「実家を相続したものの、住む予定はないし、どう対処したらいいものか」
親の介護施設への移転に伴い、このような悩みを抱える方が増えています。
空き家は固定資産税などの維持費がかかるため、親が元気なうちに「誰が相続するのか」「処分するのか、活用するのか」を兄弟間で話し合っておくことが大切です。
本記事では、その準備が間に合わなかった方が、空き家を放置することなく、正しく“家じまい”するための手順を解説します。
目次
実家が空き家となるタイミング
実家が空き家になる理由で多いのは、親が施設に入居したり死亡したりした場合です。
親が介護状態となり自活が困難になったり、面倒をみていた兄弟姉妹が別に住居を持ったり、といったケースも実家が無人化するタイミングといえます。
空き家を放置する方が多い理由
空き家が放置される理由はさまざまです。
具体的には、固定資産税や解体費用の問題、建物を壊すことへの抵抗感、買い手借り手が見つからない、家財の整理が面倒といったところが主な理由です。
理由①固定資産税を抑えるため
固定資産税には“住宅用地特例”があって、200㎡以下の住宅用地であれば通常税率の6分の1、200㎡を超える部分には3分の1が適用される仕組みになっています。
つまり、更地よりも空き家を残しておいたほうが固定資産税で有利、という理由から、空き家を放置している方が多いのです。
こうした状況に鑑み、国は“空家等対策の推進に関する特別措置法”を2015年から全面施行しました。
これにより、倒壊の危険性が高い空き家などは、自治体から“特定空家等”の指定を受け、改善勧告に従わなかった場合は、固定資産税の軽減措置が外されることになったのです。
「固定資産税が安いから」空き家を保持してきた人は、これ以降、老朽実家所有のリスクに直面することになったわけです。
とはいえ、空き家はまだまだ全国で増え続けており、問題の解決にはいまだ遠いのが現状です。
理由②空き家の処分に費用がかかるため
なぜ、空き家を解体しないのかと問われれば、一番多い回答がおそらく「解体に費用がかかるから」でしょう。
家の構造や面積などによって異なりますが、一軒家の解体には100万〜200万円ほどの費用がかかります。
決して安い費用ではないため、費用工面の目途がつくまで放置しているのか、あるいは負担を先送りしているだけなのか、いずれにしろ積極的な理由からではないはずです。
理由③実家での思い出をそのまま残せるため
長年家族と住んだ実家を手放すのは誰しもつらいもの。
亡くなった祖父母や両親、兄弟との思い出として、相続したあともできれば残しておきたいことでしょう。
しかし、空き家を維持するには手間と費用がかかるし、それが現在の住居から遠隔地であったり、所有者が自分ひとりであったりしたら、支えきれなくなるのではないでしょうか。
そんな精神的な負担を解消するためにも、実家処分の早い決断が必要です。
実家を空き家として放置するリスク
空き家になった実家を放置しておくと、資産価値が下がったり、老朽化で倒壊したりする恐れがあります。
近隣住民に迷惑が及ぶだけでなく、“特定空家”に指定されてしまうリスクもあるので、そのままにしておくのはモラル的にも経済的にも問題です。
ここからは、空き家を放置しておくと起こる問題点について解説します。
リスク①倒壊する危険性がある
老朽化が進めば、屋根や外壁が壊れやすくなり倒壊の危険が高まります。
万が一他人に怪我を負わせた場合には、所有者の責任となり、損害賠償を請求される可能性もあります。
放置家屋の倒壊は、多くの場合、地震や台風などの自然災害がとどめの一撃となりますが、シロアリの侵食により内部から腐食が進むケースも珍しくありません。
また、火災やガス漏れなどの二次災害につながるおそれもあり、その場合も多額の損害賠償責任を背負うことになります。
特に空き家が遠隔地にある方は、定期的に実家の状態を見に行くなど、管理を徹底しないと非常に危険です。
リスク②維持・管理に費用がかかる
誰も住まない空き家であっても、持っているだけでお金は出ていきます。
固定資産税や都市計画税に加え、火災保険や地震保険の保険料もかかります。
たまに帰って掃除をするために、水道や電気を解約するわけにはいかないので、その基本料金もばかになりません。
