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家を更地にする場合にかかる費用と注意点を紹介

    

家を更地にしたいと思い立ったとき、気になるのはその費用ですよね。
解体費用の相場と内訳、安く抑えるコツをはじめとして、更地にするメリット、デメリットもきちんと抑えておきたいところです。

 

本記事では、家を更地にする場合の費用の目安を詳しくお伝えします。
ぜひ、本記事を羅針盤としてお役立てください。

家を更地にする費用

家は建てるときにも、壊して更地にするときにもそれなりのまとまったお金が必要になります。
建てるときのお金は上物物件の大きさや建材によって変わってきますが、解体するほうの費用も、構造と坪単価の相場を抑えておけば、だいたいどのくらい必要かわかります。

 

それでは、その費用内訳をみていきましょう。

解体費用の相場は約200万円

家を更地にするには、建物を壊す解体費用建物以外の部分の付帯工事費用工事で出た廃材処理費用がそれぞれかかります。
このうち、大部分を占める解体費用の相場は、100万~300万円程度、中値を取って200万円といったところです。

 

坪あたり単価でみると、木造なら3万~5万円/坪、鉄骨造なら4万~6万円/坪、鉄筋コンクリート造なら6万~8万円/坪が解体費用の相場です。
たとえば、40坪の戸建て住宅を更地にするには、木造120万~150万円、鉄骨造160万~240万円、鉄筋コンクリート造240万~320万円かかることになります。

 

以下でもう少し詳しく解説します。

解体工事費用の相場

解体工事費用は、建物の構造(種類)と坪単価、坪数から大体の目安がわかります。
上記の坪あたり単価で、解体工事費の構造ごとに30坪、40坪の工事費用を算出すると、おおよその目安は次の通りです。

 

建物の種類 坪単価 30坪 40坪
木造 3万~5万円 90万~150万円 120万~200万円
鉄骨造 5万~7万円 150万~210万円 200万~280万円
鉄筋コンクリート造 6万~8万円 180万~240万円 240万~320万円

廃材処分費用の相場

解体作業で出た木くずやコンクリートがらなどの廃材は、適切に分別して処理することが義務付けられているため、廃材処分の費用もかかります。
地域や廃材の種類によっても異なりますが、おおよその目安は次の通りです。

【廃材処分費用の目安】

項目 料金(m)
コンクリート 5,000円~
木くず 5,000円~
石膏ボード 1万5,000円~
ガラス・タイル 2万5,000円~

出てくる廃材は、家の構造によって異なり、また、家具などの残置物が多いと、そのぶん費用がかさむので、なるべく前もって処分しておきましょう。

 

廃材処分費は、見積もり時に業者から提示されますが、解体費用に含む場合や別途請求される場合があります。
解体費用一式などと記載されている見積もりの際には、費用の名目を確認しましょう。

整地費用の相場

整地費用とは、解体後の土地をきれいに均すための費用です。
相場は、1㎡あたり500円~1,500円程度ですが、解体後の土地の状態や整地方法によっても違ってくるので一概にはいえません。

 

【整地費用の目安】

坪数 料金
30坪(約99㎡) 5万~15万円
40坪(約132㎡) 6万~20万円
50坪(約165㎡) 8万~25万円
60坪(約198㎡) 10万~30万円

家を更地にする費用が変動するのはなぜ?

解体費用の相場は以上の通りですが、では、費用が増すとしたらどういったイレギュラー要因によるものでしょうか。
家を更地にする費用が変動するケースもチェックしておきましょう。

 

相場はあくまで相場として、その通りにはいかないことも多いので、予算には余裕をもっておきたいですね。

付帯工事費用が発生するか

更地にする費用は、付帯工事がどのくらい必要かによっても左右されます。
付帯工事とは玄関アプローチや駐車場、庭などの家本体以外の設備・施設の解体工事のことです。
これらの設備が多いと、解体費用も加算されていきます。

重機が入れるか

解体工事のための車両や重機が入りにくい住宅密集地の場合は、手作業で解体することになるので、費用がそのぶん上乗せされます。

解体工事期間がどれくらいか

解体工事期間が長引くほど、解体費用は高くなります。
手際が良い解体業者であればそのぶん人件費が浮きますが、その逆だとコストアップ要因となります。
解体業者の口コミを調べてみましょう。

アスベストの問題

アスベスト(石綿)はかつて建築資材として重宝されていましたが、現在は発がん物質として使用が禁止されています。
建築物や船舶の解体または改修工事におけるアスベストの事前調査については、令和5年10月1日以降に着工する工事から、資格者が行うことが義務づけられました。

 

使い勝手が良く安価な素材であるアスベストは、一般家庭でもさまざまな箇所に使用されていました。
例を挙げると、屋根材や壁材、天井材など、マンションでは駐車場に吹付けアスベストが今も残っているとみられています。

 

日本では1970年代から1990年代が、アスベスト使用のピークといわれています。

 

