固定資産税は、不動産所有者が知っておくべき重要な税金です。この記事では、固定資産税の基本から計算方法、さらには軽減措置までを詳しく解説します。
また、具体的な例を通じて、一戸建てやマンションの固定資産税がどのように異なるかも見ていきます。固定資産税を理解し、賢く不動産を管理しましょう。
目次
固定資産税とは
固定資産税と呼ばれる税金は、自分が所有している土地や建物などの「固定資産」にかかる地方税のことです。これは国税ではなく、所有している土地や建物がある地域の地方公共団体に支払われます。
通常、居住用の家(マイホーム)を所有している場合、所有者は毎年、都市計画税と固定資産税の納税通知が届きます。この税金は、不動産だけでなく、償却資産にも適用されるので注意しましょう。以下は固定資産税の具体的な対象カテゴリです。
- 土地:田畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野などが含まれます。
- 家屋:住宅、店舗、工場(発電所や変電所も含む)、倉庫などが対象です。
- 償却資産:構築物、機械装置、工具、船舶、航空機などの事業用資産で、法人税法や所得税法に基づいて減価償却の対象とされている資産です。ただし、自動車税種別割や軽自動車税種別割に属する資産は除外されます。
固定資産税の納税義務者は、「1月1日現在、固定資産課税台帳に登録されている土地、家屋、および償却資産の所有者」です。そのため、1月1日に所有者である人が税金を支払う義務があります。
固定資産税額を計算する方法は、土地や建物に適用される「課税標準額×標準税率1.4%」です。課税標準額とは、固定資産税評価額に基づいている数字であり、この評価額は3年ごとに資産価格の変動に対応して調整されます。一般的に、不動産の市場価格の約70%が評価額として設定されます。
また、各市町村は独自の必要に応じて異なる税率を設定することが可能です。固定資産税の具体的な金額は、登録されている価格と地方公共団体が決定する標準税率に基づき計算されます。
固定資産税の計算方法
固定資産税を理解するためには、まずはその計算方法を把握しておくことが大切です。土地と建物はそれぞれ、異なる基準で固定資産税が計算されます。
ここでは、それぞれの具体的な計算手順について見ていきましょう。固定資産税は、固定資産の評価額と地方自治体が設定する税率に基づいて決定されます。
土地部分の固定資産税
土地に課せられる固定資産税は、公示価格の70%を課税標準額(固定資産税評価額)として使用します。
たとえば、土地の市場価格が2,000万円の場合、課税標準額は1,400万円です。この額に標準税率1.4%を乗じると、固定資産税は19万6,000円と計算できます。この金額が、その土地に対して1年間に支払うべき税額です。
建物部分の固定資産税
建物の固定資産税は、固定資産課税台帳に登録されている評価額を基に計算できます。新築の一戸建てでは、通常、建築費の約60%が評価額として設定されます。
建築費が1,500万円の場合、課税台帳には約900万円が記載されているでしょう。この評価額に1.4%の税率を適用すると、固定資産税は12万6,000円です。
土地と建物の固定資産税を合算
土地と建物の固定資産税を加算することで、一戸建ての総固定資産税額を求められます。上記の例で言えば、土地の固定資産税が19万6,000円、建物が12万6,000円で、合計では32万2,000円です。この金額は、特別な軽減措置が適用されていない場合の税額です。
軽減措置がある場合は、この額からさらに減額される可能性があります。固定資産税を支払う立場にある場合は、地方自治体に確認して軽減措置を受けられるかどうか確認しておきましょう。
一戸建ての固定資産税額を計算シミュレーション
固定資産税のシミュレーションを、価格帯が異なる一戸建ての例を通じて詳しく説明します。ここでは、3,000万円と4,000万円の一戸建て住宅にかかる固定資産税の計算方法を見ていきましょう。
3,000万円の一戸建ての場合
土地の固定資産税は、公示価格の70%を評価額として用います。そのため、1,900万円の土地の評価額は1,330万円です。200平米以下の土地に適用される軽減措置を考慮すると、次のように計算できます。まずは、土地の固定資産税額から見ていきましょう。
1,330万円(土地の固定資産税評価額)×1/6(200平米以下の軽減措置)×1.4%(標準税率)=3万1,033円
