駐車場経営においては、いくつかの段階で支出が発生します。時間貸し駐車場として運用するのであれば、設備の導入や管理業務の委託、決済手数料などで費用が必要になるのです。月極駐車場でも、フェンスの設置や道路の舗装をするのであれば支出が発生します。
これらの費用は、経費として計上することで節税につなげることができます。本記事では、駐車場経営では主にどんな費用が発生して、どの費用を経費として計上できるのか、そして経費として計上してはいけない費用はどれかを解説していきます。
目次
駐車場経営で経費計上できる費用
駐車場経営において費用が発生するのは、主に下記の3つのタイミングです。
- 駐車場経営を始めるとき
- 駐車場の運営をしているとき
- 駐車場を撤去するとき
この3つのタイミングで発生する作業や費用は、それぞれ種類が異なります。ですが、「経営のために必要な支出」であれば経費計上できる点は共通しています。
「駐車場の運営で発生する費用」については、経営を行っている年数だけ経費として計上することになりますから、数年単位で経営を続ければある程度「どれが経費になるか」「なんの項目で計上できるか」などを把握できるようになるでしょう。
しかし、「駐車場経営を始めるとき」「駐車場を撤去するとき」にだけ発生する費用は、経費として計上するのも原則としてそのタイミング限りのみです。申告の漏れがないよう、何を経費にできるのか押さえておきましょう。
経営を始める際にかかる費用
駐車場経営を始める際には、運用のために準備しないといけないものがいくつかあります。土地購入以前から駐車場経営に使用されている土地だった、などの理由から既に用意されているのであれば不要かもしれません。対して、一から自身で準備を進めなければならない場合、下記のような準備と支出が発生します。
土地整備費
車を安全に停める場所を確保する必要があるため、土地整備費が必要になります。月極駐車場は砂利敷きでも問題なく運用できますが、時間貸し駐車場であれば、設備設置のためにアスファルトやコンクリートでの舗装が必須です。
また、駐車スペースやスペース番号を示すために、ラインを引いたりロープで区分けしたりする必要もあります。駐車場として運用するために土地を整備する費用は、経費として計上して問題ありません。
看板の設置費
時間貸し駐車場の場合、利用料金などの案内を記載した看板は必須です。運転中の利用者が遠くから判断できるよう、なるべく大きくて見やすいものを用意しましょう。
また実際の設置には、看板が倒れて事故を起こさないよう、安全性を確保した設置も求められます。看板の用意だけでなく、設置するための施工費も見積もっておきましょう。
各種設備の設置費
時間貸し駐車場の場合、精算機やゲートバー、車両ロック板などの設置が必要になります。治安に不安がある地域の場合、防犯のためのフェンスや街灯、監視カメラなども用意しておきたいところです。月極駐車場の場合これらの設備は必須ではありませんが、防犯のための各種設備は、利用者が安心して契約を続けるためにも用意が推奨されます。
必須と呼べる設備以外にも、精算機に設置することで利用者が日陰で料金の精算ができるようになるテントなど、利便性向上のために設置したい設備があるかもしれません。そういった設備にかかった費用は、経費として計上することができます。
経営を始めてからかかる費用
実際に駐車場経営を始めたら、運用のための費用が発生し始めます。いわゆるランニングコストと呼ばれるものです。
消耗品費
駐車券やサービス券、レシート用紙など、消耗が前提の備品代金が発生します。10万円未満で購入できるもの、1年以内で使い切れるものなど、条件を満たしている消耗品については消耗品費として計上することができます。精算機や看板用に灯りを用意している場合、その電球も消耗品費として計上が可能です。
月極駐車場の経営で請求書や領収書を毎回用意しているのであれば、その用紙も消耗品費に該当します。
運営管理費
駐車場の管理業務を企業に委託している場合、料金の支払いが発生します。全ての管理を委託しているわけでなく、例えば「コールセンターのみ代行をお願いしている」「決済に関する業務のみお願いしている」といったケースもあるでしょう。業務の委託として発生した料金であれば、運営管理費と判断し経費計上して問題ありません。
メンテナンス費
駐車場に機器などの設備を置いている場合、定期的なメンテナンスは欠かせません。メンテナンス、点検を外部に委託している場合、そのための費用が発生します。
時間貸し駐車場の場合、ゲートバーやロック板など、不具合が起きたらすぐに売り上げに影響が出ますし、深刻なクレームにつながりかねません。月極駐車場でも、出入り口にゲートバーを用意していたり、立体構造の二階建て駐車場を採用していたりするのであれば定期的なメンテナンスが必要です。
故障や機器の不調を事前に防げるよう、メンテナンス費はなるべく節約せず適切な予算を用意しましょう。実際にかかった費用が経費として計上できます。
光熱費
機器を設置していたり街灯などを用意していたりする場合、電気代金などの光熱費が発生します。光熱費を経費として計上する場合、注意しないといけないのは、駐車場経営で発生した光熱費を、家計で発生した光熱費と合算し支払っている場合です。
駐車場経営で使用した電気代金は経費として計上することができますが、家庭で使用した分は経費計上ができないため、確定申告の際は「家事按分」と呼ばれる計算が必要になります。経費として計上したい額と家計で使用した額の割合を定め、その割合額分のみ経費として計上することになるのです。
家事按分の計算や処理を避けたいという方は、駐車場経営と家計それぞれで請求が来るよう調整を行いましょう。
修繕費