この頃に建てられた建築物にはアスベストが普通に使われているはずですが、確実に知るにはやはりお金をかけて専門家に調査を依頼するしかありません。

 

このアスベスト調査には実は補助金制度があります。
自治体によって補助金制度の条件は違うので、アスベスト調査をする際は、まず地域の担当部署に問い合わせてみましょう。

 

調査の結果、アスベストが使われていないことがわかっても、補助金が支給されるので、少しでも心配な場合は補助金を利用して調査を依頼してみてはいかがでしょう。

更地にするべきか判断する5つの基準

次に、土地を更地にするべきか判断する5つの基準をまとめました。
大きな決断を要する作業ですので、数多くの土地活用プランを参考にしながら、時間をかけて慎重に判断しましょう。

賃貸に不向きなエリアにある

賃貸などの土地活用に適していない土地というものがあります。
交通の便が悪かったり、急坂の途中や上にあったり、田舎すぎて人がいなかったり、など賃貸経営に不向きなエリアがそれです。

 

立地条件がネックになるようなこうした場合は、更地にして売却することを優先的に検討すべきでしょう。

建物の老朽化がひどい

更地にすべきケースの2つめは、既に建っている建物の老朽化が進み、建物の管理ができない場合です。

 

人口減が急激に進む日本では、空き家問題が深刻化しており、老朽化した家屋がそのまま放置されることで、火事や不法侵入、倒壊、害獣の被害が発生する危険が高まっています。

 

老朽化が進んだ家は、リフォームしても耐震性に問題が残り、再活用にはそもそも向きません。
早めに更地にしてから土地活用を考えましょう。

上下水道に問題がある

水道管の耐用年数は40年です。
これを越えると、建物・上下水道は問題なく使えたとしても、寒暖差や地震などによって、突然、破裂や故障が起きる可能性があります。
よくある水道の問題としては、上水道では赤さび、白濁、漏水、水が出ない、下水道では配管のつまり、流れない、汚水の滞留などです。

 

水周りの問題はその家屋にご家族が住む場合でも、人に貸す場合でものちのち大きなトラブルに発展しがちです。
更地にして新しくスタートするほうが、余計なコストが発生せずに済みます。

再建築ができる土地

築年が43年以上の、1981年(昭和56年)以前に建てられた家屋は、旧建築基準法で建てられているため、今の法律に沿って再建築を検討中の方も多いでしょう。
しかし、土地条件によっては、リフォームやリノベーションはできても、再建築はできないケースがあります。

 

再建築できない家を更地にすると、その後、どのような建物も建てられなくなってしまうので、再建築ができる土地条件の場合のみ、更地化を検討してください。

 

土地条件の確認方法は、法務局に問い合わせるか、複数のハウスメーカーや建設会社に土地活用プランを請求する方法があります。
相手が専門家であれば、更地にできない土地の活用法として、売却を含めたさまざまな提案をしてくれるはずです。

解体費用より売却額のほうが高い

家屋の解体費用より、売却額が高ければ思い切って更地にして売却してしまったほうがよいでしょう。
この場合も、土地活用プランを請求しておけば、更地にする費用が含まれたプランを比較できます。

 

解体費用は、木造30坪の家でも最低120万円程度かかりますが、更地にするための費用は原則自己負担です。
更地にしたあとにアパート経営などの土地活用をする場合は、更地化代金も含めてローンが組めます。

 

関連記事:失敗しない土地売却の流れと注意点!土地を高く売る方法も紹介!

更地にする費用を節約する方法

更地にするための費用を安くする方法はあるでしょうか。
少しでも工事費用を抑えるためにも、節約方法をチェックしておきましょう。

安い解体業者を自分で探す

古家の解体は、ハウスメーカーや工務店に依頼することも可能です。
しかし、彼らは解体の専門外のため、結局は外部の解体業者に依頼することになり、余計な仲介手数料をとられます。

 

工事費用の20〜30%も上乗せされるため、数10万円も違ってきたりします。
工事費を安く抑えたいなら、解体業者は何としても自分で探しましょう。

複数の解体業者から相見積もりをとる

解体業者を探す際は、3社程度の相見積もりを比較すると良いでしょう。

ただし、聞かされていなかった付帯工事分を上乗せし、最終的に見積もり額を大きく超える金額を請求してくる業者もいるので注意が必要です。
信頼できる業者を見極めるコツは、現地調査を丁寧に行ってから見積もりを取っているか、その根拠がしっかりしているかなど。

 

質問に対してわかりやすく答えてくれるか、知識や情報が豊富か、なども重要なポイントです。

ゴミと廃材はできるだけ自分で処理しておく

解体費用を抑えるには、自分でできることは自分の手で前もって済ませておくことです。
家財道具を処分したり雑草や低木を処理したりしておくだけでも、出費を抑えることができます。

 

解体の専門会社に依頼すると、家庭ごみも「産業廃棄物」扱いとなり、有料となります。
普通ゴミ、資源ゴミ、廃材など、一軒家のゴミはかなりの量がありますので、更地を検討し始めたら、ゴミの処分だけでも先行して進めておくとよいでしょう。

