2023年12月13日に施行された改正「空家対策特別措置法」により、管理状態の悪い空き家は、固定資産税が最大6倍に増額されました。
空き家といえども、住居が建っている土地は固定資産税が減額されています。
しかし、改正法の施行により、老朽化が目立つ空き家は、逆に所有するリスクが高まってしまったのです。
本記事は空き家の固定資産税が上がる条件などを詳しくまとめています。
税額の負担増回避のヒントになるはずです。
実家が空き家になるリスク
高齢化が進む近年では、老親が施設に入居したことをきっかけに実家が空き家状態となり、遠隔地に住む子供世帯が管理できずに放置されてしまう事例が増加しています。
こうなると何が問題かというと税金です。
空き家は、その状態によって、あるいは解体して更地にしてしまうことで“固定資産税”と“都市計画税”の大幅な変動が生じます。
ここではまず、空き家の状態と税金の関わりについて解説します。
空き家にかかる税金
固定資産税は建物と土地の、それぞれに課税される税金です
つまり、不動産を所有していると固定資産税がかかり、地域によっては都市計画税も課税されます。
この2つの税金は、市町村が決める不動産の価値“課税標準”に基づいて税額が決まり、1月1日時点の所有者が納税義務を負います。
空き家であっても所有者には納税通知書が届くので、税金を支払わなければなりません。
この固定資産税と都市計画税には“住宅用地の特例”という減税措置があります。
ただし、その適用は「住宅が建っていること」が条件です。
住宅用地の特例なので当たり前なのですが、更地、あるいは人の住まない倉庫等であったら適用されないのです。
つまり、空き家を解体してしまうとこの制度が適用されずに、税金は高くなるわけです
空き家と住宅用地の特例措置
住宅用地の特例とは、住宅用地に対する固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1まで減額されるという制度です。
平成26年度まではすべての住宅に適用されていましたが、平成27年度からは後述する「特定空き家等」への適用は除外されました。
現在は、人の住んでいた空き家であれば、無条件に住宅用地の特例が適用されるわけではないのです。
住宅用地の特例のあらまし
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
空き地(更地) | 何も建物がない状態 | 課税標準の1.4% | 課税標準の0.3% |
小規模住宅用地 | 住宅1戸につき200
㎡まで |
課税標準×1/6 | 課税標準×1/3 |
一般住宅用地 | 住宅1戸につき200㎡を超えた部分 | 課税標準×1/3 | 課税標準×2/3 |
たとえば300㎡の土地に1戸建てが建っていた場合、更地(土地だけ)の状態に比べ固定資産税はおよそ半額となります。
空き家を解体しないほうが税制上は有利
空き家であっても特定空き家でなければ固定資産税等の住宅用地特例は適用され、軽減措置を受けることができます。
老朽空き家でも、一定の管理をしていれば税金の特例は適用されるわけです。
ただし、人が住まなくなった住居の劣化は予想外に早く、遠隔地に住んでいると、なかなか管理が行き届かず、専門の不動産管理会社に委託するという方が少なくありません。
もし、管理の手間とコストを避けて建物を解体して更地にした場合、建物に対する固定資産税がなくなり、住宅用地の特例も適用されなくなります。
その結果、土地にかかる税金の特例率が消滅し、固定資産税総額では負担が増えてしまうのです。
空き家を維持する方が多いのは、この課税問題が理由であるといえます。
使用しない家であっても、建物を残したままのほうが税制的に有利だからです
“特定空き家”指定で固定資産税が6倍に?
