駐車場経営を始める際、用地選定や設備工事の手配が終わったら、次になすべきは収益見込みの策定です。
税金問題は、その収益予想に大きく関わってきます。
なかでも、土地に課税される固定資産税は、土地活用の一策である駐車場経営にとって免れようのない税金であり、優遇措置もほぼありません。
この記事では、駐車場経営にかかる固定資産税をタイプ別にシミュレーションして紹介します。
納税対策の参考になさってください。
固定資産税の計算方法
駐車場経営と固定資産税の話をする前に、固定資産税の一般的な計算方法や、その仕組みについて解説します。
固定資産税は、所有する固定資産の評価額(課税標準額)に、標準税率となる1.4%を掛けて求めます。
税率は、自治体によって1.5%や1.6%というところもあり、必ずしも全国共通というわけではありません。
固定資産税=評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)
評価額すなわち固定資産税評価額とは、固定資産税課税台帳に記載された土地・家屋の評価額のことで、固定資産税の基準となる価格です。
毎年度初めに、市町村から送られてくる「納税通知書」に添付されている「課税資産明細」に記載されています。
固定資産評価額の目安は概ね、地価公示価格の70%です。
固定資産税評価額は、3年に1度の各市町村(東京23区の場合は都)による見直し=“評価替え”が行われます。
これは、なるべく新しい地価が税額に反映されるようにするためです。
固定資産税評価額をもって概ね課税標準額とみなせるわけですが、市街地の住宅の場合は、特例や負担調整率が設定されているため、課税標準額のほうが低くなります。
駐車場経営にかかる固定資産税
駐車場に使用している土地の固定資産税税率も原則1.4%で、駐車場だけ特別ということはありません。
これを固定資産評価額に乗じて税額を出すやり方も同じです。
たとえば、固定資産税評価額2,000万円の場合の固定資産税は、2000万円×1.4%=28万円となります。
保有している駐車場が市街化区域にある場合は、0.3%の都市計画税もかかるため、別途6万円が加算されます。
この、都市計画税の課税対象になるかどうかは、自治体のホームページで確認するか、市区町村に直接問い合わせてみましょう。
住宅用地との違い
住宅用地には固定資産税の特例が適用され、固定資産評価額が大幅に減額されます。
これは駐車場にはないメリットです。
具体的には、住宅用地のうち200㎡以下の部分は固定資産税が評価額の6分の1、都市計画税は同評価額の3分の1になります。
もし、保有している土地を全面的に駐車場にすると、小規模宅地の特例を受けられずに、住宅用地として活用した場合に比べて、固定資産税が6倍になってしまうわけです。
固定資産税のシミュレーション
それでは、駐車場のタイプによって固定資産税は異なるのでしょうか?
駐車場にはいくつかの種類があります。
そこで、以下で紹介する3つを例にとり、それぞれの課税金額を試算してみることにします。
①青空駐車場
青空駐車場とは、車両を覆う屋根がなく地上にそのまま車を停めるスタイルの駐車場です。
更地にロープを張ったり、アスファルト舗装の上に区画線を引いたりと、極めて簡素なスタイルの駐車場で、なかには舗装せずに石の車止めを置いただけのものもあります。
大きな構造物が一切なく、すべての駐車場の種類のなかでも、もっとも設備投資にお金をかけずに始められる駐車場です。
そんな青空駐車場の固定資産税課税額は、次のような計算式で求めることができます。
(例)敷地面積100㎡、課税標準額8万円/㎡
(100㎡×8万円)×0.014(1.4%)=11万2,000円
②住宅と一体である青空駐車場
同じ青空駐車場でも、住宅と一体型の場合は住宅用地とみなされ軽減措置が適用されます。
(例)敷地面積100㎡、課税標準額8万円/㎡
(100㎡×8万円×6分の1)× 0.014(1.4%)=1万8,666円
前述の「住宅用地のうち200㎡以下の部分については固定資産税が評価額の6分の1になる」という特例により、支払い額で実に9万円以上の差がついています。
③コインパーキング
コインパーキングとは、時間貸しの駐車場のことで、空いている駐車スペースに自由に駐車して、利用時間分の料金を支払うシステムです。
精算機やロック板などの初期費用がかかるので、青空駐車場は言うに及ばず、開業コストは通常の月極駐車場を大幅に上回ります。
では、設営にお金をかけたぶん、コインパーキングの固定資産税は安くなるのでしょうか。
同じ条件で比較してみましょう。
(例)敷地面積100㎡、課税標準額8万円/㎡
(100㎡× 8万円)×0.014(1.4%)=11万2,000円
固定資産税の課税要件は、住宅地とみなされる部分があるかどうかだけなので、コインパーキングにしたからといって税制上の特例はありません。
税額は、青空駐車場単体で使用している場合と同様の最高額となります。
④アスファルト舗装駐車場