自治体の解体助成金の有無を確認する

古家の解体に関して、国から出される助成金はありませんが、自治体によっては、耐震促進などの名目で助成金を出しているところもあります。
解体工事を検討する際には、まずは居住地の自治体にそういった制度がないか調べてみるとよいでしょう。

繁忙期と台風の季節を避ける

解体工事の依頼は、繁忙期と台風シーズンを避けましょう。
解体会社にとって、年末~毎年3月(年度末)は工事が殺到する繁忙期です。
屋外での作業となる解体工事ですから、梅雨・台風・雪のシーズンは作業員の日程調整が難しく、比較的割高になります。

買い手に古家付き物件でどうか相談する

“古家付き土地(ふるやつきとち)”とは、古い建物が建ったままの土地の俗称です。
建物に経済的価値はなく、あくまでも土地のみの価格として、土地を求める人に売り出されます。

 

一般的に、木造建築物の法定耐用年数を超える築22年以上の木造住宅の建物価値はゼロとみなされ、古家として扱われます。

 

中古住宅と古家付き土地のどちらで売り出すかは売主の意向次第であり、建物の状態や土地の立地条件をみながら、買い手ともよく相談して決めましょう。

 

買い主が更地にする前提で買取りを検討している場合は、買い主と古屋の解体費用を折半するという条件を提示し、購入を後押しする手もあります。

古家付き土地で売るメリット

建物が残ったままの状態の場合、売り手にとってどのようなメリットがあるでしょうか。

 

まず、考えられるのは、更地にするための解体費用がかからないため、売却価格を安くすることができる点です。
また、建物が現存する場合、固定資産税は「住宅用地の軽減措置特例」が適用され、大幅に安くなるメリットがあります。

 

税額は敷地面積の200㎡までの部分については6分の1,200㎡超までの部分については3分の1とすることができます。
当然ですが、売却価格はそのぶん安くできるので有利です。

 

このほか、古家付きの土地は低金利の住宅ローンの融資対象になる、土地のみの売買となるので古家の契約不適合責任は免責にできる、なども利点に挙げられるでしょう。

古家付き土地で売るデメリット

古家付き土地を売るにはデメリットもあります。
そのひとつは、解体の費用は買い手持ちになるため、それを考慮した価格設定が求められる点です。

 

場合によっては更地で売るより安くなってしまうこともあるので、なるべく高く売りたい場合は解体工事を済ませてから売却したほうがよいかもしれません。
エリアの相場をひと通り調べておきましょう。

 

また、古家が建っていると、買ってすぐ住める利点がある半面、なかなか買い手がつきにくくなるのはデメリットでしょう。
購入希望者が見学に来たとき、どう映るかですが、あまりよくない印象を持たれることもままあります。

古家付き土地として売却するほうがよいケース

それでは、「古家付き土地」で売却したほうがよいのはどんな物件なのでしょうか。
ひとつは、建物が比較的新しくて、「住む」「貸す」といったニーズに応えられる場合、リノベーションを施せば古民家として用途価値がある場合です。

 

建築基準法の改正で建て替えが不可能な土地も、古家を壊さずに売ったほうが有利と思われます。
市街化調整区域に指定された土地も同様です。
不動産会社の査定価格よりも、解体費用見積もりが高くなってしまう場合も建物を解体するのは見送りましょう。

更地にするメリット3つ

ここまで、家を更地にする際の相場やその判断、費用の抑え方のポイントなどを解説してきましたが、それでも家の解体となれば判断に迷うこともあるでしょう。

 

それでは、家を更地にするメリットについて考えてみます。

メリット①更地にすると売却しやすくなる

建物の解体が済んだあとの更地は、すぐに物件を着工できるため、買い手が見つかりやすくなります。
買い手が見つかるまでのあいだ、暫定的に駐車場経営などを行えば、土地を遊ばせておくこともなく効率的です。

 

また、更地は、地中埋没物の確認、土壌調査などが容易な素の状態であり、事前に地盤調査を行えば、買い手に土地の詳しい情報を提供できます。
土地の状態が前もってわかれば、買い手の安心にもつながり、売買成約に結びつきやすくなります。

メリット②更地にすると崩落リスクを回避できる

古家付き家屋として売り出すのも場合によってはありですが、老朽化した建物が崩壊するリスクを考えれば、買い手ファーストの対応とはいえないかもしれません。

 

遠方にある物件なら、台風や大雨、雪害、地震などで、建物がどうなっているか不安になり、
「なるべく早く解体して売ってしまいたい」と考えるのではないでしょうか。
もちろん、費用はかかりますが、建物を解体しておけば維持・管理の手間はなくなり、崩落などのリスクもなく、いつでも売れる状態となります。

更地にするデメリット4つ

古い家を更地にしようとすると、税制上のデメリットのほか、思いがけないトラブルや、アクシデントに見舞われることがあります。
これらを“想定内”に押し込めるため、デメリットとして4つにまとめました。

