土地活用を考えたとき、マンションなどの賃貸経営を検討する方は多いのではないでしょうか。
実際に運用するとなると、入居者の確保やさまざまな管理業務を手間なく円滑に運営していく必要があります。
その方法として、物件の全棟管理を不動産会社に委託する“一括借り上げ”という運用法があることをご存じですか。
賃料保証のあるメリットが多い契約ですが、注意点も多々ありますので、本記事でそのあたりを詳しく解説します。
目次
一括借り上げの基礎知識
“一括借り上げ”とは、不動産会社が賃貸物件のオーナーから建物全体をまるごと借り上げる契約のことです。
不動産会社はオーナーに代わって物件を管理・運営し、入居者の募集や家賃の徴収などを行います。
オーナーは、入居状況にかかわらず、不動産会社から毎月まとまった額の賃料を受け取ることが可能です。
また、全棟一括ではなく、部分的に借り上げる場合も一括借り上げに含まれます。
契約上、賃借人(借主)は入居者ではなく不動産会社や不動産管理会社であり、これらが入居者に転貸し(また貸し)するかたちとなります。
一括借り上げはオーナー側にとって多くのメリットがあるものの、不動産会社が約束した内容を履行できずトラブルとなるケースも少なくありません。
メリットだけではなく、仕組みや注意点も理解したうえで、契約の是非を判断しましょう。
一括借り上げの仕組み
一括借り上げは、オーナーに毎月安定した家賃を保証する契約です。
物件の管理も管理会社に任せればよいので、オーナーは賃貸契約の手間もほとんどかかりません。
オーナーが受け取る家賃は管理会社に支払う手数料が差し引かれており、その額は、管理会社算出の査定賃料の10%~20%程度です。
家賃を受け取れる期間は不動産会社と契約して取り決めます。
一括借り上げに似たような契約に管理委託契約がありますが、この場合は賃貸物件であれば入居者募集、賃料管理、清掃、建物の保守点検などを管理会社に委託するだけです。
契約はオーナーと入居者が直接交わし、賃料も入居者から受け取ります。
空室が多い時期は、当然家賃収入も下がるので収入は不安定になります。
ただし、入居率が上がるとオーナーの収入も増えるので、高い入居率が見込めるマンション・アパートや回転率が高い物件は、管理委託契約のほうを検討してもよいかもしれません。
賃料保証型とパススルー型
一括借り上げの契約方法には“賃料保証型”(賃料固定型)と“パススルー型”(実質賃料連動型)の2種類があります。
賃料保証型は、オーナーと不動産会社が管理契約を結び、毎月一定の賃料をオーナーに支払うというものです。
家賃保証契約であるため、不動産会社の手数料も15~20%ほど割高に設定されていることが多いです。
一方、バススルー型は入居者が支払う家賃がそのままオーナーの収入となります。
賃料保証がなく空室リスクへの対策が必要ですが、入居率が高まれば収益増につながるのが賃料保証型との違いです。
不動産会社の手数料は賃貸保証型よりも低く、一般的に5~10%程度といわれています。
通常、一括借り上げといえば賃料保証型を指し、バススルー型は家賃変動制という部分は前述の管理委託契約と似ています。
一括借り上げとサブリースの違い
一括借り上げと同義に使われる言葉に“サブリース”があります。
両者は広義では同じ意味ですが、厳密には次のような違いがあります。
一括借り上げは、オーナーが管理会社に物件を貸し出すことで、マスターリースともいいます。
一方サブリースは、管理会社と入居者のあいだで交わされる契約であり、管理会社のことをサブリース会社とよびます。
サブリースの前提が一括借り上げなので、サブリースを内包する言葉として用いられることが多いです。
一括借り上げのメリット
一括借り上げの最大のメリットは、不動産会社が建物を一棟丸ごと借り上げ、家賃を長期契約でオーナーに支払うため、空室や滞納リスクがないことです。
賃貸経営の実務をプロに任せられるため、オーナーは日常の管理業務やトラブル処理の煩わしさからも解放されます。
以下、もう少し詳しく見ていきましょう。
安定した家賃収入を得られる
家賃滞納や空室の有無に関係なく一定の賃料が保証されるので、計画性のある賃貸経営が可能です。