設置している機器や、フェンス、看板、街灯などが故障・破損した場合は修繕する必要があります。故障・破損がなければ発生しない費用ですが、いずれの設備も経年劣化はしてしまいますので、数年単位での経営を見越しているなら備えておきたい費用です。
メンテナンス費と同様、実際に修繕として支払いが発生したら経費として計上ができます。
決済手数料
駐車料金の支払いにクレジットカードや電子マネー、バーコード支払いを使えるようにしている場合、各種決済会社に手数料を支払う必要があります。この支払手数料は経費として扱えます。
租税公課
駐車場経営では、土地に対する固定資産税や、売り上げに対する消費税などが発生します。そのほか、地域によっては都市計画税、土地を購入した年には登録免許税などの租税公課が発生します。
こういった租税公課のうち一部は経費として計上することができますので、確定申告の書類作成の際には該当する支払いがないか、必ずチェックしておきましょう。
減価償却費
数年にわたり使用できる20万円以上の設備などを導入した場合、導入した年に一括で経費計上することは基本的にありません。耐用年数で導入費用を割り、各年で経費計上するのが一般的です。例えば耐用年数5年の設備を100万円で導入した場合、5年間20万円ずつ経費として計上するのです。この処理を減価償却と言います。
あくまで「導入にかかった費用を複数年かけて経費計上する」ことを指し、減価償却を行うことでプラスして発生する費用などはない点を押さえておきましょう。そして減価償却を行った経費がある場合、経費計上し終えるまで忘れずに申告をしましょう。
駐車場の撤去時にかかる費用
「利益が出ないため駐車場経営から撤退したい」「駐車場経営とは異なる土地活用をしたい」など、様々な理由で駐車場を撤去することを決めた場合、発生する主な費用は下記のとおりです。
違約金
月極駐車場の場合、例えば「契約開始から3年間の契約」としていたにもかかわらず満了せずに駐車場を撤去することになった場合、違約金を迫られる可能性があります。また、時間貸し駐車場の運営で企業に管理を委託していた場合も、契約年数が決められていたにもかかわらず撤去する場合は違約金が発生する可能性が高いでしょう。
違約金は経費として計上できます。オーナーの事情で撤去する場合、多くのケースで違約金が発生しますが、やむを得ない事情で撤去する場合、そもそも違約金が発生しないで済むよう契約時にしっかり確認をしておきましょう。
原状回復費
駐車場経営から撤退する場合、原則としてその土地を経営前の状態に戻す「原状回復義務」が存在します。この原状回復にかかった費用は経費として扱うことができます。
原状回復に際しては、トラブルが発生しないよう「どこまで原状回復を行うか」などをあらかじめ定めておきましょう。例えば、時間貸し駐車場の場合、精算機や看板、ロック板やゲートなど様々な設備を設置するためにアスファルトやコンクリートで舗装するのが必須です。これらの舗装がなく元々は砂利敷きの土地だった場合、そこまで戻すのか、設備の撤去だけでいいのか、何をもって「原状回復」とするのか、地主や管理委託先の企業と認識をすり合わせておきましょう。
契約者対応にかかる費用
駐車場を撤去することを利用者などに伝えるのであれば、郵送で撤去の告知をする場合は切手代などの費用が発生することがあります。その後、電話でのやり取りなどが発生した場合は電話代金なども発生します。少額で済むことが多いですが、経費計上できる費用ですので、確定申告の際は忘れずに計上しましょう。
駐車場経営で経費計上できないもの
駐車場経営をするうえで発生した費用でも、一部は経費として計上することができません。発生した支払いの全てが経費計上できるわけではない点は、トラブルを避けるためにも把握しておきましょう。
仲介手数料
土地を購入したときに不動産会社を仲介した場合、仲介手数料が発生します。これは不動産会社に支払うもので、購入する土地の価格によってはこの仲介手数料も高額となるのが特徴です。経費計上したいところですが、土地の購入費用の一部と見なされるため経費として計上することはできません。
土地購入費
土地は、いわゆる「有形固定資産」に分類される資産です。資産の中でも、導入から年月の経過や利用回数で価値が減っていくものであれば「減価償却」を行い経費に計上できますが、土地は「年数経過で価値が減る」とされないため、経費に計上できないのです。
ただし、土地を購入する際に発生した費用の中には経費として計上できるものがあります。「不動産取得税」「登録免許税」などが該当しますので、租税公課として経費に計上しましょう。
固定資産税および都市計画税相当額の清算費
固定資産税や都市計画税は、1月1日に土地を所有していた人に対し課される税金です。極端な例ですが、1月2日にA氏がB氏に土地を売却した場合でも、1年間分の固定資産税を支払う義務があるのは売主であるA氏になります。1年間の途中で土地の売却を行った場合、固定資産税や都市計画税はこういった不公平が発生してしますのです。
そのため、土地売買の際に不公平性を解消するための「清算費」が発生することがあります。固定資産税や都市計画税を日割りし、売主が買主に支払う費用です。この清算費についても、土地購入代金の一環と見なされるため、経費として計上することはできません。
経費計上が節税のポイントに
いかがでしたでしょうか?ここでは駐車場経営において発生する費用と、経費計上できるもの、できないものについて紹介しました。この記事を読んで、どのタイミングでどんな費用が必要になるかなどがお分かりいただけたのではないでしょうか。所得税は「収入から経費を差し引いた額(所得)」に課されるものですから、駐車場経営で発生した費用は可能な限り経費として計上するのが節税の重要なポイントです。しかし、中には「土地購入費」など、駐車場経営のためにかかった費用でも経費として計上できないものがあります。確定申告の際は、経費にできる費用・できない費用に注意しましょう。