デメリット①解体費用は個人負担

今さらいうまでもありませんが、更地にする最大のデメリットは解体コストがかかることです。
構造や条件によって異なりますが、一軒家を解体するのにおおよそ100万~300万円の費用がかかるのはお伝えしてきた通りです。

 

その解体費用はしかし、土地の売却金額に上乗せできるとは限りません。
家の解体に200万円かかったとしても、その全額を土地の売却金額に上乗せするのは無理です。

 

なぜなら、古家の資産価値はもともとゼロであり、そうである以上、土地は土地の値段でしか売れないからです。
売却金額に多少なりとも取り壊し費用が計上できれば恩の字。
解体費用の大半は売り手負担となります。

デメリット②更地にすると固定資産税が高くなる

家屋を取り壊して更地にしてしまうと、固定資産税額が最高で6倍にまで跳ね上がります。
土地に住居が建っていると住宅用地の特例が適用されるため、税率は軽減されますが、この特典がなくなってしまうためです。

 

固定資産税は、毎年1月1日時点で所有している不動産に対して課税計算されるため、税額が上がるのは更地にした翌年です。
更地にした後、土地を売却または土地活用を予定している場合は、このあたりを理解したうえで計画を立てましょう。

デメリット③解体費用は原則ローンが組めない

多くの金融機関では、家屋を解体して更地にするためのだけの融資は受け付けていないので、原則ローンが組めません。
空き家対策として、地方銀行などに“無担保住宅ローン”“空き家解体ローン”の扱いはあるにはあります。

 

しかし、高金利で返済期間が短く、保証人も必要など融資条件が厳しく使い勝手はよくありません。

更地にする費用は木造30坪で最低120万円かかりますが、この金額は原則として、現金で用意しておく必要があります。
最もよいのは、土地活用プランの中に解体費用を含めてローンを借りることです。
これであれば、解体~賃貸経営までの一連の流れで資金を使うので、解体のための現金は使わずに済みます。

デメリット④どんな埋蔵物が出てくるかわからない

更地にするために家屋を解体して土台を掘ると、地面から浄化槽・昔の基礎・井戸・水、産廃ゴミなどの埋蔵物が出てくることがあります。
これを撤去するには、撤去費と処分費用が追加で必要です。
井戸や水によって堀った地面が水びたしになった話はわりと聞きますが、排水のための追加工事費も加わります。

 

埋蔵物が出た場合、更地にしたあと、自分で土地活用をする場合は、そのまま埋め戻してしまっても問題ありません。
更地にしたあとに売却を予定している場合は、埋蔵物は撤去しておいたほうが、のちのちのトラブル回避にはよいでしょう。

 

事前調査をしても、掘ってみるまで何が出てくるかわからないので、解体工事の工期日程には余裕を持たせて臨みましょう。

さまざまな土地活用方法を比較して決めよう

家屋は壊したら元には戻りませんし、土地は売ったらそれっきりです。
更地にする前、土地を売る前に、そのことを熟慮し、複数の不動産活用・土地活用を十分に比較検討しておきましょう。

 

家屋が古い場合でも、空き家としての活用など、今の状態のままで利用できないか、もう一度再考しましょう。
自治体の空き家バンク登録・古民家としての活用・民泊施設としての貸し出し・アパート経営や駐車場経営も含めて、土地活用の可能性は意外に幅広いものです。

家の更地化はメリット・デメリットと費用を比較考量しましょう

家の解体費用は高額で、決断を要する一大事業です。
古家をそのままにしたより、更地にしたほうが売れやすいのは確かですが、家を取り壊してすぐに買い手がみつからない限り、土地所有者は負担にさらされ続けます。

 

今ある家や土地をどのような形で売却するのがベストなのかは、ケースバイケースです。
解体や更地化は、土地活用の可能性を知ってからでも遅くありません。
まずは不動産会社に査定と相談を依頼しましょう。

 

ご自身での取り組みに限界を感じたら、土地活用と不動産のプロフェッショナルであるユアーズ・コーポレーションがお手伝いいたします。
専門家のアドバイスを聞きながら考えたほうが、きっとより良い結果が導き出せるでしょう。

    

土地の相続放棄はできないの?不要な土地の手放し方を解説

    

“遺産相続”というと、羨ましく聞こえますが、できれば相続したくないものもあります。
親の残した債務の継承はもちろんですが、使い道に困るような土地もその一つですね。
この場合、一旦相続して、引き取ってからすぐ売却、譲渡してしまうか、もしくは相続そのものを放棄するという手があります。

 

では、「土地だけいらない、ほかの不動産やお金は欲しい」というのは通るのでしょうか?
本稿ではそのあたりを掘り下げて解説します。

対象を限定した相続放棄はできない

もし、なんらかの事情で土地を相続したくない場合は、相続を放棄するという手があります。
相続を放棄してしまえば、遺産を一切相続せずに済みます。

 

