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駐車場経営では確定申告が必須?不要なケースや申告区分、経費を解説

        
公開日 2024.09.30 更新日 2024.10.18
    
駐車場経営 確定申告

駐車場の経営は人気の高い土地活用の手段の一つです。実際に運用を始めた場合、気になるのが確定申告ではないでしょうか。会社員やアルバイト、パートとして給料を貰っている人が副業として駐車場経営をする場合、個人事業主やフリーランスの人が事業として駐車場経営をする場合など、確定申告の要不要や区分はケースごとに異なります。納税に関わるため、「よくわからないから」と放置することもできません。

まずは、確定申告が必要なケースと不要なケースを押さえ、必要な場合は「どの区分で申告するのか」「経費にできるのはどの費用か」をチェックしていきましょう。

駐車場経営において確定申告が必要なケース

駐車場経営においては、基本的に「年間所得が20万円以上」になった場合、確定申告を行う必要があります。1月1日から12月31日の1年間で判断しますので、例えば2023年12月に駐車場経営を開始し所得が10万円だった場合、2023年分の確定申告は不要です。しかし、2024年1月1日からの売り上げで所得が20万円以上になった場合には、2024年12月31日までの1年間分の収入に対し確定申告を行う義務が発生します。

なお、個人事業主やフリーランスとして生計を立てている場合、駐車場経営による年間所得が20万円以上でも「年間の合計所得が48万円以下」であれば確定申告は必要ありません。基礎控除などが発生し、所得税が発生しない範囲となるためです。ただし、駐車場経営以外にも収入があり、すべての所得を合計し48万円以上になる場合は確定申告が必要になりますので注意しましょう。

また、所得は「収入から経費を引いた額」という点も注目です。例えば年間の収入が50万円だった場合、経費が40万円であれば所得は10万円となるため確定申告は不要です。年間の収入が100万円で経費が40万円であれば、所得は60万円となりますから確定申告が必要になります。

確定申告は、基本的に翌年の2~3月の間に受付が行われます。具体的な期間はその年によって異なりますので、時期が近付いてきたら国税庁の告知をチェックしましょう。

駐車場経営の所得区分

駐車場経営で得た収入を確定申告する場合、「不動産所得」「事業所得」「雑所得」のいずれかの区分で申告を行うことになります。「不動産所得」として扱われることが一般的ですが、駐車場経営の方針によっては「事業所得」あるいは「雑所得」に分類されます。まずは自分の経営ケースがどこの申告区分に当てはまりそうかを確認しましょう。

不動産所得

駐車場経営で得た収入が「不動産所得」に当てはまるのは、主に下記のケースです。

  • 月極駐車場として経営している
  • 時間貸し駐車場の場合、土地所有者に駐車場管理の責任がない
    (駐車場運用のための主な設備を管理会社が持ち込んでいる)

まず、月極駐車場として駐車場を運用している場合、土地を貸しその賃料を得ていることになりますので、収入は原則として不動産所得として申告することになります。

次に時間貸し駐車場の経営についてですが、実際に運用する場合、管理会社に運用の業務の委託をするケースがほとんどでしょう。その場合に得た収入が「不動産所得」「事業所得」のどちらになるかですが、これは駐車場の管理責任が「管理会社」「土地所有者」のどちらにあるのかで判断をするのが一般的です。

管理責任がどこにあるかの判断は、駐車場運用のための主な設備(精算機やゲートの機器など)を、管理会社と土地所有者のどちらが所有しているかが主な基準となります。主な設備を駐車場管理の委託先の会社が持ち込む場合、駐車場の運営に関する責任やリスクは管理会社にあるとし、土地所有者の収入は不動産所得として申告するのが一般的な判断となるのです。

