査に基づき、周辺の競合状況と需要に合わせた料金設定が成功の鍵です。
原因④敷地が狭すぎる
コインパーキング経営で敷地が狭い場合、車の出入りがしにくく、使いづらさが顧客満足度を下げます。
狭いスペースは駐車時の事故リスクを高め、それが結果的に利用者の減少につながることもあります。
安全で快適な駐車環境を提供することが、長期的な経営成功には必須です。
関連記事:駐車場に必要な坪数とは?坪数を理解する重要性も解説
原因⑤車を停めにくい地形だった
コインパーキング経営は、形がいびつであったり、狭小地、傾斜があったりする土地でも台数に応じて十分に経営が可能です。
しかし、あまりにも極端な変形地だと、運転者が車を停める困難さを感じて、近隣のほかの駐車場を探してしまうかもしれません。
特に、大型車種に乗る方や運転が苦手な方は、難しい地形での駐車を敬遠しがちなので、利用されにくくなると考えられます。
所有地がそういった土地であれば致し方ありませんが、駐車場経営を始める際は、事前に周辺の道路や立地条件、メインの利用者層なども含めて、“適性”を判断しましょう。
原因⑥賃料の未納が頻発した
コインパーキングは24時間無人のため、ときに違法行為紛いの事案も発生します。
利用料の踏み倒しもそのひとつですが、駐車区画以外の場所に停めたり、ロック板を無理やり越えて出庫したりなど、その手口はさまざまです。
これらは威力業務妨害罪や器物損壊罪に該当しますが、解決を待つより夜間でも撮影できる高性能な防犯カメラを設置するなどの自衛策を講じるのが先決でしょう。
原因⑦収入と経費のバランスが取れない
コインパーキング経営で収入と経費のバランスが崩れると、投資したコストに対して十分な収益が上がらず、経済的な失敗につながります。
予想外に低い利用率や、高額な維持管理費が経費を膨らませ、利益が圧迫されるケースもあります。
適切なコスト管理とリアルタイムでの収益分析が、持続可能な経営を実現することでしょう。
関連記事:コインパーキングは儲かる?利点欠点や経営成功のコツも紹介
原因⑧税金の支払いを考えていない
コインパーキング経営では、税金の支払いを見過ごすことが、経営計画を狂わせる原因になりえます。
固定資産税や消費税など、想定外の税金が発生することで計画的な収支管理が難しくなります。
税金をしっかりと計算に入れておくことで、安定したコインパーキング経営に近づくでしょう。
原因⑨空車の対策を考えていない
コインパーキング経営において空車対策を怠ると、稼働率が低下して収入が減少してしまいます。
効果的なプロモーションや料金戦略を考えないままでは、競合他社に顧客を奪われかねません。
常にマーケットのニーズを分析し、柔軟な対応策を立てることが重要です。
原因⑩駐車場内でトラブルが起きた
先ほど取り上げた駐車料金の踏み倒しや場内の無断駐車、放置車両などは、コインパーキング経営を阻害するトラブルの代表格といえます。
設備の破壊やいたずらなどで、余分な出費が発生し、減収につながるのは避けたいところです。
こうしたトラブルを防ぐためには、防犯カメラを設置するなど、駐車場内の管理を強化する方法を考えましょう。
原因⑪自然災害への備えを怠った
建物を建てず、ほとんど更地のコインパーキングとはいえ、台風の浸水被害、地震による地割れや液状化の発生、火災などの災害で使えなくなってしまうこともあります。
機器類が多いコインパーキングは、月極駐車場よりも自然災害には敏感です。
浸水被害が起これば、駐車しているお客さまの車に被害が及びます。
起こりうる災害リスクを事前に想定し、必要な保険加入など、いざというときへの備えを怠ってはなりません。
原因⑫管理会社の管理がずさんだった
コインパーキングの管理・運営を委託している管理会社の仕事がずさんで、清掃が行き届いていなかったり、機器のメンテナンスに不備があったりするケースもあります。