ただし、「土地はいらない、ほかの財産は相続したい」という“わがまま”を国は聞いてくれません。
相続放棄とは、相続財産に関するすべての権利義務を放棄するということだからです。

 

被相続人の債務を引き継ぐ必要はなくなりますが、自身が欲しくない相続財産だけを選んで相続放棄するということは認められていません。

 

遠方の土地や、立地的に買い手が付きにくい土地、使途がみつからない土地など、相続したくない土地があれば、ほかの財産リストをみてから相続放棄するかどうか検討しましょう。
ともあれ、どうしても相続したくない土地がある場合は、相続放棄は選択肢になります。

相続の仕組みと選択肢

ここでは相続手続きについて、簡単に触れておきます。
法的な相続は、被相続人が亡くなって7日以内に行う死亡届提出、3か月以内の遺言書の検認手続きに始まります。

 

相続放棄の手続きも相続発生から、3か月以内に行わなければなりません。
もっとも期限が長いのは遺族年金の請求で、有効期間は被相続人が亡くなって5年以内です。

 

手続きの大まかな流れは、以下の通りです。

 

【相続手続きの流れと期限】

相続手続きの流れ 期限(相続発生日からの期限)
被相続人(故人となる方)の死亡
死亡届の提出 7日以内
遺言書の有無を確認、検認手続き
相続人の調査
相続財産の調査、確定
単純承認、限定承認、相続放棄の選択
3か月以内
所得税の準確定申告 4か月以内
遺産分割協議書の作成遺産名義変更
預貯金や有価証券等の名義変更
不動産の名義変更
各種、財産の名義変更相続税の申告
10か月以内
遺留分侵害額請求 1年以内
健康保険の埋葬料、葬祭量請求 2年以内
生命保険金の請求 3年以内
遺族年金の請求 5年以内

法律で決められた各手続きの期限を過ぎないように、注意しましょう。

土地相続を放棄した場合のメリット・デメリット

続いては、相続放棄を選択した場合の主なメリットとデメリットを整理しておきましょう。
相続できる資産を手放すことで損をすることもあるかもしれませんが、土地相続を放棄すると、それなりのメリットも多々あります。

メリット

相続放棄を選択した場合、以下のようなメリットが挙げられます。

【土地相続を放棄する主なメリット】

  • 土地の管理から解放される
  • 被相続人の債務(ローン、借金、家賃など)を負わなくて済む
  • 遺産分割協議への参加が不要で相続人間の相続トラブルも回避
  • 相続を機に事業継承する場合、事業に必要な財産を集中して取得できる

土地を相続したくないのは、「土地自体に利用価値が乏しい」「遠方にありすぎて管理できない」「被相続人の債務まで相続したくないから」という理由が上位を占めています。

 

相続したら固定資産税支払いも負担になるので、土地というのは人によっては、まさに“負の遺産”になりえるのです。

 

相続放棄は、これらの手っ取り早い解決策として選択されるわけです。

 

関連記事:固定資産税の仕組みを解説!いくら払うのか計算方法も紹介!

デメリット

一方、土地相続放棄のデメリットは次の通りです。

【土地相続を放棄する主なデメリット】

  • すべての財産を相続する権利を失う
  • 被相続人と同居していた場合、退去が必要になるケースもある
  • 相続順位が変動してトラブルの原因になるリスクがある
  • 被相続人の生命保険金を受け取る場合、非課税枠(債務控除や相次相続控除など)が利用できない
  • 家庭裁判所での手続きが必要(専門家へ依頼する場合は費用も発生)

相続放棄を選択した場合は撤回できないので、慎重に考える必要があります。
家庭裁判所とのやりとりなど、手続きも結構面倒なのです。

 

順位変動を巡る相続トラブルは、自身が相続を放棄すれば次の順位の人が相続人となることに伴うもので、放棄が続けば思わぬ人がリストアップされてくる可能性もありえます。
そうした場合、相続トラブル回避に向け関係者間で話し合いが必要になるかもしれません。

相続で要らない土地を手放すには

さて、そんな相続人の誰も欲しがらない土地を相続してしまったら、その土地を手放すことはできるのでしょうか?
相続放棄以外にも、その方法はあることはあります。

 

以下で、順にご紹介していきます。

近隣の人にもらってもらう

相続放棄の形を取らずに土地を手放すには、一旦相続登記を行ったうえ、その土地を引き継いだあとに売却や寄付を行うという方法があります。
地方の田畑であれば、近隣の農家の方が引き受けてくれる場合もあるので、自治体に関連情報がないか問い合わせてみましょう。

 

農家以外でも、相続した土地の近隣の人であれば、将来の土地利用をにらんで買取を検討してくれるかもしれません。
まずは近隣の土地所有者に打診してみることが、不要な土地を手放す第一歩といえるでしょう。