しかし、もちろん入居者がいることが前提であり、一括借り上げが成り立つかどうかは不動産管理会社の力量次第という面があります。
維持管理の手間がかからない
家賃保証と並ぶ一括借り上げの2大メリットは、物件の維持管理に関する負担がかからないという点です。
不動産管理会社に管理業務をすべて丸投げしているわけなので、これは当然です。
具体的には入居者募集、家賃・更新料の集金、クレーム対応、契約更新・解約の手続き、退去時の敷金精算、建物のメンテナンス・清掃、修繕費管理などが挙げられます。
入居者とトラブルや訴訟になっても、不動産管理会社が対応し費用負担もありません。
もし、これらをすべてオーナー単独で行うとなれば、物心両面で管理業務の負担が大きすぎるのはないでしょうか。
不動産管理業務はサラリーマンが本業の傍らでできるものではないので、副業で考えている方は、一括借り上げ、管理委託のどちらかを選択するほかないでしょう。
クレーム処理から解放される
前章で少し触れましたが、入居者からの相談やクレームの処理、入居者同士のトラブルの仲裁も本来はオーナーの責任で行わなければなりません。
しかし、水回りや電気・ガスなどの設備不具合であれば、業者に早めに手配すればなんとかなっても、騒音やペット問題は対応に苦慮するのではないでしょうか。
経験がなければ、負荷の重い作業であるクレーム処理には手間取るはずです。
一括借り上げであれば、このような業務も管理会社が円滑に対応してくれるため、オーナーはクレーム処理の悩みから解放されます。
確定申告を簡素化できる
賃貸物件経営を行うオーナーは、年度末に確定申告しなければなりません。
家賃や入退去時の費用などを計上するだけでなく、固定資産税や減価償却費をはじめとする経費も漏れなく計算する必要があります。
一括借り上げでは、こうした手間と時間のかかる確定申告や出納管理なども管理会社が代行してくれるため、確定申告作業を大幅に簡素化できます。
一括借り上げのデメリット
以上見てきた通り、一括借り上げは不動産オーナーにとってさまざまなメリットがある契約ですが、利用するにあたってはいくつものデメリットを押さえておく必要があります。
具体的に挙げると以下の通りです。
手数料が比較的高額
所有する賃貸物件をもっとも低コストで運営する方法は、管理・運営の雑務に至るまでオーナーが自ら行うことです。
手数料が発生しないため、入居者から得た家賃はすべてオーナーの収益となります。
家賃の集金や清掃、メンテナンスなどの管理業務を不動産会社に委託した場合、委託手数料の相場は賃料の5%程度です。
一方、一括借り上げの場合、家賃は一旦管理会社が受け取り、そのうえで委託手数料を差し引いた金額がオーナーに支払われます。
手数料の金額は前述の通り、満室時賃料の15~20%程度と、空室リスクがない分、高めです。
高い手数料をどう考えるべきか
問題はこの手数料を妥当と見るか、高いと見るかです。
入居率の変動が家賃収入には反映しないという仕組みは、それだけで、空室対策に頭を悩ますことが多い賃貸経営には向いているかもしれません。
単純計算で年間入居率が手数料差し引き見合いであれば一括借り上げが得、それ以上見込める好物件であれば、管理委託契約のみ結んだほうが得ということになります。
ただし、管理会社もプロですから、一括借り上げを契約した時点で一定以上の入居率が見込めると判断したはずです。
その辺は管理会社との駆け引きでもありますが、一括借り上げを選択した以上、入居率の好調は「想定内」と考えておいたほうがよいでしょう。
たとえ満室状態が続いたとしても、それは管理会社営業部門の“頑張り”によるものと考えれば、オーナーは必ずしも「損をした」とは限らないからです。
敷金・礼金や更新料収入が得られない
地域にもよりますが、賃貸物件の賃貸借契約を結ぶ場合は通常、敷金・礼金が発生します。
2年毎が一般的な契約更新時には更新料が発生し、オーナーの収益となります。
しかし、一括借り上げ契約を結んだ場合は、敷金・礼金、更新料などの受取人は管理会社であって、オーナーが受け取れるのは定額の保証賃料のみです。
賃料保証には免責期間がある