特定空き家とは、“空き家法”に基づいて指定される、「放置すべきではない」と自治体が判断した空き家のことをいいます。
特定空き家に指定されると、住宅用地の特例から外され、税制優遇はなくなります。
固定資産税の減額が解除されると、税額は最大6倍に跳ね上がるので、税金対策でわざわざ家屋を残しておいたことが裏目となるわけです。
固定資産税の増額を回避するため、多くの人々が空き家を維持するようになった結果、相応の管理がされずに放置される老朽空き家が増えてきたのが空き家法制定の背景です。
放置空き家は建物の崩壊、害虫、不法投棄、放火、景観阻害などで、周辺に悪影響を及ぼす可能性が大きく、人口減が進む我が国では大きな社会問題となっています。
“管理不全空き家”も減額除外に
2023年には、新たに特定空き家の前段階である“管理不全空き家”という区分が設けられました。
管理不全空き家に認定され、そのまま放置すると、特定空き家と同様、住宅用地の特例が適用されなくなり、税金の負担が増えてしまいます。
管理不全空き家は、窓や壁の一部が割れていたり、雑草が生い茂っていたりと、管理がされていない状態の空き家が指定されます。
特定空き家になる前に、所有者に適切な管理を促すのが狙いです。
固定資産税が6倍になるまでの流れとタイミング
特定空き家や管理不全空き家に指定されても、すぐに固定資産税の減額が解除されるわけではありません。
固定資産税(都市計画税も)は毎年1月1日が基準日となっています。
そのため、もし特定空き家に指定されたとしても、年内にその状況を改善すれば、年明けには特定空き家は解除されており、住宅用地の特例は引き続き適用されます。
更地認定回避と同様、1月1日に間に合わせればよいわけです。
逆に、対処が遅れて特定空き家の解除が1月2日以降になってしまった場合、固定資産税の住宅用地の特例解除は決定してしまいます。
その年の4月年度変わりから、税額が大幅増となるので注意が必要です。
固定資産税が6倍になるまでの流れ
特定空き家や管理不全空き家に指定されてしまったら、1日も早くその状況から脱することを考えましょう。
固定資産税の減額解除に至るまでには、以下のように、いくつかの段階があります。
固定資産税減額解除のステップ
- 管理不全空家に指定
- 助言・指導
- 勧告
- 特定空き家に指定
- 助言・指導
- 勧告
- 命令
- 行政代執行
まず、行政による空き家の状況把握からスタートします。
空き家が発見されるパターンは、自治体担当者の見回りや、近隣住民からの連絡などさまざまです。
ただし、人が住んでいない状態であっても、この段階で十分な維持管理がなされ、見た目も問題がなければ、将来、住宅用地の特例除外の判断を受けることはあまりありません。
もし、今後、問題のある空き家となりうると判断された家屋は、担当者が外部から定期的な観察・確認を行い、必要を認めた場合はまず管理不全空き家に“指定”します。
指定を受けると、行政から家屋の所有者に適切な管理を行うよう「助言・指導」が入ります。
この段階で、住宅の修繕や解体、樹木の剪定や撤去など、助言・指導に適切に対応すれば、管理不全空き家の指定を解除することが可能です。
しかし、ここで助言・指導を無視して、空き家を放置すると次は“勧告”が待っています。
勧告が出た時点で特定空き家に指定され、所有者に対して管理や修繕をきちんと行うよう、改めて“助言・指導”がなされます。
その助言・指導に基づいて適切に対応すれば、特定空き家の指定は解除されますが、改善が見られない場合は、再度の勧告で住宅用地特例から除外され翌年度からは減額対象外です。200㎡以下の小規模住宅用地で6分の1の減額が適用されなくなると、固定資産税は指定される以前の6倍に跳ね上がります。
都市計画税があれば、そちらの減額措置も外され税額は指定前の3倍にアップです。
その後も状態が改善されなければ、改善“命令”が出され、最大50万円以下の罰金が科せられてしまいます。
最終的には“行政代執行”により、自治体が所有者に代わって処分・解体を行い、その高額な費用(数百万円にのぼるケースも)は空き家の所有者に請求されます。
この段階まで放置した場合、固定資産税フル課税+罰金+解体費用負担でペナルティは甚大なものになるので、何としてもそのような事態を回避する術を講じなくてはなりません。
空き家の固定資産税6倍を回避する方法6選
更地の高い固定資産税を回避するため、住まなくなった空き家を放置していたら、そちらが問題物件化して、特定空き家に認定されてしまいます。
現在、管理が行き届いていない空き家を所有する方にとっては、他人事ではありません。
ここからは、空き家の固定資産税6倍を回避するための対策方法を6つ紹介していきます。
①適切な管理を欠かさない
特定空き家に認定されないためには、適切な管理を欠かさないことですが、まずは自分で管理するとして、その場合の手間やコストを考えてみましょう。
あまりに遠方であれば、定期的な自己管理は現実的ではありません。
空き家になった直後の短い期間であれば、親戚や知人に任せるという手もありますが、長期にわたり完全に任せきるというわけにはいかないでしょう。
②自治体に早めに相談し連絡を密に
空き家を相続したら、日頃から自治体の担当課とコミュニケーションをとっておいて損はありません。
最寄りの役所に電話して、空き家管理の相談依頼をしてください。
自治体は、空き家の管理方法に関して自分から相談をしてくれる人を“環境保全に協力的な人物”と見てくれます。
そうなれば、積極的に空き家保全のアドバイスをしてくれるでしょう。