市町村に寄付する

土地が所在する市区町村に寄付、という手もありますが、当の市区町村が受け取ってくれる可能性はかなり低いです。
現金と違って土地は、管理コストが発生するためで、議会に寄贈があった旨を報告すれば住民への建前上、その活用法なども考えねばならず、役所としてはいらぬ手間がかかります。

 

可能性がまったくないわけではないので、問い合わせてみてもよいでしょうが、あまり期待しないほうがよいでしょう。

 

また、被相続人が遺言書で市町村に遺贈する、とした場合も同様に、市町村から断られる可能性があります。
遺贈だからといって特別扱いはされません。
不要な土地を処分するというのは、やはり簡単なことではないのです。

相続放棄する

上記2つの方法がうまくいかなかった場合は、いよいよ相続放棄を視野に入れましょう。
このあとに詳しく解説していきます。

「相続土地国庫帰属法」を活用する

「相続土地国庫帰属法」は不要な土地の放棄を可能にする目的で令和3年4月21日に成立し、令和5年4月28日から施行された法律です。
相続でもらった不要な土地を、条件を満たすことで国庫に帰属することができるので、相続放棄に伴うマイナス面を危惧する方はこの法律を活用すれば、土地の処分が可能です。

 

相続土地国庫帰属法が成立した背景には、近年、社会的に大きな問題となっている“所有者不明土地”の問題があります。
所有者不明土地とは、登記上の所有者が亡くなったあと、名義変更もないまま長年放置された結果、誰の所有なのかわからなくなってしまった土地のことです。

 

所有者が不明だと、それを誰かが利用しようと考えても、誰に許可をとればよいのかわからず、結果として使うことのできない土地となって国土の効率利用を阻害します。

 

そこで、こうした所有者不明土地の問題に対処するため、民法や不動産登記法などが改正され、相続発生後3年以内の相続登記が義務付けられました。
さらに、この義務化と表裏一体となる制度として、相続した土地の放棄を認める相続土地国庫帰属法が制定されたのです。

放棄するには費用が必要、放棄できない土地もある

相続土地国庫帰属法で、土地の所有権を放棄するには、負担金の支払いが条件です。

 

土地の放棄に必要な負担金は、審査手数料のほか10年分の土地管理費相当額諸々で、その費用目安は、法務省の公表資料によれば、次の通りです。

 

【土地の放棄に必要な負担金の目安】

  • 粗放的な管理で足りる原野は約20万円
  • 市街地の宅地(200㎡)は約80万円

また、相続土地国庫帰属法によっても、以下の理由で放棄が認められない土地もあります。

 

【相続土地国庫帰属法によっても放棄できない土地】

  • 建物が建っている土地
  • 土壌汚染などがある土地
  • 担保権などが設定されている土地
  • 通路などで使われている土地
  • 係争地

相続したくない土地が、近隣に譲渡できず、市区長村から寄贈を拒否され、相続放棄も難しいようであれば、将来的に国庫に帰属させる方向を検討しましょう。

相続放棄したほうがよいパターンとは

相続放棄の申請が可能なのは、相続の発生日から3か月以内です(上記表参照)。
この短期間に、被相続人たる親が、どのような財産、負債を残していたのかの全容を把握しなければなりません。

 

遠方で生活していた場合は、親がどんな生活を送っていたかわからないので、非常に手間がかかるはずです。
もし、次のようなケースに該当することが判明した場合は、相続放棄を検討するのも一案です。

 

【相続放棄を検討するケース】

    • 親の高額な借金が判明した場合
    • 相続人間の相続トラブルが必至な場合
    • 被相続人が第三者の連帯保証人となっていた場合

相続放棄を選択するとすべての財産に対する権利が消失しますが、被相続人の“死亡保険金”“死亡退職金”“遺族年金”は受け取ることができます。

 

ただし、死亡保険金や死亡退職金を受け取ると相続税の納付義務が発生するなど、“いいとこ取り”はできない仕組みになっているので注意しましょう。

土地の相続放棄手続きの流れ

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ここからは、土地の相続放棄を行う場合の一連の流れについて説明します。
複数名の相続人がいると、相続に関するトラブルに発展しやすいので、お互いの意見を整理し調整を試みましょう。

ステップ①相続財産を把握する

相続放棄を選択するか否か判断するためにも、まずは相続財産・債務の把握から始めます。
相続放棄手続きは自身で行うか、20~50万円の費用がかかりますが、弁護士や司法書士などに依頼して進めることもできます。

 

以下に該当する場合は、自身で行うことも可能でしょう。

 

【相続財産の把握を自身で行いやすいケース】

  • 明らかな債務超過
  • 相続放棄期限が迫っていない
  • 管理が必要な不動産がない
  • ほかの相続人や次の順位の相続人との関係が良好
  • 相続手続きに必要な書類集めと申述手続きに対応可能

ステップ②必要な書類を揃える

財産内容の把握が終わったら、相続するか放棄するかを決断します。
相続放棄を決めたら、亡くなってから3か月以内に相続人ごとに家庭裁判所に申し立てることから手続きがスタートします。

