「駐車場経営に保険は必要?」と迷う方は少なくありません。
車や人の出入りが多い駐車場では、トラブルの発生を完全になくすことは困難です。
しかし、事前に適切な保険に加入しておけば、大きなリスクを避けることができます。
そこで、この記事では、駐車場経営に欠かせない保険を、トラブルの事例を交えながら解説します。
リスクを回避し、健全な駐車場経営を実現するために、最適な保険選びの参考にしてください。
駐車場経営に必要な保険
駐車場のトラブルは、場内の車両や利用者だけでなく、近隣住民や通行人とのトラブル、また最近、被害が甚大化している自然災害による設備の故障など多岐にわたります。
そうした事態に備え、損害を最小限に抑えるために必要な保険は次の5つです。
駐車場経営に必要な保険
- 施設賠償責任保険
- 動産総合保険
- 機械保険
- 火災保険
- 自動車管理者賠償責任保険
ここからは、それぞれの保険について詳しく解説します。
ただし、各保険の詳しい補償内容や適用範囲などについては、各保険会社にご確認ください。
施設賠償責任保険
施設賠償責任保険は、運営者側の管理の不備や駐車場内の設備が原因で、利用者や通行人、近隣住民に損害を与えた場合に、その損害金を補償する保険です。
コインパーキングや月極駐車場など、すべての駐車場が対象なので、駐車場経営を始めるにあたり、最初に加入を検討すべき保険といえます。
たとえば以下のようなトラブルが補償対象となります。
施設賠償責任保険が適用されるトラブル例
- 駐車場の看板が落ちて通行人にケガをさせた
- 駐車場の塀が倒壊して通行人にケガをさせた
- 設備の老朽化が原因で利用者の車にキズをつけた
こうしたトラブルが原因で、次のような費用が発生したときに保険が適用されます。
施設賠償責任保険で補償される費用
- 法律上の損害賠償金
- 賠償責任に関する訴訟費用・弁護士費用等の争訟費用
- 求償権の保全・行使等の損害防止軽減費用
- 事故発生時の応急手当等の緊急措置費用
- 保険会社の要求に伴う協力費用
上記を見ていただければわかるように、施設賠償責任保険は、損害を受けた相手に対して支払われる保険です。
壊れた施設自体の修繕や改修にかかる費用は補償されません。
また、発生した事故のすべてに対して適用されるわけではなく、補償の対象とならない損害もあります。
施設賠償責任保険が適用されない損害例
- 地震、噴火、洪水などの自然災害による損害
- 施設の新築、修理、改造、取壊しなどの工事中の損害
- 契約者、被保険者の故意による損害
上記のように、施設賠償責任保険は、自然災害に対しては適用されません。
自然災害に対する補償は、後ほど紹介する“動産総合保険”や“火災保険”でカバーできます。
動産総合保険
施設賠償責任保険とは違い、予測できない突発的な事故による、駐車場内の機器などの損害に対して適用されるのが動産総合保険です。
コインパーキングでは、精算機やゲートバー、ロック板などの機械設備(動産)が多く設置されており、故障すると経営者にとって大きなダメージとなります。
動産総合保険は、こうした機械設備に対する損害を幅広く補償し、経営者が予期せぬ修理費用や交換費用に対応できるようサポートします。
動産総合保険が適用される損害例
- 精算機やゲートバー、ロック板などの破損・盗難
- 精算機内の現金の盗難
- 駐車場内の看板やポールなどの破損
- 火災、落雷、破裂・爆発、取扱上の不注意などの偶然な事故による損害
上記のように、精算機用機器だけでなく、精算機内の現金も補償範囲に含められるので安心です。
ただし、以下のようなケースでは補償されません。
動産総合保険が適用されない損害例
- 地震や噴火、津波によって生じた損害
- 台風、暴風雨、豪雨による洪水や土砂崩れなどの水災による損害
- 経年劣化が原因の故障
自然災害でも火事や落雷は補償対象となりますが、水災や地震は対象外です。
水災に関しては、後述の“火災保険”で補償されます。地震に備えるなら、別途、地震保険を検討するとよいでしょう。
また動産総合保険で支払われる保険額は“時価額”で算出されるのが特徴です。
時価額とは、保険金が支払われる時点での機器の評価額のことで、経年劣化や減価償却で価値が下がっている場合は、購入時よりも低い額が補償されることになります。
“新価”(新品の価格)ではないため、機器の買い替えに必要な金額が不足する可能性もありえるのです。
機械保険
機械保険は、動産総合保険と似た内容の保険で、駐車場内の機器が故障した場合に、その修理費用を補償します。