アスファルト舗装駐車場とは、文字通りアスファルト舗装を施した駐車場のことです。
ある程度の広さの駐車場に採用されることが多いので、上記のように100㎡で比較するのはあまり現実的ではありません。
そこで、10台駐車できる敷地面積250㎡、課税標準額8万円/㎡の駐車場を例に、固定資産税を計算してみます。
アスファルト舗装や、フェンスの工事に必要な工費が150万円を超えない場合を想定しています。
(例)敷地面積250㎡、課税標準額8万円/㎡
(250㎡×8万円)×0.014(1.4%)=28万円
アスファルト舗装された部分は構築物扱いとなり、固定資産税は土地と構築物それぞれに課せられます。
100㎡単位でみると青空駐車場と変わりませんが、アスファルト舗装駐車場はほかの駐車場より敷地面積が大きい傾向にあるため、かかる固定資産税も高くなりがちです。
大型駐車場ということは、駐車場料金の収入も増えるわけですから、ほかの税金の支払いも問題になってきます。
仮に、駐車場経営で収入が1,000万円を超える場合は課税事業者となり、消費税の支払い義務が発生することにも注意が必要です。
駐車場経営の節税方法
特例を除いて、駐車場経営では、固定資産税の軽減措置が適用されないことがおわかりいただけたでしょうか。
駐車場経営で固定資産税を節税する方法は、前述した「住宅用地と一体化させる」「設備の総額を150万円以内に抑える」「アスファルトで舗装する」の3つしかありません。
これらについて改めて説明します。
なお、これが相続税であれば、青空駐車場に小規模宅地等の特例を適用し、貸付事業用宅地として土地部分の相続税評価額を、200㎡まで50%減額するといった方法があります。
都心部など地価が高いエリアでは、規模が小さな駐車場でも土地の固定資産税評価額が高く算出されるかもしれません。
もし、固定資産税で節税できなかった場合は、相続税のほうで節税対策を考えてみてはいかがでしょうか。
住宅用地と一体化させる
駐車場は単体利用だと固定資産税の軽減措置を受けられません。
しかし、建物と一体利用すれば軽減措置の適用対象となります。
建物部分と駐車場をつなげ、一体の不動産として認めてもらうと、200㎡までの部分は固定資産税が6分の1となります。
駐車場設備の総額を150万円以内に抑える
前述の通り、駐車場は土地部分だけでなく、設備にも固定資産税が課せられます。
しかし、駐車場の設備費用を150万円未満に抑えることができれば、固定資産税(償却資産)が節税できます。
固定資産税が発生する主な駐車設備は以下の通りです。
固定資産税の課税対象設備
- フェンス
- アスファルト舗装
- コンクリート舗装
- 外灯
- 屋根
- 車止め
- 精算機
- センサー式停車機
- 防犯カメラ
こうしてみると、やはりコインパーキングの付帯設備が目立ちますね。
月極駐車場に比べて、明らかに課税対象となる設備が多いことがわかります。
ある程度の広さのあるコインパーキングで、これらを上から順に設置すれば、150万円なんて簡単に超えてしまいそうです。
もし、150万円を超えそうな場合は、コインパーキングと月極駐車場を同じ駐車場内につくり、設備費用も別計算にするという方法があります。
アスファルト舗装する
駐車場の単体利用でも、地面をアスファルト舗装することで固定資産税(償却資産税)は減額できます。
これは舗装によって貸付事業用宅地等と認められるからであり、200㎡の評価額を50%減額可能です。
ただし、工事費用が150万円を超えないことが条件で、再三お伝えしている通り、150万円を超えてしまうと非課税措置は受けられません。
アスファルト舗装に費用はかかるものの、毎年の税負担が減らせるため、土地の評価額が高い場合におすすめの方法です。
駐車場を経営するメリット
固定資産税がこれだけ高いと駐車場を経営するメリットがないようにも思えてきますが、そんなことはありません。
土地を駐車場として活用するメリットとしては、次の4つが挙げられます。
メリット①安定した収入が得られる
集合住宅の中心地であれば月極駐車場を、駅付近やオフィス街、大型商業施設の近くであればコインパーキングを開業すれば、確実に需要があり収入が見込めます。
サブリースとよばれる駐車場運営会社の一括借り上げ方式を選択すると、土地オーナーは管理業務の手間も一切なく、毎月定額の賃料収入を得ることができます。
自主管理ないし管理委託といった運営方法をとると、オーナーが管理業務の主体となりますが、そのぶん実入りは大きくなり、稼働率に応じた収入を手にすることが可能です。
メリット②初期費用が安い
駐車場経営は初期費用が安いこともメリットの一つです。
手持ちの土地にアパートやマンションを建てると、数千万円から数億円の費用がかかるでしょう。
ローンを組んで残金を支払う場合、賃貸人からの家賃をそれに充てることになりますから、全額を最初から用意する必要はないにせよ、まとまった額の頭金は必要です。
しかし駐車場の場合であれば、業態や規模によって大きく異なるものの、たとえば月極駐車場なら、アスファルト舗装や砂利引き、車止め、ライン引き費用等で済みます。