 

相続放棄の申述手続きに必要な書類は、以下の通りです。

 

【相続放棄の申述手続きに必要な書類一式】

  • 相続放棄の申述書
  • 亡くなった方の除籍謄本一式
  • 相続放棄する方の戸籍謄本
  • 亡くなった方の住民票除票または戸籍附票

必要書類に不備があれば、家庭裁判所から連絡が入るので、落ち着いて揃えて漏れがないように準備しましょう。

ステップ③“相続放棄申述書”を作成し家庭裁判所へ提出

続いて、裁判所のホームページなどから“相続放棄申述書”をダウンロードし、所定の書式にしたがい記入していきます。
主な記入内容は、申述書提出者の氏名や住所、連絡先、押印(認印可)、書類作成日、被相続人名、相続の開始を知った日、相続放棄理由、相続財産の概略などです。

 

作成し終わったら、速やかに家庭裁判所に提出しましょう。

ステップ④家庭裁判所から“照会書”が届いたら記入のうえ返送

相続放棄申述書の提出後、“照会書”が2週間ほどの間に郵送されてくるので、記載された質問項目へ記入し、返送してください。
相続放棄を認めるか否かの判断材料になる重要な書類なので、不備や間違いがないか確認のうえ、きちんと返送しましょう。

ステップ⑤“相続放棄申述受理通知書”届いたら相続放棄承認

相続放棄申述書や照会書に不備がなく、相続放棄が承認されると“相続放棄申述受理通知書”が交付、郵送されます。
この通知書をもって、相続放棄が承認されたことになります。
相続財産に負債があった場合は、相続債権者へこの通知書のコピーを必ず送付しないとなりません。

 

なお、相続放棄したら、次の順位の法定相続人に相続権が移行するため、ほかの相続人に必ず連絡を入れましょう。

相続放棄せず限定承認という手もある

親に借金があるので相続放棄したい、という場合には、限定承認という方法もあります。
限定承認とは、プラスの遺産(財産)で相殺できる範囲内でマイナスの遺産(債務)を相続する方法で、債務継承の負担を回避する策として認められています。

 

最終的に資産と借金のどちらが多いのか判断が難しい場合に選択されることが多く、相続放棄同様、3か月以内に家庭裁判所での手続きが必要です。
相続放棄は相続人単独で手続きできますが、限定承認はすべての相続人が介して申し立てしなければなりません。

未登記の土地だった場合は手続きが煩雑に

親の土地を相続したはずが、実は未登記で先代名義のままだったというケースは少なからずあります。
このような状況でその土地を放棄する場合には、遡って相続手続きからやり直す必要があります。
名義変更していない不動産が残っていた場合、相続放棄の手続きが煩雑なので簡単に手放せないのが難点です。

 

このようなケースは弁護士や司法書士などの専門家に依頼して、早目に解決するよう図りましょう。

相続放棄ができなくなるケースとは

以下に該当する場合は、原則的に相続放棄はできません。

  • 相続放棄の期限(3か月)を過ぎてしまった場合
  • 相続財産の一部を使ってしまった場合
  • 相続財産の一部を売却処分してしまった場合

相続放棄する場合は、期間内に迅速に手続きを済ませ、財産には一切手をつけてはなりません。

 

当たり前のことですが、当座の資金需要などが発生しても、誘惑に負けず所定の方針どおりにことを進めましょう。

相続放棄手続きは3か月以内に

相続財産のなかに、あまり価値のない土地や管理しにくい土地があった場合、その土地だけを相続せずに、ほかの財産を相続することはできません。
相続放棄とは、被相続人の持つ財産・債務のすべてをひっくるめて権利・義務を手放すことだからです。

 

土地の処分には、時間がかかります。
子どもに相続させたくない土地をお持ちであれば、権利関係を整理したうえ、近隣に譲渡するか、相続放棄するか、国庫に帰納するかを早めに考えておきたいところです。
相続放棄する場合は、相続の発生から3か月以内に手続きすることになります。

 

相続放棄についてわからない点があれば、ユアーズ・コーポレーションまでお気軽にお問い合わせください。

    

定期借地権とは?メリット・デメリットを詳しく解説

    

定期借地権とは、期間限定の借地権のことで、旧借地法などにおける不備を是正し、地権者が借地制度をもっと活用しやすくするために制定されたものです。

 

その用途や契約期間、更地化義務、買取規定などの有無によって、3種に分かれており、事業用途や住宅用途などで、それぞれ最適な土地活用法が異なります。

 

本記事ではそんな定期借地権について、土地活用促進の観点から詳細に紹介していきます。

定期借地権の概要

定期借地権は、平成4年8月に制定された借地借家法で新たに定められた借地権の一つです。
借地権とは、他人の土地を借りて自分の建物(上物)を建てられる権利のことをいいます。

 

“契約期間が満了すれば、利用者は必ず地権者=貸主に土地を返還しなければならない”という決まりを定めたものです。

 