補償されるトラブル例
- 精算機やゲートなど機械設備の故障
- 雷や停電など突発的な事故による機械設備の修理
- 従業員や第三者の運転、取扱上のミス、過失による事故
動産総合保険との違いは、機械保険では損害金を新価で評価する点にあります。
故障した機器と同等の機能を持つ新品と交換できるため、特に新しい設備や高価な機器を多く使う駐車場を経営する場合には、ありがたい保険といえます。
また、機械保険は盗難や窃盗による損害には適用されない点も、動産保険との違いの一つです。
補償されない損害例
- 置き忘れ、紛失、盗難、詐欺または横領による損害
- 自然の消耗または劣化により生じた損害
- 台風、旋風、竜巻、暴風などの風災による損害
盗難による損害もカバーしたい場合は、現金に対して動産総合保険を付加することも可能です。
火災保険
火災保険は、火災だけでなく台風や落雷、河川の氾濫といった自然災害が原因で、駐車場の設備が故障した場合にも適用されます。
補償対象となる自然災害例
- 火災
- 台風
- 落雷
- 風災・雹災・雪災
- 水災
自然災害の多くは火災保険で補償されますが、地震・噴火・津波など、規模が大きく、保険会社だけでは対応できない災害は対象外となります。
また、自然災害以外にも、“破損・汚損プラン”を付加すれば、駐車場の壁の破損や盗難などを補償対象とすることができます。
「破損・汚損」プランで対象となる損害
- 駐車場内の壁の破損
- 駐車場内の設備の破損
- 盗難
このように、火災保険は、自然災害だけでなく、オプションによって設備の破損や汚損までカバーできるのが特徴です。
しかし、自然災害の中でも、地震・噴火・津波のように、規模が大きく、保険会社だけでは対応できない災害は対象外となります。
保険を選ぶときには、地震に備える保険や特約がないか? 火災保険に汚損・破損補償のオプションプランを加えられるか? を確認しておくとよいでしょう。
自動車管理者賠償責任保険
自動車管理者賠償責任保険は、駐車場で預かった車両に対して、駐車場管理者の過失により損害が発生した場合に補償するための保険です。
この保険は、有人管理の駐車場や、車両の鍵を預かって車を移動させるタイプの駐車場で必要になります。
無人のコインパーキングや月極駐車場では一般的に不要です。
補償されるトラブル例
- 駐車場スタッフが車両を移動させる際にぶつけた
- 預かっていた車両が盗まれてしまった
上記のような場合でも、自動車管理者賠償責任保険に加入していれば、車両の修理費用や賠償金を保険金でカバーすることができます。
駐車場経営に必要な保険の費用
ここまでで、駐車場経営で必要な5つの保険を解説しました。
しかし、保険に加入すると、年間でいくらぐらい保険料がかかるのか不安になる方も多いのではないでしょうか?
保険にかかる費用は、次のような要因によって変わってきます。
保険費用が変動する主な要因
- 駐車場の立地や規模
- 設備の状態
- 安全対策の有無
- 補償の範囲と限度額
補償内容よっては、保険料が高くなる場合もありますが、必要最低限の補償に絞れば年額数千円で収めることも可能です。
保険を検討する場合は、上記の4つの要因や保険内容、見込まれる収支などを踏まえ、保険会社と相談することが大切です。
駐車場経営において保険が適用される事例
駐車場経営のために必要な保険についてはご理解いただけたと思います。
ここからは、保険が適用される代表的な事例として次の3つを紹介します。
駐車場経営において保険が適用される事例
- 駐車場の看板落下事故
- 精算機荒らしによる現金の盗難
- 駐車場壁面の擦り傷
いずれも、駐車場で比較的、起こりがちなトラブルになります。
駐車場の看板落下事故
「風の強いある日、駐車場の看板が落下してしまいました。
知らないうちに、看板を固定していたボルトが緩んでいたことが原因だったようです。
落下の衝撃で壊れた看板の破片が隣家の塀をキズつけてしまい、数十万円の損害賠償を請求されることに……。
しかし、加入していた施設賠償責任保険で全額カバーでき、ホッとしました。
ただ動産総合保険に加入していなかったため、落下した看板の付け替え費用は、自腹になりました」
施設賠償責任保険は利用者や利用者の車など、相手に対して補償する保険なので、看板や設備類の修理には適用されません。
どちらもカバーしたい場合は、動産総合保険や機械保険への加入も同時に検討しましょう。
精算機荒らしによる現金の盗難