そのようなことが繰り返されると、不便さから利用者離れが起きるのは目に見えています。
クレームや問い合わせの対応が遅い管理会社も、同様です。
質の高い管理会社を選ぶには、その管理会社がほかに管理している駐車場を見に行き管理状態を把握してから契約しましょう。
原因⑬撤退に費用がかかった
将来的に土地の売却や自宅の建設など、ほかの土地活用方法への転用を視野にコインパーキング経営に乗り出す場合は、撤収時にかかる費用も考慮しないといけません。
機器類や看板、舗装の撤去などには費用がかかるため、これらのコストを見込んで資金計画を立てないと、撤退時の赤字が膨らんでしまいます。
駐車場運営会社に管理を委託している場合は、撤去費用の負担方法はさまざまです。
会社や契約内容によって取り決めが異なるため、事前に確認しておきましょう。
コインパーキング経営で失敗してしまう方の特徴
次に、コインパーキング経営で失敗してしまう方の特徴も見ていきましょう。
こちらは主に以下の2つが挙げられます。
- 定期的に見回りが行えない方
- 手軽さに惹かれて始める方
それぞれ解説していきます。
定期的に見回りが行えない方
コインパーキング経営では、定期的な見回りが非常に重要です。
清掃やメンテナンスを怠ると、パーキングにとって大切な清潔感が失われ、利用者離れへとつながります。
誰も、ゴミが散乱している手入れを怠ったような駐車場に、自分の愛車を停めておこうとは思わないからです。
また、設備の故障が放置されたままだと、全面的な修理もしくは買い替えの必要が生じ、予期せぬ費用が発生する可能性があります。
そのため、駐車場管理は計画的に実施することが重要なのです。
手軽さに惹かれて始める方
コインパーキング経営は手軽に始められるビジネスですが、土地の選定を軽視してはいけません。
需要の少ない場所では稼働率が低く、期待した収益を得られないこともあります。
そのため、地域の駐車ニーズや周辺環境をしっかり分析することが、成功への第一歩です。
コインパーキング経営の成功事例
ここからは、コインパーキング経営の成功事例を3つ、紹介していきます。
事例①月極駐車場の一部をコインパーキングにした
月極駐車場を一部コインパーキング化することで、空きスペースを有効活用できます。
時間貸しで提供することにより、月極で埋まらないスペースからも収入を得られるようになるでしょう。
そして、この柔軟な運用は、地域の駐車ニーズの多様性に対応でき、経営の安定化に寄与します。
事例②使わない小さな土地をコインパーキングにした
小さな土地をコインパーキングに転用することは、空きスペースを収益化する賢い手法です。
狭いスペースでも立地が良ければ、高い稼働率が期待できるでしょう。
これは大小さまざまな土地所有者にとって、手軽に追加収入を得るチャンスです。
ただし、後述のポイントも加味しながら、本当にコインパーキングにして良いか、よく考えて動くようにしてください。
事例③暫定的にコインパーキングとして活用した
土地の活用方法が定まらないあいだはリスクの少ないコインパーキングとして活用し、初期投資を回収したあとにアパート経営に移行するといった手法です。
土地活用会社のアドバイスを受けながら進めるのが一般的です。
詳細な調査に基づいて計画的に行えば、コインパーキングでもアパート経営でも高い利益率を上げることができます。
コインパーキング経営で失敗しないために気をつけるポイント
ここからは、コインパーキング経営で失敗しないために気をつけるポイントを解説していきます。
ここでは網羅的に、以下の6つを紹介します。
- 現地調査を入念に行う
- トラブルの対処法を考える
- 周辺の料金相場を調べる
- 自分に合う経営方式を見つける
- 経営リスクを想定しておく
- 必要なお金の計算を行う
それぞれ確認してください。
関連記事:コインパーキング経営の成功に外せないポイントを徹底解説!
