コインパーキングの土地と設備を相続した場合、気になるのが支払う相続税ですよね。
更地の次ぐらいに減税措置がないのが駐車場経営ですから、アパートやマンション経営などに比べ、相続税も固定資産税もかなり高負担なのは事実です。
しかし、駐車場として活用される以上、完全な更地と同じ扱いではなく、相続税の評価額を下げる裏技(もちろん合法的に)もあります。
本稿ではコインパーキングを例に相続税対策を徹底解説します。
目次
そもそも相続税とは?
相続税とは、亡くなった人からお金や土地を受け継いだ際、その受け取った財産に課税される税金のことです。
相続税は、相続した財産全体にかかるわけではありません。
相続した財産の額から、一定金額を控除できる「基礎控除」という制度があります。
相続財産から借金や葬儀費用などを引いた金額が、この基礎控除額を超えた場合に、相続税がかかります。
相続税は、相続する土地の価値をもとに計算されるため、まずは相続税路線価などを用いて土地の価値をはっきりさせる作業から始まります。
相続税の計算フロー
駐車場を相続した際、または相続する予定があるとき、相続税がいくらになるかは気になるところですね。
一般的な相続税の計算方法は以下の流れに沿って行われます。
【相続税を計算するフロー】
- 遺産総額の確認
- 法定相続人の人数を確定し、それに基づき基礎控除額を計算
- 相続税の総額を算出
- 実際に支払う相続税額を計算
遺産総額は土地や不動産、現金、株式などすべての相続財産から、借金などを差し引いた金額から求められます。
土地の評価額は別途計算して算出します。
遺産総額が、法定相続人の数に基づいた基礎控除額を上回った場合は、相続税が発生するわけです。
相続税を申告するときの基準となるのが相続税評価額で、遺産総額をもとに算出されます。
駐車場などの不動産は、条件ごとに決められた計算方法で、納税者が自ら相続税評価額を計算します。
駐車場の相続税評価額の計算方法
ここからは、駐車場の相続税評価額について説明します。
例として取り上げるのは、運営会社に貸し出した土地がコインパーキングとして利用され、土地オーナーの賃借権が発生しているケースです。
この場合、コインパーキングの相続税評価額は、以下の式を用いて計算します。
コインパーキングの相続税評価額=自用地としての価額×(1-減額割合)
自用地(自家用地)としての価額とは、更地としての相続税評価額のことです。
減額割合は以下の表の通り決まっています。
【自用地としての価額に乗じる割合表】
貸借権の残存期間 | 5年以下 | 5年超10年以下 | 10年超15年以下 | 15年超 |
減額割合 | 2.5% | 5.0% | 7.5% | 10.5% |
自用地としての価額が3,000万円で、駐車場契約の残存期間が3年の場合は、相続税評価額は以下のようになります。
コインパーキングの相続税評価額=自用地としての価額×(1-減額割合)
= 3,000万円×(1-2.5%)
= 2,925万円
後ほど説明しますが、上記のような計算式が適用できる条件は、土地オーナーがアスファルト舗装を実施した土地を、駐車場会社が賃貸してコインパーキングを設置した場合です。
契約期間が5年以下だとわずか2.5%の減額ですが、土地オーナーが経営する青空駐車場はなにも手をつけずにいると自用地とみなされ、これすら適用はありません。
また、アスファルト舗装を施しただけの土地であっても、駐車場に供されていなければ相続税評価額は自用地からわずかな減額にとどまります。
駐車場の相続税を安くするには
以上の通り、税制上は更地の扱いに近い駐車場の相続税の減税効果は小さく、限定的といわざるを得ません。
例外的に、土地の賃借人がその土地上に自らの負担で構築物等を設置している場合には、その土地には賃借権が存在すると認められ、一定の評価減が可能になる程度です。
前述のコインパーキングはこれに該当するわけですが、マンション、アパートなどの賃貸住宅などと比較すると、相続税、固定資産税などの税制面の恩恵はないに等しいといえます。
それでも、駐車場にも節税効果がまったくないわけではありません。
工夫次第で、「駐車場」を使った相続税対策も可能ですので、その事例をいくつか紹介していきます。
小規模宅地等の特例を利用する
小規模宅地等の特例を使うと、土地の相続税を大幅に下げることができます。
土地の上に建物または構築物があることと、貸し駐車場であればその証明として営利実績を上げつつ継続的に行われていることです。
駐車場の土地は、小規模宅地等の特例で「貸付事業用宅地」に分類され、200㎡(車約10台分)までの部分は相続税評価額を50%減額することができます。
評価減を受ければ、資産の評価額が低くなり、そのぶん税金も安くなります。
では、貸し駐車場を相続して、「青空駐車場」にしているとどうなるでしょう。
そのままでは、小規模宅地等の特例は使えません。
まず、「土地の上に建物または構築物」の条件をクリアしなくてはならないからです。
しかし、実はアスファルト舗装にすると、この“構造物”とみなされるのです。