さらに、地震や台風などで住宅が壊れた場合には、修繕費用がかかります。
この費用負担と、管理の手間はどうするのかを巡り、親族間で争いの種となるでしょう。
そんな揉め事に直面しないためにも、空き家の処分は早いほうが良いのです。
リスク③近隣住民とのトラブルにつながる
先ほどもお伝えした通り、空き家となった実家は近隣トラブルの元凶となります。
ざっと挙げても、ゴミの不法投棄や草木の繁茂、ネズミ、ハエ・異臭の発生など。
そうなれば、近隣住民とのトラブルは避けられず、最悪の場合、特定空家などの行政指導をされてしまいます。
リスク④空き巣や放火などの犯罪につながる
空き家は放火や空き巣といった犯罪や、不審者の根城となり、近隣住民に不安を与えてしまいます。
遠くにいても、親の代から付き合いのある隣人たちから糾弾されてしまうでしょう。
最近では、特殊詐欺グループが騙しとったお金の送付先に空き家を利用するケースも増えており、地域のイメージダウンにつながる重大問題に発展しかねません。
リスク⑤老朽化により資産価値が下がる
空き家となった実家を放置しておくと、カビや湿気によって劣化が進み、資産価値の急速な低下が避けられません。
特に木造住宅は老朽化のスピードが顕著です。
売却する際に買い手が見つからないと、解体費用を用意しなければならないし、リフォームしようにも古くなるほど修繕費用がかかります。
実家の有効活用を考えるうえでも、できるだけ早く対策を講じることが大切です。
実家の資産価値の低下を少しでも防ぐには、定期的に手入れをしてきれいな状態を保つことが大切ですが、資産活用の計画を持たなければ処分を急いだほうが賢明でしょう。
実家が空き家になった際の対処法
さて、空き家となった実家に住まない場合のことを考えてみましょう。
その際の対処法は、その家を売りに出す、賃貸住宅とする、あるいは解体して土地を有効活用する、といったところでしょう。
それぞれにメリットやデメリットがあるため、これがベストだといえる方法はありません。
ここでは、空き家に住まない選択をした場合の対処法をいくつか紹介します。
対処法①売却する
立地や状態が良ければ、空き家を売却して現金化することができます。
実家を引き払ったあとの老親の施設への入居費用が必要だったり、相続税の支払いがあったりする場合は売却を検討しましょう。
需要のあるなしは不動産会社に相談し、査定してもらえばすぐにわかります。
家を売却する際は、相続登記が必要で、売却料金からは仲介手数料や印紙税などが差し引かれます。
すぐに買主が見つからないこともままあるので、経済的、精神的余裕がないと難しいのがネックです。
対処法②賃貸に出す
思い出の詰まった実家を壊さず、なんとか活用したい方は賃貸物件にして貸し出せば家賃収入が得られて一石二鳥です。
管理会社に委託すれば、入居や退去などの手続きを代行してくれます。
ただし、そのまま貸し出せるような空き家は稀で、借主を見つけるためには、ニーズに合わせたリフォーム、要するに先行投資が必須です。
固定資産税や火災保険料、修繕費用なども途中で発生するので、小なりといえど、副収入を得るためのビジネスと考えて取り組む必要があります。
対処法③建物を解体して土地を活用する
相続したものの住む予定がない空き家をそのままにしておくと、固定資産税や維持管理費用ばかりがかかってしまいます。
「そんなことにお金をかけたくない」という方は、建物を解体して、土地の収益化を考えてみてはいかがですか。
建物解体にはまとまったお金が必要ですが、思い切って更地化して駐車場やトランクルームとして貸し出せば、定期的な管理の負担もなく有効活用できます。
信託会社や信託銀行に土地の所有権を移し運用してもらい、収益の一部を得る「土地信託」という方法もあります。
建物の解体には、補助金制度を設けている自治体もあるので、役所に問い合わせてみましょう。
少額費用で始めるならコインパーキングがおすすめ
空き家を解体して更地となった土地を駐車場として活用するなら、月極よりコインパーキングがおすすめです。
コインパーキングとは、駐車時間分の料金を後払いする時間貸し駐車場のことで、利用者が見込める駅周辺や大型商業施設の近くであれば、高収益も期待できます。
不動産を建てるより初期費用の負担もが少なく、初心者にも始めやすいことから、人気のある土地活用方法です。