一括借り上げは家賃保証がある経営方式ですが、契約開始から限られた「免責期間」はオーナーに家賃は支払われません。
一括借り上げにおける免責期間とは、不動産管理会社との契約日から一定期間設定される、入居者募集期間のことです。
一般的に、契約日から60~90日で設定されています。
管理会社によっては入居者の退去後や契約更新(見直し)時にも、約30日の免責期間を設けている場合があります。
免責期間の条件や日数は管理会社によって異なるため、契約前の確認は必須です。
家賃収入が減少する場合がある
一括借り上げの一番のメリットは、家賃保証がある点ですが、契約期間が終了するまで同じ家賃が保証されるわけではありません。
2~5年ごとに保証賃料の見直しが行われるケースが大半です。
物価変動などが起こった際にも臨時に賃料改定協議を行う管理会社もあります。
賃料改定協議では、近隣の家賃相場や築年数による経年劣化を考慮し、賃料が値下げされることが多いため、家賃収入は徐々に減少するものと心づもりをしておきましょう。
入居者選定に関与できない
一括借り上げの物件は、入居者の募集、選定も管理会社の裁量で行われます。
オーナーの意に必ずしも沿うとは限りませんが、人選を委ねられた管理会社も当事者として責任があるため、社会常識的にありえないような入居者は認めないはずです。
この点はもし、よほど不満があれば、オーナーの意向が無視されるということは考えられないので心配しなくてよいでしょう。
修理やリフォームの費用を負担する必要がある
一括借り上げは、管理費用は手数料に含まれていますが、建物・設備の老朽化に伴う修繕費やリフォーム費用はオーナーの負担となります。
自然災害などで物件が損傷を受けた場合も同様です。
日常の運営にはノータッチであっても、建物のオーナーである以上、不測の事態に備えて、毎月の収入から修繕費などを積み立てておきましょう。
契約解除に関わるリスクがある
不動産管理会社から家賃の減額を求められ、オーナーがそれを拒否した場合は、一括借り上げ契約を解除されるリスクがあります。
そうなったら、他の賃貸管理会社を探さなければなりません。
家賃収入を購入資金の返済に充てている場合は、収支計画を急ぎ見直す必要もあります。
また、これとは逆に契約書内に“中途解約条項”がないと、オーナーからの申し入れによる解約が行えません。
30年など長期間に及ぶ契約だと、何十年も中途解約ができなくなってしまいます。
中途解約条項がある場合でも、オーナー側からの解約申し入れには違約金が発生する条項があると、解約は非常に困難です。
一括借り上げでは、こうしたオーナーに不利な内容となっていないか、十分にチェックしてから契約しましょう。
不動産会社の倒産もありえる
万が一、一括借り上げの契約期間中に不動産会社が倒産してしまったらどうなるでしょうか。
これまで物件を管理していた権利は当然のことながらオーナーに引き継がれます。
しかし、倒産前後の混乱のなかで、必要な引継ぎがきちんとなされるという保証はありません。
入居者から預かった敷金が行方不明になったり、入居者が不動産会社の倒産を知らず入金先に迷ったり、倒産会社に入金し続けてしまうことも起こり得ます。
そうなると、家賃収入が中断してしまうので、オーナーにとっては大きなリスクといえます。
一括借り上げは契約内容をよく確認して
不動産オーナーに向けて、一括借り上げ契約の仕組みと、管理委託との違い、メリット・デメリットについてお伝えしてきました。
家賃定額保証に加え、物件の維持管理を不動産管理会社に丸投げできるのが最大のメリットです。
その一方で、手数料が高い、入居率が上がっても家賃に反映されない、家賃は徐々に下がっていく、契約解除に関わるリスクがあるなどいくつものデメリットが生じる契約です。
一括借り上げで資産運用を考えている方は、契約内容を十分確認しておきましょう。
ユアーズコーポレーションでは、コインパーキング運営のお手伝いをしています。
駐車場契約にも一括借り上げがありますので詳しくはご相談ください。
ディスクリプション:不動産の一括借り上げによるオーナーのメリット・デメリットを中心タイトルKW:
一括借り上げ
メインKW:
なし