100坪の駐車場であれば、多く見積もっても200万~500万円程度の初期投資に抑えられるのではないでしょうか。
初期費用だけではなく、ランニングコストを比較しても駐車場のローコストは抜きん出ています。
アパートやマンション経営に必要な設備の維持・管理費や修繕費、交換、リフォーム、保険料などの費用もグッと少額で済みます。
特に、一括借り上げ方式は、初期費用を管理業者が負担するケースが多いため、駐車場経営のなかでも初期費用が安い方式です。
メリット③条件の悪い土地を活用できる
仮に駐車場が狭小地であっても、車を無理せず出し入れできるスペースさえ確保できていれば、開業は可能です。
土地の条件が悪いとアパートやマンションを建てることができないため、賃貸住宅経営は成り立ちません。
その場合の選択肢はいろいろありますが、駐車場経営はおすすめしたい土地活用法です。
条件の悪い土地を相続したが、どう活用したらよいのかわからないという方は一度、不動産管理会社に駐車場経営を相談されてはいかがでしょうか。
メリット④ほかの用途に転用しやすい
駐車場経営は土地に手を加えることが少ないため、残った設備を撤去するだけで、ほかの活用法へ転用しやすいのがメリットです。
これが賃貸住宅経営であったら、マンションやアパートなどの建物を取り壊したり、立て直したりするのに時間と費用がかかってしまいます。
また駐車場経営は借地借家法が適用されないため、期日を決めて利用者や運営会社にきちんと通知しておけば、比較的スムーズに終了できるのも利点です。
駐車場を経営するデメリット
土地活用で駐車場経営を考えるなら、デメリットも十分に把握することが大切です。
固定資産税などの税金の負担が重いこともそのひとつですが、ここでは以下の3つの理由を取り上げます。
デメリット①減価償却費が計上できない場合がある
駐車場経営を始める際にかかった初期経費は、減価償却費として経費に計上できます。
アスファルトの舗装費や精算機の設置費用などがそれに該当します。
ただし、初期費用のおそらくは最大部分であろう駐車場経営のために購入した土地の費用は減価償却の対象ではありません。
減価償却とは、資産の使用や経年劣化で価値が減少する資産に対して行われる会計処理のことですが、駐車場の土地自体は、時間の経過や使用による価値低下がないためです。
デメリット②ニーズがあるエリアが限定される
狭くてもいびつであっても、収益化できるのがコインパーキング経営の長所ですが、立地にはこだわらないと失敗します。
ニーズがある場所で始めなければ、収益が上がりにくいというのは、どのような商売であっても言えることで、駐車場も例外ではありません。
駅前や繁華街、オフィス街、観光地、大型商業施設の近くなど、需要が見込める土地を探すところから始めましょう。
ただし、ニーズがある場所であっても、前面の道路幅が狭く、車を出し入れしにくかったり、見つけにくい場所にあったりしては、あまり集客は期待できません。
駐車場の場所選びでは、そうした細部にもこだわりましょう。
このような駐車場ニーズが高い好立地な場所というのは、当然ですが競合も多いはずです。
競合が増えると、駐車場利用率の低下やそれに伴う、料金下げ競争に巻き込まれる可能性が高まります。
最悪、収益減少や撤退を余儀なくされることもあるので、近隣に大きい空き地が目立つような場所は避けたほうがよいかもしれません。
デメリット③収益性が低い
立体駐車場を除けば、駐車場というのは通常、地上平面展開です。
1フロア分の土地しか利用できないわけですから、利用効率や収益性の面ではどうしてもアパート・マンション経営や賃貸ビルには及びません。
建物を建てないので少額投資で開始できるものの、そのぶん収益性も低いのがウィークポイントなのです。
しかし、駐車場経営とはそもそもそうしたシンプルさがウリのビジネスでもあります。
アパート・マンション経営では、建築費用の問題や空室による収入減のリスク、老朽化した際の修繕など、将来的な費用負担があれこれ控えていますが駐車場にはそれはありません。
この問題は結局、高収益・高負担か、低収益・低負担かという選択にすぎないのです。
駐車場経営は、収益が低くても長期的な安定収入を希望する方や、土地を暫定利用したい方に向く土地活用法です。
駐車場の固定資産税は軽減措置がほとんど見込めない
今回は駐車場経営にかかる税金のうち固定資産税に絞って解説してきました。
駐車場用地への固定資産税には税制優遇がなく、住宅用地と比べると実に6倍という高率の税額が課せられています。
遊休土地の有効活用法として人気のある月極駐車場やコインパーキング経営ですが、税法上は更地と同じ扱いなのです。
住宅用地と一体利用したり、設備費用の総額を150万円以下に抑えたりして節税を図ることもできますが、効果は限定的です。
駐車場経営に乗り出す際には、こうした税金の支払いを前もってしっかり対策しておく必要があります。
駐車場経営を成功させたい方は、土地活用の専門業者ユアーズ・コーポレーションにぜひご相談ください。