対処法④管理会社に維持・管理を委託する
空き家を残し、不用品や思い出の品の保管のため、空き家をしばらくのあいだ残しておきたい方は、管理会社に維持・管理を委託する手があります。
家の見回りや掃除なども依頼できるので、現地に出向くことなく建物を保全することができます。
将来移り住む可能性を見据えた対策でもありますが、委託する期間が長いほど費用もかかるので、月額料金やサービス内容について何社か比較検討してみましょう。
対処法⑤空き家バンクを利用する
空き家バンクとは空き家の売主と買主をマッチングさせる制度で、自治体が運営しています。
空き家バンクを有効活用することで、空き家を探している方に情報提供でき、値段が折り合えば、すぐに買い手や借り手が見つかるでしょう。
ただし契約や交渉は自分で行う必要があり、専門的な知識もある程度必要です。
気になる地域の自治体が空き家バンクを運営しているのか、情報収集しておきましょう。
対処法⑥サブリースを利用する
不動産会社が不動産を借り上げて、第三者に貸し出す仕組みがサブリースです。
空き家を貸し出す際の管理や宣伝、入居者・退去者の対応などを、専門家である不動産会社に委託することで、手間をかけずに適切に運営できます。
もちろん賃料も支払われるので、安定した収入を得たい方に向いています。
実家が空き家になったらやるべきこと
実家が空き家になった際の対処法をいくつかご紹介しましたが、これらを含め、今後どうするかを家族で話し合いましょう。
空き家を放置すると、資産価値の低下や近隣とのトラブルに発展しかねず、“特定空家”に指定されるリスクも高まるので、結論は早いに越したことはありません。
不動産会社などと相談しながら、適切な活用法を見つけましょう。
相続登記や不用品処分などを並行して進めると時間的ロスが防げます。
空き家の相続手続きを行う
空き家を所有していた方が亡くなった場合、必要になるのは相続手続きです。
以下では、相続手続きの流れと、相続における空き家の対処法について解説します。
期限がある手続きも含まれるため、やるべきことを整理しておくことが大切です。
【相続発生後の手続きの流れ】
| 相続人の調査 | 亡くなった親の戸籍謄本から相続人が誰であるかを確認 |
| 遺言書の確認 | 遺言書がある場合、記載されている内容が優先 |
| 相続財産の調査 | 亡くなった方の財産を調査する |
| 相続関係を確認 | 「法定相続情報一覧図」の写しを法務局より取得 |
| 遺産分割協議 | 相続人全員の合意に至るまで誰が何を相続するのか話し合う |
| 名義変更 | 遺産分割により取得した財産の名義を変更する(相続登記、預貯金の解約など) |
| 相続税の申告・納付 | 原則として相続が発生してから10か月以内に行う必要がある |
相続法は社会構造の変化に合わせて、割と頻繁に改正が行われてきました。
遺産分割に事実上10年の期限が設けられたり、相続登記が義務化されたりなど、相続は先送りできない問題になっています。
相続登記
遺産分割により不動産を取得したら3年以内に相続登記を行います。
相続登記は2024年4月1日から義務化されました。
相続登記をしないと、今はそもそも空き家を売却することができません。
「手続きがうまくできるか不安」という方は専門家に依頼するとよいでしょう。
相続登記は、相続した土地・建物について不動産登記簿の名義を変更する手続きで、管轄の法務局に登記申請をします。
空き家を相続した人は、被相続人の死亡の日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納税を行わなければなりません。
当面の管理方法を検討する
空き家は遺産分割が成立するまでは相続人全員が共有している状態となります。
この間は、原則的に売却などによる空き家の処分はできません。
遺産分割を行ったあとに、空き家の所有権を取得した相続人が、売却などの処分を行うことになりますが、それまでに当面の管理方法についても検討しましょう。
実家が空き家になったときの対処法は先ほどもお伝えした通りですが、改めて記すと以下の8つに集約されます。
【実家が空き家になった場合の対処法】
- 親族間で住みたい人がいないか相談する
- 家ごと売却する
