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実家を相続放棄する場合に知っておきたいポイントを解説

        
公開日 2025.10.09 更新日 2025.11.04
    

親の負の遺産は誰しも相続したくないもの。
借金はもちろん、誰も住まなくなった実家もそれにあたりますよね。
所持しているだけで管理費はかかる、税金は取られるで、うまく売却できない限り出費と手間から免れることはできません。

 

そんな実家を相続放棄するには、どのような点に注意すればよいでしょうか。
この記事では相続放棄の手続き・手順とともに、意に反して実家を相続してしまった際の対応策についても解説します。

相続放棄とは?

相続放棄とは、亡くなった被相続人(親など)が残した財産のすべてを引き継がないことをいいます。

 

相続を放棄するには、相続開始を知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対して「相続放棄申述書」と必要書類(戸籍謄本、住民票など)を提出します。
そこで、「相続放棄申述受理通知」を受け、相続放棄の申請が受理されると、相続に一切関わりがなくなるのです。

 

もし、3か月以内に相続放棄を決断できなければ、申述期間の延長を申請することもできますが、何も行わなければ自動的に相続が確定してしまいます。

相続放棄を行うメリットとデメリット

相続放棄によって相続権を手放すことには、メリット・デメリットがあります。
具体的にどのようなメリットやデメリットがあるのか、以下で挙げてみますので、相続放棄で迷った際の参考にしてください。
なお、一度相続放棄の手続きをすると撤回できないので、慎重に考える必要があります。

 

【相続放棄をするメリット】

  • 借金を相続しないで済む
  • 相続争いに巻き込まれない
  • 固定資産税の支払いを免れる

 

【相続放棄をするデメリット】

  • 財産を相続できない
  • 後順位相続人に対して、相続放棄をした旨を伝える必要がある
  • 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠が適用されない

相続放棄をするメリットとしてまず挙げられるのは、親(被相続人)の借金(負債、売掛金など含む)を肩代わりしなくて済むということです。
実際、相続放棄の理由ではこれがもっとも大きいとされています。
また、相続放棄をすれば、遺産分割協議に参加する必要がなくなるので、近親間のそうしたいざこざを避けたい人が相続放棄をするケースもみられます。

 

一方、デメリットとしては、形見の品などを含め一切の財産相続ができなくなることや、後順位相続人に対して、相続放棄をした旨を伝える必要があることが挙げられるでしょう。
これは相続権の移動に伴うトラブルを防ぐためです。

 

さらに、相続放棄をした人が、被相続人の死亡保険金・死亡退職金を受け取った場合、相続人には適用される非課税枠が適用されないという問題もあります。
その結果、相続税納付額が増えてしまうおそれがあるので、その点には注意が必要です。

実家を相続放棄する際のポイント

実家の相続放棄をする場合、これだけは知っておきたい、というポイントがいくつかあります。
それは次の4つです。

 

【実家を相続放棄する際の注意点】

  • ポイント①実家のみの相続放棄はできない
  • ポイント②相続放棄しても財産の管理義務が残る場合がある
  • ポイント③相続放棄の申し立てには期限がある
  • ポイント④相続財産清算人を選出する必要がある

順に詳しく説明します。

ポイント①実家のみの相続放棄はできない

相続放棄はすべての遺産が対象なので、実家のみを避けようと相続放棄しても、預貯金・貴金属や自動車、その他の土地といった財産も同時に放棄することになってしまいます
「あれは欲しいけどこれはいらない」といった遺産の取捨選択や、借金(債務)などのマイナス資産だけを放棄することはできないのです。

 

そのため、相続放棄を決める前には、遺産全体を調査し、相続したい財産がないかどうかを徹底的にチェックしておくことが肝心です
この財産調査については、弁護士や行政書士などの専門家に相談したほうがよいでしょう。

ポイント②相続放棄しても財産の管理義務が残る場合がある

相続放棄したら、それで老朽実家の管理責任を問われることもなくなる―。
原則的にはそうですが、一部例外のケースがあります。
それは、“相続人全員が相続放棄をした場合”です。

 

もし、空き家となったあとに倒壊事故や放火、不審者侵入などが発生した場合、近隣住民に迷惑・被害が及ぶかもしれません。
そのため、相続人が決まらずとも「空き家となった不動産を管理する(義務のある)人間」だけはきちんと決めておくよう法律で義務づけているのです(別項参照)。

 

