駐車場の経営は、土地を有効活用する手段の一つです。初期費用が抑えられる、取り組んでから短期間で運用をスタートできる、などのメリットを持っています。実際に駐車場経営をする場合、どのような管理と業務が求められるのでしょうか?また、売り上げがきちんと出なければ有効な土地活用とは言えません。この記事では、駐車場管理で求められる基本的な業務や、駐車場管理が初めての方にもおすすめできる経営方式、経営や運営のポイント、駐車場管理における注意点などを解説していきます。
目次
駐車場管理とは
駐車場を経営するうえで発生する業務を行い、利用者がトラブルや滞りなく利用できる駐車場を提供するのが駐車場管理です。アパートやマンション、店舗など建物の建設が必須でないため、初期費用を抑えられ、短期間で開始できる土地活用として知られています。活用したい土地のエリアの特徴によっては、初期費用を抑えた駐車場管理で十分な売り上げを生み出すことも可能です。
駐車場の管理・経営は個人でも行えますが、発生する業務をすべて一人で行わないといけない、駐車場経営のノウハウがない場合は売り上げを伸ばしにくい、というデメリットがあります。そのため、「ノウハウを持った専門業者に管理や経営を委託する」という選択をする土地所有者は少なくありません。
駐車場管理業務の内容
実際の駐車場管理では、下記のような業務が主に必要とされます。
設備点検
駐車場の中でも、特にタイムパーキングの場合、精算機や車両を止めておくロック板、出入り口のゲートなどの設備が必須です。故障してしまった場合、即座に売り上げに影響が出たり、クレームにつながったりする設備もありますので、定期的な点検が欠かせません。精算機などを必要としない月極駐車場の場合でも、二段式立体駐車場やゲートバーなどの設備を導入しているのであれば、定期的な設備点検が必須となります。
修繕となった場合、費用が発生します。数年単位での駐車場管理を視野に入れているのであれば、設備の修繕や新調の費用などもランニングコストとして念頭に入れておきましょう。
清掃
清掃が行き届いていない駐車場は、美観に関わるだけでなく、様々なトラブルの要因になりかねません。例えば、除草が行われず雑草が生い茂る駐車場では火事のリスクが高まりますし、草の根のせいでアスファルトの劣化も早く進んでしまいます。
また、ポイ捨てされたごみを放置していると、見かけた人のポイ捨てのハードルが下がり、ごみがよりポイ捨てされやすくなる傾向もあります。ごみの種類によっては駐車している車に傷をつけてしまうものもあり、利用者が警戒するほどになれば駐車場の利用率も低下してしまうでしょう。
トラブルへの対応
駐車場管理でよく発生するトラブルは、タイムパーキングの場合、精算機やロック板、レバーなど設備の不具合です。特に精算機については、「誤って別の駐車番号の料金を精算してしまった」というヒューマントラブルも発生しやすいのが特徴です。利用者からこういったトラブルの連絡があった場合、解決に向けた迅速な対応が求められます。
契約駐車場の場合、「不正駐車のせいで契約車両が停められない」というトラブルも珍しくありません。不正駐車車両の持ち主への警告や、悪質なものについては警察への相談などが求められます。迅速さが必要となるトラブルから、長期的な対応が求められるものまで、臨機応変なトラブル対応が求められます。
利用料の集金
駐車場管理においては、駐車場を利用した人から料金を回収する作業も業務として発生します。タイムパーキングでは、駐車場に設置している精算機から現金を回収するだけでなく、釣銭の補充もあわせて必要な業務となります。
契約駐車場の場合、決まった月日までに契約料金を指定の銀行口座に振り込んでもらうケースが多いでしょう。個人で駐車場の管理、経営を行う場合は、期日までに料金が過不足なく振り込まれているかを自分でチェックする必要があります。もし振り込まれていない場合、回収までの督促も業務として発生します。
決算・確定申告