- 土地だけ売却する
- 賃貸物件として活用する
- 空き家を解体し土地を活用する
- 空き家バンクを利用する
- サブリースを利用する
- 相続土地国庫帰属法を利用して処分する
最後は令和5年4月27日に施行された法律で、相続などにより取得した土地所有権を国に有償で引き取ってもらうという制度です。
この制度を利用するための要件は多く、ハードルが低いとはいえませんが、空き家の買い手が見つからない場合の最終手段として覚えておきましょう。
どの方法にもメリット・デメリットがあるので、ご自身にとって最適な方法をじっくり考えて選んでみてください。
水道・電気などのライフラインを解約する
つい、後回しになってしまいがちなのが、水道や電気、ガスなどのライフラインの解約手続きです。
契約したままだと基本料金が発生して、余計な出費となります。
火災や不審者が住みつくことを防ぐためにも、早めの解約をおすすめします。
活用・処分方法を決める
実家の処分方法を決定しましょう。
状況調査によってはまだまだ活用できる可能性も考えられます。
空き家になった実家の活用例についてはこれまでお話した通りです。
賃貸需要があるエリアに実家がある場合は、賃貸物件として活路を見出せそうです。
修繕箇所が多く、そのまま利用できなければ、解体や売却といった処分方法が考えられます。
まずは状況調査をしっかりと行い、ベストな処分方法を見つける足掛かりとしましょう。
実家を相続する際に覚えておきたい注意点
実家を相続することが決まったら、これだけは覚えておきたい注意点が2つあります。
一つ目は、実家が不要であっても、実家だけを相続放棄することはできないという点です。
実家を相続放棄する際は、その他のすべての財産も放棄しなくてはいけません。
他に引き継ぎたい財産があっても相続できないのです。
二つ目は、実家を共有名義で相続しないほうがよいということです。
共有名義の実家を売却したり担保にしたりといった場合、他の共有者すべての同意を得る必要があり、時間がかかるうえトラブルのもとになります。
ただし、自分の持分だけを売却、担保することには同意は必要ありません。
なお、“単純承認”、“相続放棄”、“限定承認”のいずれかを選択できる期間は、相続の開始を知ったときから3か月以内と決められています。
この期間を過ぎてしまうと、原則として単純承認をしたものとみなされ、プラスの財産だけでなく相続したくない財産もすべて相続することになるので気をつけましょう。
3か月以内に結論が出せない場合は、期間内に家庭裁判所に期間の延長を申し立てることも可能です。
実家を相続放棄するとどうなる?
空き家となった実家を利用する予定がなく、ほかに相続したい財産がなければ、相続放棄も選択肢となります。
その場合、メリットがあるのは主に税制面です。
相続放棄は、相続したくない財産がある場合によく利用される手続きですが、相続放棄をすると相続人から外され、空き家の固定資産税を納付する義務もなくなります。
しかし、これで一件落着とはいきません。
相続人となるべき人全員が相続放棄をした場合、空き家を管理する人は誰もいないことになります。
これではまずいということで、所有者がわからなくなった土地や建物に関して、裁判所が管理人を選定して管理や処分を委ねる“所有者不明土地・建物管理制度”が始まりました。
この制度を利用する場合は費用がかかるので、空き家を処分するための費用負担の問題は、相続放棄をした後にも残るおそれがあるのです。
トラブルとならないよう、親族間で対応を取り決めておく必要があります。
実家が空き家になったら早めに対処を
実家が誰も住まない空き家となったら、やるべきことはたくさんあります。
まず、空き家の相続登記などの相続手続きを法律に則って行います。
正式に実家を相続したら、当面の管理方針を検討するまでが次の段階です。
自分が住まない限り、空き実家はそのまま売却するか、リフォームして賃貸物件とするか、家を解体し更地として売却するか、土地の活用法を考えるかを選択することになります。
いずれにしろ、放置しておくと近隣トラブルや余計な維持費がかかるので、早めに対処法を決めましょう。
空き家の跡地の有効活用ならコインパーキングという選択肢もあります。
ユアーズ・コーポレーションにぜひご相談ください。