この結果、土地部分の固定資産税は3万1,033円です。
一方、建物の固定資産税の計算には、建築価格の60%が評価額として用いられます。1,100万円の建築価格に基づく評価額は660万円です。建物にも軽減措置が適用されるため、次のように計算します。
660万円(建物の固定資産税評価額)× 1/2(軽減措置)×1.4%(標準税率)=4万6,200円
したがって、建物部分の固定資産税は4万6,200円です。土地と建物の固定資産税を合算すると、3,000万円の新築一戸建ての総固定資産税額は次の通りです。
3万1,033円(土地の固定資産税額)+4万6,200円(建物の固定資産税額)=7万7,233円
この計算により、固定資産税の全体的な負担が明らかにできます。
この税額は、新築の一戸建て住宅を所有する際の年間の税的なコストの一部を示しています。
4,000万円の一戸建ての場合
固定資産税の計算を4,000万円の新築一戸建てを事例として見ていきましょう。この住宅では、土地の公示価格が2,400万円、建物の再建築価格が1,600万円で、土地面積は280平米、建物の居住部分の床面積は120平米です。
公示価格の70%を固定資産税評価額とするため、2,400万円の土地は1,680万円の評価額が適用されます。この評価額をもとに、土地の固定資産税が計算できます。
- 200平米以下の部分:1,680万円(土地の固定資産税評価額)×200平米/280平米(面積の割合)×1/6(軽減措置)×1.4%(標準税率)=2万8,000円
- 200平米を超える部分:1,680万円(土地の固定資産税評価額)×80平米/280平米(面積の割合)×1/3(軽減措置)×1.4%(標準税率)=2万2,400円
この2つの額を合計すると、土地の固定資産税は5万400円です。
続いて、建物の固定資産税計算を見ていきましょう。建物の再建築価格から60%の評価が固定資産課税台帳に登録されるため、1,600万円の建築費の場合、評価額は960万円です。この評価額に基づき、建物の固定資産税を次のように計算できます。
960万円(建物の固定資産税評価額)×1/2(軽減措置)×1.4%(標準税率)=6万7,200円
土地と建物の固定資産税を合わせると、総額は次の通りです。
5万400円(土地の固定資産税額)+6万7,200円(建物の固定資産税額)=11万7,600円
この計算結果により、4,000万円の新築一戸建ての固定資産税の総額が11万7,600円となることが確認できます。
この税額は、所有者が毎年支払うべき額を示しており、不動産の価値と位置に基づいた適正な負担であることが理解できるでしょう。
住宅にかかる固定資産税には軽減措置がある
固定資産税は、不動産の所有者が毎年負担する税金ですが、住宅に関しては軽減措置が存在し、税の負担を減らすことが可能です。
土地(住宅用地)に対する軽減措置
住宅用地に適用される軽減措置は、土地の固定資産税評価額に基づいて大きく割り引かれます。具体的な割引率は以下の通りです。
- 200平米以下の土地:評価額の1/6
- 200平米を超える土地:評価額の1/3
たとえば、土地の面積が300平米で評価額が6万円/平米の場合、課税標準額は次のように計算できます。
課税標準額=6万円/平米×200平米×1/6+6万円/平米×(300平米-200平米)×1/3
=200万円+200万円
=400万円
固定資産税額=400万円×1.4%
=5.6万円
合計した課税標準額は400万円となり、これに1.4%の税率を適用すると、固定資産税は5.6万円です。ただし、新築予定の住宅用地で年を跨ぐ場合は、この特例が適用されないため注意しましょう。
新築一戸建て購入・建築時の軽減措置
新築住宅を購入または建築した場合、戸建て住宅では3年間、マンションでは5年間、固定資産税が半額です。さらに、住宅が長期優良住宅に認定された場合、戸建ては5年間、マンションは7年間の軽減が適用されます。
軽減措置を受けるためには、以下の条件が必要です。
- 新築住宅が2024年3月31日までに完成していること
- 住宅の床面積が50平米から280平米であること
- 賃貸併用住宅の場合、居住部分が全体の半分以上であること
固定資産税の軽減措置を受けるには、自治体への申請が必須です。申請期限は住宅購入の翌年の1月末までとなっていますので、期限内に手続きを完了させておきましょう。
一戸建てとマンションの固定資産税はいくら違うのか?