駐車場の経営で年間20万円以上の所得が発生した場合、税務署への確定申告が義務付けられています。個人での経営となる場合、毎年1月~12月までの売り上げを翌年2月から3月の特定の期間に申告する必要があるのです。
確定申告には白色申告、青色申告など種類があり、控除される額、必要となる書類などが異なってきます。駐車場経営での売り上げを加味し、どの種類の確定申告を行うか決定しましょう。
なお、期間内の申告が間に合わなかった場合は加税されることもありますし、確定申告が必要にも関わらず申告をしなかった場合、悪質だと見なされたら脱税として刑事罰が科されることもあります。確定申告は定められた期間内に必ず行いましょう。
確定申告のための書類作成は税理士に代行の依頼ができますので、自身での作成が難しい場合は税理士への依頼を検討するのもおすすめです。
駐車場管理の経営形式
駐車場の管理方法には、3つの代表的な経営方式があります。自分がどれだけ駐車場の経営や運営に関わりたいかで、おすすめの管理方法は変わってきます。
個人経営方式
個人経営方式は、駐車場経営に関する業務すべてを自分自身が行う管理方式です。メリットとして、手数料が発生しない点が挙げられます。駐車場経営で発生した売り上げを、全額自身の収入にできるのです。
デメリットは、駐車場経営で発生する業務をすべて一人で行わなければいけない点です。経営や運用のノウハウがなければ、売り上げを伸ばすのも難しいでしょう。
一括借り上げ方式
一括借り上げ方式は、駐車場経営会社に土地を貸し出し、賃料という形で収入を得る経営方式です。土地を貸した本人が経営に関わることはないため、安定した収入を得たい、業務はすべて依頼したいという人に向いています。
一括借り上げ方式の大きなメリットは、賃料として収入が入ってくるため駐車場経営で得られる収入が安定している点でしょう。駐車場経営の売り上げが落ち込んだ場合、契約更新時に交渉がされるかもしれませんが、ただちに賃料に影響が出ることは基本的にありません。
一括借り上げ方式のデメリットは、経営がうまくいき売り上げが伸びている場合でも賃料に変化はない点です。極端な例ですが、駐車場の近くに商業施設がオープンし駐車場の売り上げが倍になったとしても、売り上げと賃料の関連が契約に織り込まれていなければ収入がただちに倍になることはないのです。
管理委託方式
管理委託方式は、駐車場経営に関する経営を企業に依頼する方式です。一括借り上げ方式と異なり、経営や運営に関する業務をどこまで委託するか、そしてどこまで自分が管理するかを契約時に決められるのが特徴です。
管理委託方式のメリットは、駐車場経営の専門知識を持った企業の手を借りられる点でしょう。経営に関するアドバイスを行ってくれる企業もありますので、駐車場経営のノウハウを身に着けたい人にもおすすめです。
管理委託方式のデメリットには、手数料がかかる点が挙げられます。委託する業務量や管理内容によっては当然手数料も上がりますので、売上とのバランスを考えて契約内容を定めましょう。また、手数料の割合は委託先の企業によって異なりますので、管理委託先を決定する際は複数企業で見積もりを取るのが重要です。
初めての方には管理委託方式がおすすめな理由
駐車場の経営方法には「個人経営方式」「一括借り上げ方式」「管理委託方式」がありますが、駐車場経営が初めての方は「管理委託方式」で経営するのがおすすめです。
知識が無くても始められるから
駐車場経営のノウハウを持つ企業と契約し、ある程度の業務を委託できるのが「管理委託方式」です。駐車場経営に関する知識が無くても土地活用を始められるのは、駐車場経営が初めての方にとって大きなメリットになるでしょう。
運営に時間を割かなくてよいから
駐車場の運営業務の中には、集金、釣銭準備や清掃など、駐車場現地に赴く必要がある業務もあります。複数の土地を駐車場として経営していたり、自宅から遠い土地を駐車場として経営していたりする場合、移動時間も発生しますから、運営業務のために多くの時間を要することとなります。