なお、不動産所得として確定申告する場合、駐車場の規模が50台以上であれば事業的規模と見なされますので最大65万円控除となる「青色申告特別控除」を申請することができます。最大10万円控除の白色申告と比べると複雑な手続きや書類作成が必要になりますが、大きな節税効果を持っていますので、駐車場経営が50台以上の規模である場合は青色申告を検討しましょう。

事業所得

駐車場経営で得た収入が「不動産所得」に当てはまるのは、主に下記のケースです。

  • 時間貸し駐車場管理として経営している
  • 土地所有者に駐車場管理の責任がある
    (駐車場運用のための主な設備を土地所有者が所有している)

不動産所得の欄でも記載をしましたが、「駐車場管理の責任」が管理会社と土地所有者のどちらにあるかは、精算機やゲートの機器など時間貸し駐車場を運用するうえで欠かせない設備の所有者がどちらなのかが主な判断材料となります。

駐車場運用のための主な設備を土地所有者が購入し、経営のリスクや責任を負っているのであれば、駐車場経営で得た収入は「事業者所得」として申告することになります。また、事業所得として分類されるケースでも、経営規模が例外的に小さい場合などは「雑所得」として申告することもあります。

雑所得

駐車場経営で得た収入が「雑所得」となるのは、主に下記のケースです。

  • 時間貸し駐車場管理として経営している
  • 駐車場の貸し台数が少ない
  • 他に主要な収入がある(副業として駐車場経営をしている)

時間貸し駐車場を運用しており、駐車場台数が1~2台など規模が小さい場合は「雑所得」になる可能性があります。また、主な収入が別にあり、駐車場経営は副業として行っている場合なども雑所得で申告をすることになります。

現在、事業所得と雑所得のどちらの扱いになるか、明確な基準は設けられていません。副業として駐車場経営をしている場合でもどれくらいの収入割合となっているのか、経営規模が実際どれくらいなのかなど、それぞれの駐車場の経営状況を鑑み、総合的な判断が求められるのです。

雑所得として申告ができるのか、できたとして事業所得と雑所得のどちらの区分で申告するとメリットが大きくなるかはケースバイケースですので、判断が難しい場合は税理士に相談してみましょう。

駐車場経営で経費計上できるもの

所得(収入から経費を差し引いた額)に応じて納税額が決定しますので、可能な限り経費として計上するのが節税の観点からもおすすめです。駐車場経営において、経費として計上できるのは主に下記の費用です。

土地整備費

駐車場として経営するために土地を整備した場合、かかった費用を経費として計上できます。特にコインパーキングの場合、設備の設置をするためにもアスファルトやコンクリート舗装が求められます。

看板の設置費

タイムパーキングの場合、料金の案内を記載した看板が必須です。月極駐車場の場合でも、利用規約などを記載した看板を設置したい場合は費用がかかります。こういった看板の設置費も経費として計上し問題ありません。

フェンスや精算機の設置費

フェンスは防犯の観点から求められる設備の一つです。設置していない駐車場もありますが、設置した場合でも経費計上は行って問題ありません。

精算機やゲートバーなど、運用に必要な機器の設置にかかった費用も経費計上が行えます。

消耗品費

精算機で料金を精算するとレシートが出てくる場合があります。こういったレシート用の紙や、電灯を設置している場合の電球などは消耗品費として経費計上ができます。

消耗品費に分類できるものは細々としたものが多いのが特徴です。事務用品など、運営をするうえで定期的に補充・交換が必要なものは消耗品費として計上しましょう。

運営管理費

清掃にかかった費用や、電気代、保険料などは運営管理費として経費に計上できます。月極駐車場の経営などでも、集金に有料のシステムを採用したのであれば運営管理費として経費計上ができます。

また、精算機に電子マネー決済やクレジットカード決済を採用している場合、決済手数料が発生しますが、この決済手数料も運営のための管理費として経費にできます。

メンテナンス費

駐車場運用のために機器を設置している場合、定期的なメンテナンスは欠かせません。また、運用に際してシステムを導入している場合はシステムのメンテナンスが必要になる場合もあります。メンテナンス作業を外注した場合などに料金が発生したのであれば、経費として計上しましょう。