自分以外に相続人が決まっている、もしくは、相続財産管理人や相続財産清算人に引き渡すことになっていれば、相続財産の管理義務は発生しません。
それまでは、空き家の責任者として自主的に管理していかねばならないわけです。
このルールを知らず、想定外の管理費用発生に戸惑う方も少なくないので、頭の片隅に入れておきましょう。

 

参照:民法第940条第1項「財産管理制度の見直し(相続の放棄をした者の義務)」

ポイント③相続放棄の申し立てには期限がある

相続放棄を選択する場合、自分が相続人となったことを知ってから3か月以内に、被相続人の本籍地の家庭裁判所に「相続放棄申述書」などの必要書類を提出します。
この申し立て期限を過ぎると、原則として受理してもらえないので注意しましょう。

ポイント④相続財産清算人を選出する必要がある

ポイント②と関連しますが、全員が相続放棄した場合、空き家となった実家を管理する人が誰もいなくなるため、“相続財産清算人”の選任が必要になります。

 

相続財産清算人とは、相続する人がいない財産の管理や清算を代行する人のことです。
ただし、相続財産清算人が選任されて不動産の管理を始めるまでは、4か月程度かかるため、その間は所有者が管理責任を負うことになります。

実家の相続放棄が適しているケース

相続放棄にはお話ししたようなリスクがありますが、それでも止むに止まれず選択する方もいるわけです。
それはどのようなケースなのか、典型例を次にご紹介します。

故人の負債が大きい場合

相続で引き継ぐマイナスの財産(借金など)がプラスの財産(不動産や預貯金、有価証券など)を上回れば、放棄を検討する方が多くなるのは必定です。
理由は言うまでもなく、相続すると相続人の損が大きくなるからです。

 

相続するか放棄するかを正確に判断するためには、前述した財産調査をしっかりしておく必要があります。
これは、戸籍などを調査して誰が相続人になるのか、故人の遺産がどれくらいあるのかを調べることですが、故人の遺産すべてを洗い出すのは簡単な作業ではありません。

 

そこで、相続人が相続によって得たプラスの財産の範囲内で被相続人の負債を引き継ぐ“限定承認”という相続方法もあります。
プラスの財産とマイナスの財産どちらが多いかわからない場合や、相続人自身の固有財産を守りたい場合に適した方法で、手続きには家庭裁判所への申し立てが必要です。

相続争いに巻き込まれたくない場合

遺産分割を巡り、兄弟間で揉めている場合は、その争いに巻き込まれるのを嫌って相続放棄が選ばれるケースもあります。

 

ただし、相続放棄をすればすべての財産を受け継げなくなるので、プラスの財産が少しでもあるなら、相続する方向で検討したほうがよいでしょう。

実家を相続放棄する際の流れ

実家の相続放棄の手続きと、全体の流れは以下の5ステップです。

 

【実家を相続放棄する際の流れ】

  1. 司法書士などの専門家に相談する
  2. 相続放棄に必要な費用・書類を準備する
  3. 相続放棄申述書の作成・必要書類を添付し家庭裁判所へ提出する
  4. 家庭裁判所から送付された「照会書」に回答し返送する
  5. 家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届いたら完了

相続放棄は自力で行うこともできますが、万が一、書類に不備があると相続放棄が認められず、そのまま自動的に相続が受理されてしまう可能性があります。
ご覧の通り、手続きも煩雑であるため、費用はかかりますが司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
関連費用は、5万〜10万円程度です。

実家を相続した場合の活用方法

ここまで相続放棄について解説してきましたが、諸事情により、住まなくなった田舎の実家を相続せざるを得なかった場合についての対応も考えておきましょう。
相続した実家を活用する方法として、代表的な次の4つを紹介します。

活用方法①売却する

誰も継がない、自分も住む予定のない実家を相続した場合、手っ取り早い処分法は売却することです。
不動産を保持していれば、維持管理費用や固定資産税の納付が必要となり、手間や経済的な負担を強いられます。
まさに“負の遺産”です。

 

実家を売却することで、これらの悩みから解放されますし、遺産相続もスムースに運ぶはずです。
特に相続人が複数いる場合は、現金化してしまえば、兄弟間で均等分割しやすいという利点もあります。

 

とはいえ、交通の便の悪い田舎の実家であったらなかなか買い手は見つからないかもしれません。
その間にもどんどん資産価値は減じていくし、売れたとしても買い叩かれてしまう可能性があります。
何か良い手立てはないのか、このあとで解説します。

活用方法②賃貸に出す

誰も住まない実家は、賃貸物件として活用する方法もあります。
賃貸にすれば、空き家の管理や維持費の負担を軽減し、安定収入を得ることも可能です。
まず、物件の状態を確認し、リフォームや修繕の必要性を確認しましょう。