ポイント①現地調査を入念に行う
現地調査は、コインパーキング経営で成功するための重要なファーストステップです。
土地の立地や周辺環境、通行人の流れをしっかりと把握しましょう。
また、競合状況や地域の駐車ニーズも詳しく調査することで、失敗リスクを減らすことにつながります。
もし市場調査の結果、現地の状況がコインパーキング経営に適さないと判断したら、無理して開業しないで違う土地利用法を考えるか、管理会社と相談することをおすすめします。
ポイント②トラブルの対処法を考える
コインパーキング経営で予想外のトラブルはつきものです。
具体的な対処法を事前に準備することで、迅速な解決が可能になります。
たとえば、設備故障時には修理サービスとの連携や緊急連絡体制を整えておくことが重要です。
また、顧客とのトラブルに対しては、明確な利用規約と適切なコミュニケーションプランを用意しておくことが望ましいでしょう。
これらの対策は、信頼性の高い運営を実現するために役立ちます。
ポイント③周辺の料金相場を調べる
周辺の料金相場の調査は、競争力のある価格設定に不可欠です。
相場を知ることで、適切な価格でサービスを提供し顧客を引きつけることが可能になります。
料金が周辺市場と比べて高すぎると利用者は減り、逆に安すぎても利益が出ません。
バランスの良い料金設定がコインパーキング経営の成功へつながります。
ポイント④自分に合う経営方式を見つける
自分に合った経営方式を見つけることも大切です。
経験や知識、資金力に応じた運営プランを立てることが必要になります。
フルオートのシステムを選ぶか、スタッフの常駐が必要かも検討したいポイントです。
最適な運営方法は、経営者のライフスタイルや目指す利益に密接に関連しているといえます。
ポイント⑤経営リスクを想定しておく
経営リスクを事前に想定することは、コインパーキング経営の成功に欠かせないポイントです。
稼働率の低下対策としては、マーケティング活動の強化や価格戦略の見直しが効果的です。
また、競合が増えた際は、独自のサービス展開や顧客満足度向上で差別化を図る必要があります。
リスクへの対応策を計画に含めることで、不安定な市場環境にも柔軟に対応できるでしょう。
ポイント⑥必要なお金の計算を行う
コインパーキング経営では初期投資だけでなく、1か月あたりの収益や税金なども正確に計算することが大切です。
地代や税金、保険、メンテナンス費用を含めた綿密な出費計画を立てておきましょう。
収益性を維持するためには、予想される売上からこれらの経費を差し引いた純利益の把握が欠かせません。
【関連記事】
駐車場経営の初期費用とは?コインパーキング経営のポイントも紹介
コインパーキング経営で失敗してしまった際に確認したいこと
最後に、コインパーキング経営で失敗してしまった際に確認したいことを見ていきましょう。
想像したくないかもしれませんが、ビジネスは常に“出口戦略”を考えて始めるのがセオリーといえます。
おすすめの考え方を2つ、それぞれ解説していきます。
売却も視野に入れる
コインパーキング経営で行き詰まってしまったら、思い切って売却という手段も考えましょう。
もし、手持ち資金でコインパーキング経営に適した土地を探しているのであれば、将来売却する可能性も視野に、価値が下がりにくいであろう場所を選んだほうが賢明です。
売却時の収益最大化のために土地の維持管理を怠らず、常に魅力的な状態に保つことが肝心です。
つなぎの投資として考える
コインパーキングを始めたものの、「思ったほど儲からない」「手間がかかるし体力的にもきつい」と実感したら、次索に移るまでのつなぎの投資と考えてみるのも一案です。
不動産市況が活況とみたら資金を都合して不動産、その他の有利な用途への転換など、手持土地を有効に使う手立てを模索するのです。
そのためには、将来的な売却も常に視野に入れておきましょう。
不動産市場やニッチな土地利用の動向にアンテナを張っておくことで、大きな機会損失を避けられます。
コインパーキング経営が失敗する主な原因は7つ
コインパーキング経営が失敗する原因は、さまざまです。
たとえば、競合が増えることで供給過剰になり収益が減少するケースです。
事前の現地調査が不十分で需給状況や顧客ニーズを見誤っても、早期撤退を招きます。
地域の相場に合わせていない不適切な料金設定や、空車時の対策がないことも経営難につながってしまいます。
こうした失敗原因を踏まえ、事前準備とリスク管理を怠らず、万全な準備をして開業に臨みましょう。