管理委託方式での駐車場経営であれば、集金や釣銭準備など、駐車場現地に赴いて行わなければならない作業を委託会社に一任できます。それ以外にも、駐車場の運営にまつわる業務全般を委託できますので、自身の時間を割かずに駐車場経営が行えます。
クレーム対応を任せられるから
接客を行わない駐車場経営でも、クレームが出ないわけではありません。設備の不具合など、運営側の責任で利用者からクレームが発生することもありますし、駐車場利用者の行為に対し周辺住民からクレームが起きることもありえます。契約駐車場の場合、「不正駐車のせいで契約車両が停められない」といったクレームにも適切な対応が求められます。
「管理委託方式」では、こういったクレーム対応も企業に委託することができます。中には24時間365日体制でクレームやトラブルの対応を請け負っている企業もありますので、深夜などの時間帯でも人の出入りが多い土地で駐車場経営をする場合、そういった企業に管理を委託するのがおすすめです。
駐車場管理に関する注意点
駐車場の管理や経営については、注意点がいくつかあります。トラブルを避け、売上を伸ばす駐車場経営をするためにも、下記の注意点を押さえておきましょう。
エリアの特徴を理解する
住宅街なのか、商業施設の多い土地なのかで、売り上げが伸びる駐車場の種類は変わってきます。住宅街であれば月極駐車場の安定した利用が見込めますし、商業施設の多い土地であればタイムパーキングで大きな売り上げにつなげられる可能性があります。駐車場にする土地の周辺エリアをチェックし、どのような駐車場が高い需要を持っているのか、しっかり見定めてから経営を始めましょう。
契約内容を確認する
個人で駐車場を経営、運営するのではなく、企業に駐車場の管理や経営を委託する場合、契約を結んでから経営を始めることになります。契約内容に自身が不利になってしまうことが書かれていないか、契約を結ぶ前にしっかりチェックをしましょう。仮に委託する企業が大手の駐車場経営会社で評判が良いとしても、チェック不十分な契約はトラブルにつながりかねません。
「契約書に問題がないか、自分だけでチェックできているか心配」という場合は、弁護士や司法書士にリーガルチェックをお願いしましょう。有料になってしまいますが、契約書は法的に強い効力を持った書類ですから、「契約内容に不利がないか」をしっかり確認しておくことに損はないはずです。
複数社を比較する
駐車場の経営や運営を委託することになる場合、手数料を企業に支払うことになります。どのようなサービスでどれくらいの料金になるのか、複数の企業を比較し相場を確認してから委託する企業を決定しましょう。
特に管理委託方式で経営を行う場合、いくつかの業務を自分で行うことで手数料が割安になる企業もあります。例えば「駐車場は自宅の近所にあるから清掃は自分が行う」と思っている場合、清掃サービスの委託を抜きにできる企業を選べばそのぶん割安で委託の依頼ができるでしょう。
一括借り上げ方式での契約となる場合でも、企業と金銭のやり取りが発生することに変わりはありません。提供する土地に対しどれほどの賃料を企業が出すのか、複数社に問い合わせをし、相場を見極めてから契約をしましょう。
土地活用で視野に入れたい「駐車場管理」
いかがでしたでしょうか?今回の記事では、土地経営の主な業務や経営方法について紹介しました。初期費用が少ない、短期間で土地活用を始められることで人気のある駐車場管理ですが、適切な業務対応やエリア情報などを活かした運用をしないと、有効な土地活用とならない特徴も持っていることがご理解いただけたと思います。経営ノウハウを持った駐車場経営会社に土地を貸し、賃料を得る経営方式もありますが、売り上げが見込める土地であれば、賃料だけの収入となるのは勿体ありません。
しかし、駐車場経営が初めての場合、最初から個人で管理・運営を行っていくのは難易度が高くなります。有効な土地活用のためにも、駐車場管理のノウハウを持った企業と手を取り合いながら売り上げを伸ばしていく「管理委託方式」での経営がおすすめです。