光熱費

街灯を設置している、電子掲示板を設置している場合、光熱費が発生します。これらも経費として計上できますが、家計と料金を合算している場合は全額経費にできないため注意が必要です。家計でかかった料金、業務でかかった料金を分け、業務でかかった料金のみ経費として計上する必要があります。

修繕費

看板やフェンス、機器など、駐車場の運営で必要な物資が壊れてしまった場合、その修繕にかかった料金を経費計上することができます。

損害保険料

駐車場内で発生する可能性があるトラブルに備え保険に加入した場合、その保険料も経費として計上できます。災害保険や施設賠償責任保険など、駐車場経営で加入しておきたい保険がある場合、保険料は経費計上できると念頭に入れ加入する保険を決定するといいでしょう。

租税公課

駐車場経営で発生した税金も、経費として計上できるものがあります。消費税や固定資産税、都市計画税などです。

また、駐車場にするための土地を取得する段階でかかった登録免許税、印紙税なども経費計上が可能です。

減価償却費

複数年にわたり利用できるような20万円以上の「資産」を導入した場合、減価償却しての経費計上が求められます。導入した年に一括で経費計上するのではなく、耐用年数分で分割し経費として計上するのです。

例えば、タイムパーキング運用の設備を100万円で導入した場合、法定耐用年数は5年とされていますので、20万円ずつを5年間経費として計上します。このように、減価償却したものがあれば、その減価償却費を毎年経費として計上することになります。

駐車場経営で経費計上できないもの

駐車場経営においてなるべく多くの費用を経費計上したいところですが、経費として計上することができないものもいくつかあります。

仲介手数料

土地を購入する際、不動産会社を介したのであれば不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。この仲介手数料は経費として計上できませんので、注意しましょう。

土地購入費

減価償却の説明の際、「複数年にわたり利用できるような20万円以上の「資産」は減価償却の対象として経費計上を行う」と記載しました。一見「土地」も該当するように見えますが、土地は年数経過で価値が減少するものではないため、減価償却の対象にはならず、経費として計上することはできません。固定資産税の中でも、減価償却できず経費計上できない代表的な資産が「土地」なのです。

固定資産税および都市計画税相当額の清算費

固定資産税は、1月1日のタイミングでその土地を所有している人物に支払う義務が発生します。例えば2024年2月に土地を売った場合でも、2024年分の固定資産税は2月以降に土地を所有することになる買主ではなく、1か月間しか土地を所有していなかった売主に支払いの義務が発生するのです。

この不公正さを解消するために導入されているのが、「清算費」という考え方です。固定資産税や都市計画税を日割りで計算し、算出された額を買主が売主に支払うのが一般的です。

この「清算費」は、土地購入費に分類されるため経費として計上はできません。

駐車場経営をするなら確定申告も要チェック

いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、駐車場経営で確定申告が必要なケースとそうでないケース、申告の区分や経費の面をご理解いただけたと思います。

確定申告が必要なのに行わなかった場合、追加で税金がかかってしまうだけでなく、悪質だと判断された場合は刑事罰として扱われてしまうこともあります。そして確定申告が必要な場合、駐車場の種類や経営の方法によって申告区分が異なってきます。

また、節税のためには経費の計上が欠かせません。できる限り経費に計上し、節税をしつつ、トラブルのない駐車場経営を目指していきましょう。

コラム監修者

太田 佳里

太田 佳里(オオタヨシサト)

パーキング事業部 マネージャー

宅地建物取引士 2級土木施工管理技師

<略歴>

駒澤大学を卒業後、不動産業界へ就職

<コメント>

弊社では創業から50年不動産の有効利用、資産管理を一貫して行ってまいりました。土地活用のエキスパートとしてオーナー様のご要望にお応えするサービスの提供を行ってまいります。

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