賃貸経営の一括借り上げとは?メリット・デメリットを解説
土地活用を考えたとき、マンションなどの賃貸経営を検討する方は多いのではないでしょうか。
実際に運用するとなると、入居者の確保やさまざまな管理業務を手間なく円滑に運営していく必要があります。
その方法として、物件の全棟管理を不動産会社に委託する“一括借り上げ”という運用法があることをご存じですか。
賃料保証のあるメリットが多い契約ですが、注意点も多々ありますので、本記事でそのあたりを詳しく解説します。
一括借り上げの基礎知識
“一括借り上げ”とは、不動産会社が賃貸物件のオーナーから建物全体をまるごと借り上げる契約のことです。
不動産会社はオーナーに代わって物件を管理・運営し、入居者の募集や家賃の徴収などを行います。
オーナーは、入居状況にかかわらず、不動産会社から毎月まとまった額の賃料を受け取ることが可能です。
また、全棟一括ではなく、部分的に借り上げる場合も一括借り上げに含まれます。
契約上、賃借人(借主)は入居者ではなく不動産会社や不動産管理会社であり、これらが入居者に転貸し(また貸し)するかたちとなります。
一括借り上げはオーナー側にとって多くのメリットがあるものの、不動産会社が約束した内容を履行できずトラブルとなるケースも少なくありません。
メリットだけではなく、仕組みや注意点も理解したうえで、契約の是非を判断しましょう。
一括借り上げの仕組み
一括借り上げは、オーナーに毎月安定した家賃を保証する契約です。
物件の管理も管理会社に任せればよいので、オーナーは賃貸契約の手間もほとんどかかりません。
オーナーが受け取る家賃は管理会社に支払う手数料が差し引かれており、その額は、管理会社算出の査定賃料の10%~20%程度です。
家賃を受け取れる期間は不動産会社と契約して取り決めます。
一括借り上げに似たような契約に管理委託契約がありますが、この場合は賃貸物件であれば入居者募集、賃料管理、清掃、建物の保守点検などを管理会社に委託するだけです。
契約はオーナーと入居者が直接交わし、賃料も入居者から受け取ります。
空室が多い時期は、当然家賃収入も下がるので収入は不安定になります。
ただし、入居率が上がるとオーナーの収入も増えるので、高い入居率が見込めるマンション・アパートや回転率が高い物件は、管理委託契約のほうを検討してもよいかもしれません。
賃料保証型とパススルー型
一括借り上げの契約方法には“賃料保証型”(賃料固定型)と“パススルー型”(実質賃料連動型)の2種類があります。
賃料保証型は、オーナーと不動産会社が管理契約を結び、毎月一定の賃料をオーナーに支払うというものです。
家賃保証契約であるため、不動産会社の手数料も15~20%ほど割高に設定されていることが多いです。
一方、バススルー型は入居者が支払う家賃がそのままオーナーの収入となります。
賃料保証がなく空室リスクへの対策が必要ですが、入居率が高まれば収益増につながるのが賃料保証型との違いです。
不動産会社の手数料は賃貸保証型よりも低く、一般的に5~10%程度といわれています。
通常、一括借り上げといえば賃料保証型を指し、バススルー型は家賃変動制という部分は前述の管理委託契約と似ています。
一括借り上げとサブリースの違い
一括借り上げと同義に使われる言葉に“サブリース”があります。
両者は広義では同じ意味ですが、厳密には次のような違いがあります。
一括借り上げは、オーナーが管理会社に物件を貸し出すことで、マスターリースともいいます。
一方サブリースは、管理会社と入居者のあいだで交わされる契約であり、管理会社のことをサブリース会社とよびます。
サブリースの前提が一括借り上げなので、サブリースを内包する言葉として用いられることが多いです。
一括借り上げのメリット
一括借り上げの最大のメリットは、不動産会社が建物を一棟丸ごと借り上げ、家賃を長期契約でオーナーに支払うため、空室や滞納リスクがないことです。
賃貸経営の実務をプロに任せられるため、オーナーは日常の管理業務やトラブル処理の煩わしさからも解放されます。
以下、もう少し詳しく見ていきましょう。
安定した家賃収入を得られる
家賃滞納や空室の有無に関係なく一定の賃料が保証されるので、計画性のある賃貸経営が可能です。