わざわざ、コインパーキングの高価な機器類を設置する必要はありません。
ただし、貸駐車場の面積が200㎡を超えた部分には、小規模宅地等の特例が使えないので注意が必要です。
月極駐車場の場合
基本的に月極駐車場よりコインパーキングのほうが節税の方策がありますが、月極駐車場が賃貸アパートに隣接し、入居者専用駐車場として利用しているケースは例外です。
この場合、月極駐車場も賃貸アパートと一体評価で貸家建付地として、小規模宅地等の特例が適用されるからです。
下手にコインパーキングに変更して、入居者専用駐車場でなくなると、この税制メリットは消滅し、貸家建付地評価よりも大幅に評価額が上がってしまうので注意しましょう。
生前贈与を活用する
これは駐車場経営に限らない話ですが、生前に財産を贈与して、相続する財産を減らしておくことも相続税対策になります。
生前贈与には、「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」があります。
暦年贈与は、非課税枠である年間110万円以内の贈与を繰り返して節税する手法です。
相続時精算課税制度は、累計で2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができます。
贈与者の死亡後、その贈与財産の価額と、相続財産の価額を合計した金額から相続税額を計算し、まとめて相続税として納税する制度です。
養子縁組で相続人を増やす
養子縁組で法定相続人を増やすことも有効な相続税対策です。
法定相続人を増やすと基礎控除額も増え、相続税の減額につなげることができます。
小規模宅地等の特例を受けられる駐車場
小規模宅地等の特例を受けられる駐車場について、おさらいしておきましょう。
アスファルト舗装
前述の通り、アスファルト舗装をすることで、土地の上の「構造物」とみなされ、小規模宅地等の特例により、土地の評価減を受けることができます。
もし、すでに駐車場経営を行っているのであれば、自らアスファルトの施工費を負担すると、その費用は駐車場の必要経費、損金として処理することが可能です。
業者に負担させても初期費用をなくせるので、最終的により節税になるほうを選択するとよいでしょう。
砂利敷きの駐車場
砂利敷きの駐車場については、小規模宅地等の特例が適用されるという意見と、適用されないとする見方があります。
結論から言うと、砂利敷きは構築物とみなされるので、基本的には小規模宅地等の特例が適用できるのですが、砂利が流れてしまい、地面がむき出しになっていると微妙です。
税務署が見て砂利敷きと認めなければそれまでなので、砂利は常に駐車場に敷き詰められている状態にしておくか、無難にアスファルト舗装に変えましょう。
アスファルト舗装が一部のみされている駐車場
敷地面積の一部のみがアスファルトで、残りが土の駐車場があったとしましょう。
この場合、敷地全体に小規模宅地等の特例の適用は可能でしょうか?
残念ながら、小規模宅地等の特例が受けられるのはアスファルト舗装部分のみです。
また、アスファルト部分の面積が著しく小さいようだと、そのアスファルト部分についての小規模宅地等の特例が適用されない場合があります。
小規模宅地等の特例が受けられない駐車場
続いて、小規模宅地等の特例が受けられない駐車場についても、今一度確認しておきましょう。
特例が適用される、されないの分かれ目は微妙なので、気をつけていないと思わぬ税制上の不利を被ってしまいます。
青空駐車場である
小規模宅地等の適用を受けるのは、青空駐車場にしただけではダメで、土地の上に構造物を作ることが条件です。
砂利敷きでも大丈夫、とする意見もありますが、長年放置すると流出しやすいので、なるべくなら万人が認めるアスファルト舗装を選択しましょう。
親族や知り合いに、駐車場を貸している
小規模宅地等の特例を受けるには、「土地の上に建物又は構築物があること」「貸駐車場が相当な対価を得て継続的に行われていること」の2つの条件が必要だとお伝えしました。
もし、子どもや友人に無料ないし、賃貸借契約書の証拠もなしに安価で駐車場を貸していると、継続的営利目的の条件を満たしていないと判断されてしまいます。
この場合、小規模宅地等の特例を受けることができなくなるので、注意が必要です。
駐車場の一部に自家用車を駐車している
自家用車を土地の一部に停めていると、その部分の面積は小規模宅地等の特例を受けられない場合があります。
ただし、アスファルト舗装にしたり、コインパーキングにしたりすれば貸付事業用の小規模宅地等の特例が適用され、土地の評価額は50%減額になります。
コインパーキング経営を含む駐車場の相続税対策はいろいろある
今回は駐車場と税金問題のうち、相続税を対象に有効な節税方法を紹介しました。
土地の評価額を200㎡まで50%減額できる小規模宅地等の特例は、相続したばかりの青空駐車場であっても、土地の上をアスファルトで舗装すれば適用されます。
この方法を使えば、駐車場にしたうえでの相続税対策も可能です。
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