一戸建てとマンションの固定資産税の違いについて、同じ地域で同額で購入した場合の例を用いて解説します。固定資産税は長期的に考慮する必要があるため、その影響を短期的および長期的な観点から見ていきましょう。
建物の評価額がポイント
一戸建て住宅では土地と建物の評価が分かりやすい一方で、マンションでは所有する部屋の広さに応じた建物の評価額が基準です。マンションの場合、土地は建物全体の土地を全戸数で割った面積がそれぞれの所有部分とされます。その結果、マンションでは土地の保有面積が少なく、評価額が低めに設定されがちですが、建物の評価額は比較的高くなってしまうので注意しましょう。
一戸建てとマンションを合わせて比較した場合、一戸建ては土地と建物の比率が土地7:建物3、マンションでは土地3:建物7の割合です。
木造の新築注文住宅はマンションより固定資産税が安い
地域が同じでも、新築一戸建てとマンションの固定資産税は経年変化とともに差が開いてきます。土地の価格は長期間大きな変動が少ないのに対し、建物は時間の経過とともに価値が低下します。これは土地が価値を保ちやすい一方で、建物の劣化が進むからです。とくに、木造の新築一戸建ての耐用年数は22年とされ、評価額が早期に下がる傾向にあります。
これに対して、マンションの耐用年数は約47年と長く、価格の下落が緩やかです。そのため、長期にわたってマンションは比較的高い固定資産税が課される可能性がありますが、木造の新築一戸建ては早くから税額が下がり、結果的に固定資産税の負担が軽くなることが多いです。
新築住宅の固定資産税評価額の決め方
新築住宅の固定資産税評価額を正確に把握することは、家を建てる際に避けては通れない道であることは間違いありません。この評価額は、使用される建材や設備の詳細な調査に基づき、再建築費を基準に算定されます。
以下では、新築住宅の固定資産税評価額の設定方法と、その評価額に異議がある場合の対処方法について説明します。
家屋調査のタイミングは?
新築または増築された住宅の家屋調査は、工事完了後1ヶ月から3ヶ月の間に行われることが一般的です。この調査には物件の所有者が立ち会う必要があります。調査では、建物の構造や使用されている材料、設備の状態が詳細にチェックされ、これらの情報が評価額の算出に大きく影響します。
なお、立ち会いは所有者によって拒否されることも可能です。その場合、提出された書類のみで評価が行われます。立ち会わなかったことで評価額が実際よりも高く設定されるリスクがあるので、注意しましょう。
固定資産税評価額に納得がいかない場合は再審査の依頼が可能
固定資産税の評価額に不服がある場合、所有者は評価額の再審査を依頼することが可能です。この申請は、固定資産税の納税通知書を受け取った日から3ヶ月以内に行う必要があるので、期間に注意しましょう。
再審査では、市町村の評価担当者による再評価が行われ、必要に応じて追加の情報提供を求められることもあります。この再審査を通じて、評価額が適正化される可能性があり、結果的に固定資産税の負担が軽減されることも期待できます。
固定資産税の納付時期と支払い方法
固定資産税の支払いは、所有する不動産の価値に基づいて毎年課税され、その支払い方法と時期を理解しておくことが、賢明な資産管理の一環です。
ここでは、固定資産税の納付時期とその支払い方法について具体的に解説します。
固定資産税の納税時期
固定資産税は通常、年4回の分割で納付するのが一般的です。具体的な納付月は自治体によって若干の違いがあるものの、多くの場合、6月、9月、12月、そして翌年の2月が一般的です。
これらの納税期限を過ぎてしまうと、税額に加えて遅延金が課せられます。この遅延金は、滞納した日数に応じて加算され、年間最大で14.6%にも上ることがあります。そのため、可能な限り遅延金が発生しない期限内に納付しましょう。
固定資産税の支払い方法
固定資産税の支払い方法は多岐にわたります。主な方法としては、以下の支払い方法が一般的です。
- 現金払い:金融機関の窓口やコンビニエンスストアで支払う方法
- 口座振替:銀行口座から自動で引き落とされる方法で、手続きを一度行えば毎回の支払いを忘れる心配がありません
- ペイジー:ATMやインターネットバンキングで支払う方法
- クレジットカード:カードで支払い、ポイント還元を受けることも可能
- 電子マネー:nanacoやWAONなどの電子マネーで支払う方法
- スマートフォン決済:PayPayやLINE Payなどのアプリを使用して支払う方法
それぞれの支払い方法には特有のメリットや手数料が伴うため、事前に確認しておくことが望ましいです。たとえば、クレジットカード払いではポイント還元が受けられる可能性がある一方で、一部の方法では手数料が必要な場合があります。
また、口座振替は初期の登録に手間がかかりますが、一度設定してしまえば毎回の手続きが不要となり、便利な支払い方法です。
固定資産税を理解して賢く家を購入しましょう
固定資産税は、土地、建物、償却資産の所有者が支払う必要のある地方税です。この税額は、土地や建物の市場価格に基づく評価額と地方公共団体が設定する税率によって算出されます。支払いは年4回に分割され、さまざまな方法で納付可能です。特に新築住宅には軽減措置が適用される場合があり、これらの情報を理解し適切に管理することで、税の負担を効果的に管理できます。
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