 

賃料の設定は、周辺の賃貸相場が参考になります。

活用方法③建物を解体して土地を活用する

建物を解体し、空き地にして売却するか、新たな土地活用を考えるのも選択肢の一つです。

 

古い家屋が放置されると、劣化による管理費用の増加、周囲の景観への悪影響が予想され、行政から改善方を指導されて固定資産税の優遇措置が取り消されるリスクがあります。
解体した跡地を売却すれば、そんなリスクからも解放され、まとまった資金を得て、解体費用を回収できます。

 

売却しない場合は、新たな土地活用の方法を考えてみましょう。
一般的な土地貸しからアパート・マンション経営、駐車場経営、農地としての活用まで、ビジネスが軌道に乗れば、相続財産を有効に活用することができます。

活用方法④空き家バンクを利用する

実家が地方にあり不動産会社が取り扱ってくれない場合は、地方自治体の空き家バンクに登録してみてはどうでしょう。
空き家バンクとは、自治体と民間会社が協力し合い、空き家の所有者と移住・定住などを希望する利用者をマッチングさせる制度です。

 

地域への定住を促進することで、地域の活性化や人口増加を図ることが狙いです。
空き家バンクを利用し、空き家を購入した人は、郊外の古民家をカフェや仕事場にしたりして再活用しています。
もちろん、住居として使っている人も大勢います。

 

不動産仲介で売却を試みるにしても、一般的なSUUMOやアットホームと並行して空き家バンクに登録しておくのも、広報手段として良いのではないでしょうか。

 

参考:アットホーム空き家バンクお役立ち情報

相続した実家を売却する際のコツ

相続したくない実家を相続せざるを得ない場合は、できるだけ早く売却することが最善の策です。
少しでも相続の負担やトラブル発生のリスクを減らすためにも、計画的に売却を進めていきましょう。
実家を売却する際のコツを以下で2つ取り上げます。

相続したら早めに売却する

相続した実家は、ただ所有しているだけで出費が続きます。
時間が経過するほど、固定資産税や管理の負担が増えるだけでなく、建物の老朽化が進み、維持費や修繕費がかさむからです。

 

名義変更と査定を済ませ、遺品整理や清掃を徹底し、いつでも売却できる準備を整えましょう。

実績の豊富な不動産会社に相談する

実家を売却する際には、その地域で実家と同じような物件の取り扱い実績が豊富な不動産会社に依頼することが重要です。
実績のある会社は地域特性や相場を把握しており、情報網も広く査定も的確です。
早めの売却のために力になってくれるでしょう。

どうしても売れなければ買取専門業者に依頼する手も

なかなか買い手がみつからず、長期戦必至となったら”買取“を検討してみる手もあります。
不動産会社に買い取りを打診してみるのもよいですが、買取専門業者に頼めば全国を対象のエリアとしているため田舎であっても買取査定額を提示してもらえます。
残置物の処分は済ませておいたほうがよいですが、絶対に必要というわけではありません。

 

買取は、提示された買取額と引渡し条件に合意した時点で売買成立となるため、販売期間がほとんどないのも利点です。
実家の売却で苦戦し、「値段は折り合いをつけるから一日でも早く手放したい!」という人は買取業者に相談してみてはいかがでしょうか。

実家だけの相続放棄は不可能!もし相続したら早めの対応を

諸般の事情で実家の相続を希望しない場合、相続放棄という手段がありますが、すべての遺産が相続できなくなります。
また、ほかに相続人がいなければ、民法で実家の管理義務が課せられ、管理コストが必要になるのでその点も頭に入れておきましょう。

 

やむなく実家を相続した場合は、余計な出費を抑えるために早めに売却するか、建物を解体し土地としての活用法を考えるのがよいでしょう。

 

コインパーキングで空き家の土地活用をお考えなら、安心・簡単な時間貸し駐車場経営のベストパートナー、ユアーズ・コーポレーションまでお気軽にご相談下さい。

コラム監修者

太田 佳里

太田 佳里(オオタヨシサト)

株式会社ユアーズコーポレーション

パーキング事業部 マネージャー

宅地建物取引士 2級土木施工管理技師

<略歴>

駒澤大学を卒業後、不動産業界へ就職

<コメント>

弊社では創業から50年不動産の有効利用、資産管理を一貫して行ってまいりました。土地活用のエキスパートとしてオーナー様のご要望にお応えするサービスの提供を行ってまいります。

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