しかし、もちろん入居者がいることが前提であり、一括借り上げが成り立つかどうかは不動産管理会社の力量次第という面があります。
維持管理の手間がかからない
家賃保証と並ぶ一括借り上げの2大メリットは、物件の維持管理に関する負担がかからないという点です。
不動産管理会社に管理業務をすべて丸投げしているわけなので、これは当然です。
具体的には入居者募集、家賃・更新料の集金、クレーム対応、契約更新・解約の手続き、退去時の敷金精算、建物のメンテナンス・清掃、修繕費管理などが挙げられます。
入居者とトラブルや訴訟になっても、不動産管理会社が対応し費用負担もありません。
もし、これらをすべてオーナー単独で行うとなれば、物心両面で管理業務の負担が大きすぎるのはないでしょうか。
不動産管理業務はサラリーマンが本業の傍らでできるものではないので、副業で考えている方は、一括借り上げ、管理委託のどちらかを選択するほかないでしょう。
クレーム処理から解放される
前章で少し触れましたが、入居者からの相談やクレームの処理、入居者同士のトラブルの仲裁も本来はオーナーの責任で行わなければなりません。
しかし、水回りや電気・ガスなどの設備不具合であれば、業者に早めに手配すればなんとかなっても、騒音やペット問題は対応に苦慮するのではないでしょうか。
経験がなければ、負荷の重い作業であるクレーム処理には手間取るはずです。
一括借り上げであれば、このような業務も管理会社が円滑に対応してくれるため、オーナーはクレーム処理の悩みから解放されます。
確定申告を簡素化できる
賃貸物件経営を行うオーナーは、年度末に確定申告しなければなりません。
家賃や入退去時の費用などを計上するだけでなく、固定資産税や減価償却費をはじめとする経費も漏れなく計算する必要があります。
一括借り上げでは、こうした手間と時間のかかる確定申告や出納管理なども管理会社が代行してくれるため、確定申告作業を大幅に簡素化できます。
一括借り上げのデメリット
以上見てきた通り、一括借り上げは不動産オーナーにとってさまざまなメリットがある契約ですが、利用するにあたってはいくつものデメリットを押さえておく必要があります。
具体的に挙げると以下の通りです。
手数料が比較的高額
所有する賃貸物件をもっとも低コストで運営する方法は、管理・運営の雑務に至るまでオーナーが自ら行うことです。
手数料が発生しないため、入居者から得た家賃はすべてオーナーの収益となります。
家賃の集金や清掃、メンテナンスなどの管理業務を不動産会社に委託した場合、委託手数料の相場は賃料の5%程度です。
一方、一括借り上げの場合、家賃は一旦管理会社が受け取り、そのうえで委託手数料を差し引いた金額がオーナーに支払われます。
手数料の金額は前述の通り、満室時賃料の15~20%程度と、空室リスクがない分、高めです。
高い手数料をどう考えるべきか
問題はこの手数料を妥当と見るか、高いと見るかです。
入居率の変動が家賃収入には反映しないという仕組みは、それだけで、空室対策に頭を悩ますことが多い賃貸経営には向いているかもしれません。
単純計算で年間入居率が手数料差し引き見合いであれば一括借り上げが得、それ以上見込める好物件であれば、管理委託契約のみ結んだほうが得ということになります。
ただし、管理会社もプロですから、一括借り上げを契約した時点で一定以上の入居率が見込めると判断したはずです。
その辺は管理会社との駆け引きでもありますが、一括借り上げを選択した以上、入居率の好調は「想定内」と考えておいたほうがよいでしょう。
たとえ満室状態が続いたとしても、それは管理会社営業部門の“頑張り”によるものと考えれば、オーナーは必ずしも「損をした」とは限らないからです。
敷金・礼金や更新料収入が得られない
地域にもよりますが、賃貸物件の賃貸借契約を結ぶ場合は通常、敷金・礼金が発生します。
2年毎が一般的な契約更新時には更新料が発生し、オーナーの収益となります。
しかし、一括借り上げ契約を結んだ場合は、敷金・礼金、更新料などの受取人は管理会社であって、オーナーが受け取れるのは定額の保証賃料のみです。
賃料保証には免責期間がある