「駐車場を見回っていたときに、精算機がこじ開けられ、現金が盗まれているのを発見したので、急いで警察と保険会社に連絡しました。
結局、犯人は捕まらなかったのですが、動産総合保険に加入していたおかげで、精算機の修理代金にくわえ、現金も補償されたので、本当によかったです」
精算機荒らしによる現金の盗難は、無人の駐車場やコインパーキングでは特に気を付けなければいけません。
動産総合保険に加入しておけば、精算機だけでなく、現金も補償対象となります。
ただし動産総合保険は時価評価での補償のため、精算機が古い場合、取り換え費用の満額は補償されません。
全額補償を希望する場合は、機械保険への加入をご検討ください。
駐車場壁面の擦り傷
「マンションの地下スペースを利用してコインパーキングを経営しています。
ある日、住人から『マンションの壁にキズがありますよ』と連絡があり、確認に出向くと、車で擦ったようなキズが……。
おそらく駐車場利用者によるものだと思いましたが、犯人が名乗り出てくることもなかったので、保険会社に連絡しました。
火災保険に加入したときに、破損・汚損プランもくわえたので、無事、全額を保険で補償してもらうことができ、助かりました」
壁面の擦り傷に対しては、火災保険の “破損・汚損プラン”を追加することで補償が適用される場合があります。
ただし、適用されるかどうかは、保険契約内容や損傷の原因によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
駐車場経営におけるトラブルリスク
さまざまな種類のトラブルが起こりうる駐車場ですが、トラブルの原因には、大きく分けて3つのタイプがあります。
駐車場経営におけるトラブルリスクの原因
- 利用者とのトラブル
- 外部とのトラブル
- 設備に関するトラブル
これらのリスクが具体的にどういうものかを理解し、適切な保険を選ぶときの参考にしてください。
利用者とのトラブル
利用者とのトラブルで特に多いのが、駐車料金に関することです。
月極駐車場においては料金の未払いや滞納、コインパーキングでは駐車券の紛失、などが挙げられます。
また、駐車場の出入口が狭い場合、利用者同士、あるいは利用者と駐車場の構造物との接触や、物損事故もよくみられます。
物損事故となると、修理が済むまで駐車場の営業ができなくなり、収入が減ることにもつながりかねません。
こうしたトラブルでも、動産総合保険や機械保険に加入しておけば、損害賠償などに関する心配はある程度軽減できます。
外部とのトラブル
近隣住民や通行人といった、外部とのトラブルも無視できません。
特に、車の出入りに伴う騒音や排ガスのニオイについて、住民からクレームが寄せられることがあります。
これらの問題は、近隣住民との関係が悪化し、駐車場のイメージダウンにつながるおそれがあるので、特に注意をしたいところです。
また、駐車場は無人のところが多いため、ゴミの不法投棄も発生します。
放置すれば、悪臭や害虫が発生する要因にもなりかねません。
こうした近隣住民や通行人とのトラブルには、損害賠償金など幅広い費用に適用される施設賠償責任保険に加入しておけば安心です。
設備に関するトラブル
設備トラブルの例としては、駐車場内の精算機やゲートバー、ロック板などの故障や誤作動が挙げられます。
これらのトラブルは、利用者に不便を与えるだけでなく、賠償問題に発展することもあるため、発見次第意すぐに対処しましょう。
くわえて、近年では豪雨による河川の氾濫などの自然災害で、駐車場内の機器が水没したり、設備が損傷したりするケースも多くみられます。
こうしたリスクも、動産総合保険や機械保険、火災保険への加入しておけば被害を最小限に抑えることができます。
駐車場経営のリスク回避ために保険には加入しましょう
駐車場経営にあたり、さまざまなリスクを回避するために役立つ保険として、施設賠償責任保険、動産総合保険、機械保険、火災保険の5つを紹介しました。
これらの保険は、利用者や外部、設備のトラブルのほか、自然災害による損害などのトラブルに直面しても、損害をカバーしてくれます。
駐車場経営のための保険の加入は任意です。
しかし、さまざまなトラブルリスクを回避し、安心して健全な駐車場経営を続けるために、ぜひ、適切な保険に加入することをおすすめします。
コインパーキングの経営なら、ユアーズ・コーポレーションをご検討ください。
集客から清掃、さまざまなトラブルへの対応など、手厚いサポートで、駐車場経営をサポートいたします。