自治体によっては、積極利用したい自営業者やグループ向けに空き家を活用する事業を推進しているところもあります。
定期的に人に使ってもらえれば、無人放置は解消され、持ち主に代わって管理してもらっているようなものです。
こうした適切な空き家活用方法を提案してもらうためにも、自治体窓口にはご自分から相談にいくことをおすすめします。
③不動産管理会社に管理を委託
ご自身で管理あるいは親戚・知人に管理を依頼したくない場合には専門の管理業者に依頼することで解決します。
もちろん費用はかかりますが、空き家管理のプロに任せておけば安心感が違います。
④空き家を土地ごと売却する
空き家を売却して手放せば、固定資産税や都市計画税の負担、空き家の管理にかかる手間から解放されます。
お伝えした通り、使わなくなった空き家は、所有者にとっては危険な存在でもあるので、本来ならこの方法を一番先におすすめすべきかもしれません。
ただ、売ってしまいたいほど状態が悪い空き家であれば、売却先がすぐに見つからないことが想像されます。
買ったあとで、利用するにせよ、賃貸に使うにせよ多額のリフォーム代がかかりますから、当然のことといえます。
所有しつづけたい理由がない限りは、空き家になった時点で、傷みの少ないうちに速やかに売却に向けて動くことが、うまく売り抜けるコツといえるかもしれません。
相続不動産を専門に扱う不動産会社であれば、ホームインスペクション(住宅診断)のノウハウが豊富なため、不動産価値を最大限に評価し適正価格で売却する期待が持てます。
不動産会社の買取を利用する手も
古家つきの土地の売却は、個人間売買では敬遠されやすく、売却までに時間がかかることが多いです。
自治体から改善処分を促されているのに、なかなか売れずにいる場合は、不動産会社の買取を利用することも選択肢の一つです。
あまり高額の買取は期待できませんが、古家つきの土地でも素早く売却できること、現金化までの期間が短いなどのメリットは、不動産の処分に困ったときには捨てがたいものです。
⑤売らずに有効活用する
空き家は、そのほかにも以下のように活用することができます。
空き家を売らずに活用する方法
- 居住用物件として賃貸する
- 店舗用物件として貸し出す
- リフォームしてシェアハウスや民泊で活用
- 自治体に寄付する
家屋の状態によっては、自分で住むにせよ、人に貸すにせよ大幅な改修が必要になるので、特に古い空き家は再利用に多額のコストがかかることを踏まえておきましょう。
⑥無償で譲渡する
第三者間の取引では、売主と買主の双方が納得して、無償で譲渡することもできます。
ただし、親子や親類など同族間で取引すると、贈与税が課されます。
贈与税を回避するには、時価相当額で取引を行う必要があるので注意が必要です。
なお、相続した土地を手放したい場合は、“相続土地国庫帰属制度”も検討するとよいでしょう。
対象は宅地、田畑、森林など、建物のない土地で、土地の管理や処分に困っている場合に利用できる制度です。
利用には審査手数料(土地一筆あたり14,000円)と負担金(原則20万円、土地の種類や面積によって変動)がかかります。
⑦更地にしたほうが売却しやすいケースも
前述したように、この方法では支払う固定資産税が増えてしまうため、あくまで土地の買い手が見つりそうな場合に限定される方法かもしれません。
もちろん解体費用も必要ですが、“更地にしたほうが売却しやすい”というエリアもあります。
逆に、立地が悪いと、せっかく建物を解体して更地にしても売れない可能性があるので、不動産会社などに事前相談してから決めましょう。
また、空き家の解体費用に関する助成金制度を設けている自治体もあるので、調べてみることをおすすめします。
空き家の固定資産税を払わないとどうなる
空き家の所有者が、何らかの理由で空き家の固定資産税を払えなかったら、どうなるでしょうか。
自治体からの固定資産税の請求を無視し、滞納しつづけた場合、以下のような罰則が待っています。
延滞金が発生する
期限を過ぎても固定資産税を納付できずにいると、通常の税金に加えて延滞金が発生します。
固定資産税の延滞金の利率は「滞納日数1か月未満」「1か月以上」で異なっており、滞納期間が長くなるほど利率も高くなります。
最終的には差し押さえに
固定資産税の請求を長期間にわたり無視していると、最終的には財産を差し押さえられてしまいます。
預金や給与のほか、不動産や自動車など現金化できる資産すべてが差し押さえの対象です。
ただし滞納があっても、窓口に相談すれば分割納付など、柔軟に対応してもらえることもあります。
支払いが難しい場合、まずは自治体の納税課に連絡しましょう。
差し押さえを「最後の手段」と位置づける自治体は、穏便な解決を欲しているので話し合いの余地はあります。
固定資産税を払うことができない場合も、連絡もせずに滞納を続けることだけは得策とはいえないのでやめましょう。
空き家の放置は危険につき早めに対策を
空き家管理と固定資産税をテーマに解説してきました。
相続家屋を解体して更地にしてしまうと、「住宅用地の特例」の適用が外され、200㎡以下の小規模住宅用地の固定資産税は6倍に跳ね上がってしまいます。
200㎡を超える土地であれば、そこまでではありませんが、トータルの固定資産税は3~4倍に急増し、払いきれない人も出てくるかもしれません。
だからといって、誰も住まない空き家にして朽ちるに任せておけば、自治体から「特定空き家」に認定され、改善・解体を行政指導されてしまいます。
空き家を更地にしたあとの土地の有効活用についてはコインパーキング経営の老舗ユアーズコーポレーションがお手伝いいたします。
ぜひ、ご相談ください。