一括借り上げは家賃保証がある経営方式ですが、契約開始から限られた「免責期間」はオーナーに家賃は支払われません。
一括借り上げにおける免責期間とは、不動産管理会社との契約日から一定期間設定される、入居者募集期間のことです。
一般的に、契約日から60~90日で設定されています。
管理会社によっては入居者の退去後や契約更新(見直し)時にも、約30日の免責期間を設けている場合があります。
免責期間の条件や日数は管理会社によって異なるため、契約前の確認は必須です。
家賃収入が減少する場合がある
一括借り上げの一番のメリットは、家賃保証がある点ですが、契約期間が終了するまで同じ家賃が保証されるわけではありません。
2~5年ごとに保証賃料の見直しが行われるケースが大半です。
物価変動などが起こった際にも臨時に賃料改定協議を行う管理会社もあります。
賃料改定協議では、近隣の家賃相場や築年数による経年劣化を考慮し、賃料が値下げされることが多いため、家賃収入は徐々に減少するものと心づもりをしておきましょう。
入居者選定に関与できない
一括借り上げの物件は、入居者の募集、選定も管理会社の裁量で行われます。
オーナーの意に必ずしも沿うとは限りませんが、人選を委ねられた管理会社も当事者として責任があるため、社会常識的にありえないような入居者は認めないはずです。
この点はもし、よほど不満があれば、オーナーの意向が無視されるということは考えられないので心配しなくてよいでしょう。
修理やリフォームの費用を負担する必要がある
一括借り上げは、管理費用は手数料に含まれていますが、建物・設備の老朽化に伴う修繕費やリフォーム費用はオーナーの負担となります。
自然災害などで物件が損傷を受けた場合も同様です。
日常の運営にはノータッチであっても、建物のオーナーである以上、不測の事態に備えて、毎月の収入から修繕費などを積み立てておきましょう。
契約解除に関わるリスクがある
不動産管理会社から家賃の減額を求められ、オーナーがそれを拒否した場合は、一括借り上げ契約を解除されるリスクがあります。
そうなったら、他の賃貸管理会社を探さなければなりません。
家賃収入を購入資金の返済に充てている場合は、収支計画を急ぎ見直す必要もあります。
また、これとは逆に契約書内に“中途解約条項”がないと、オーナーからの申し入れによる解約が行えません。
30年など長期間に及ぶ契約だと、何十年も中途解約ができなくなってしまいます。
中途解約条項がある場合でも、オーナー側からの解約申し入れには違約金が発生する条項があると、解約は非常に困難です。
一括借り上げでは、こうしたオーナーに不利な内容となっていないか、十分にチェックしてから契約しましょう。
不動産会社の倒産もありえる
万が一、一括借り上げの契約期間中に不動産会社が倒産してしまったらどうなるでしょうか。
これまで物件を管理していた権利は当然のことながらオーナーに引き継がれます。
しかし、倒産前後の混乱のなかで、必要な引継ぎがきちんとなされるという保証はありません。
入居者から預かった敷金が行方不明になったり、入居者が不動産会社の倒産を知らず入金先に迷ったり、倒産会社に入金し続けてしまうことも起こり得ます。
そうなると、家賃収入が中断してしまうので、オーナーにとっては大きなリスクといえます。
一括借り上げは契約内容をよく確認して
不動産オーナーに向けて、一括借り上げ契約の仕組みと、管理委託との違い、メリット・デメリットについてお伝えしてきました。
家賃定額保証に加え、物件の維持管理を不動産管理会社に丸投げできるのが最大のメリットです。
その一方で、手数料が高い、入居率が上がっても家賃に反映されない、家賃は徐々に下がっていく、契約解除に関わるリスクがあるなどいくつものデメリットが生じる契約です。
一括借り上げで資産運用を考えている方は、契約内容を十分確認しておきましょう。
ユアーズコーポレーションでは、コインパーキング運営のお手伝いをしています。
駐車場契約にも一括借り上げがありますので詳しくはご相談ください。
に解説しています。日々の維持管理や空室による収入減少に頭を悩ます必要のない契約ですが、デメリットも伴うので慎重に検討することが大切です。