たとえ貸主・借主の合意があったとしても、期間満了時に更新することはできません。
借主(借地人)が「建物買取請求権を行使したい」と申し出ても認められず、原則として原状回復後に更地で返還するよう定めています。

 

それまでの旧借地法や普通借地権では、期間が満了したら自動的に契約が更新され、正当な事由がない限り契約が終了しないという、貸主に不利な決まりがありました。
定期借地権ができ、人に土地を貸すとなかなか戻ってこない、という不安がなくなったことで、土地の所有者は安心して土地を貸すことができるようになりました。

 

土地活用の流動性を高められるよう、法律がアシストしたのです。
これこそが、大きな狙いといえます。

 

貸主となる地権者と借主である借地人の両方の権利を保護するため、借主に偏りすぎていた旧借地法の権利バランスを貸主に少し引き寄せたというわけです。
権利が狭めまれたことで、一見、不利になったように見える借主も、所有権より割安な価格で借りることができるので、利用次第では有利な制度となっています。

 

定期借地権をうまく利用するためにも、メリットとデメリットを充分に理解しておきましょう。

定期借地権の種類

定期借地権には種類があります。
それは“一般定期借地権”“建物譲渡特約付借地権”“事業用借地権”の3つと“一時使用目的”の合計4つです。
それぞれの内容をよく把握して、目的に合った借地権を選んで契約を結ぶようにしてください。

 

【それぞれの違い】

一般定期借地権 建物譲渡特約付借地権 事業用定期借地権 一時使用目的
契約期間 50年以上 30年以上 10年以上50年未満 一時的に決められる
契約の形式 公正証書 事実上の書面 公正証書 決められる
利用目的 制限なし 制限なし 事業用 決められる
借地契約の終了 契約期間の満了 30年経過時点で譲渡を特約 契約期間の満了 決められる
借地契約終了時 更地で返還 地主による建物の買取 更地で返還 決められる

これら4種の借地権について詳しくご紹介します。

一般定期借地権

借地権つきマンションで主に利用されているのが一般定期借地権です。
50年以上もの長期間、土地の使用を保証した借地権で、一度結んだ契約の更新や期間が延長されることはありません。

 

契約終了後は更地にして地主に返還する必要がありますが、最初の契約期間が50年以上と長いため、契約終了に近い場合は別ですが、安定した居住契約が結べます。
建物の買取請求権もないので、貸主は契約期間終了後に更地となった土地が戻るのを待つだけです。

 

一般定期借地権は、利用目的の制限がありません。
事業用や居住用など、広く用途を考えられるのは、借主たる利用者にとってはメリットです。

 

貸主にしても、50年以上という長期契約によって、安定した地代収入と相続税の節税が見込めます。
借主が住宅用の建物を建てた場合は、土地の固定資産税が6分の1に軽減されるのも貸主にはメリットです。

事業用定期借地権

事業用定期借地権とは、その名の通り、事業用に建物を所有することを目的とする借地権です。
契約期間は最短で10年以上、最長で50年未満までと、一般定期借地権より短い期間を定めることができます。

 

かつては10年以上20年未満と定められていましたが、大型ショッピングモールなどの進出が広まり、平成20年の法改正により上記存続期間に拡大されました。

 

ただし、後述の建物譲渡特約を付帯する場合は、30年以上の期間を定める必要があります。

 

一般定期借地権と違い、用途は事業用に限られるため、マンションやアパートでは適用することができません。
商業ビルや店舗、宿泊施設などといった商用建物のニーズがある土地であれば、活用の余地があるでしょう。

 

場所によっては、事業利用の借り手がつかないということがありえますが、業態を工夫すれば住宅よりも高い地代を設定することもできる点は、貸主にとって魅力といえます。

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権は、借地上の建物を土地の所有者に買い取ってもらえる、特別な借地権です。
30年以上継続して借りるのが条件で、建物は事業系、居住系を問わず適用することができます。

 

一般定期借地権は50年以上とかなり長い期間のため、活用を即断できない地権者も少なくありません。

 

しかし、期間を短くしすぎてしまうと、今度は建物建設に多額の費用を負担する借主が損をしていまいます。
建物譲渡特約付借地権は、こうした一般定期借地権の問題点をカバーするためにできた制度です。

 

この建物譲渡特約は、普通借地、一般定期借地、事業用定期借地の、いずれかの契約の特約としてつけることもできます。

 

土地所有者が建物の買取を実行したら、その時点で借地権は消滅します。
買取が完了した建物は収益物件として活用することもできますが、更地にする場合は解体費用もかかるので、前もって資金計画を立てておくとよいでしょう。

一時使用目的とは

一時使用目的とは、10年未満、場合によっては1年未満でも結べる契約です。
他の定期借地権が最低10年以上の契約であることを考えると、例外的な短期型契約といえます。

 

「土地を貸したいけれど、長期ではなくすぐに返してもらいたい」という場合には、この契約方法がおすすめです。

定期借地権を借りる際の費用

定期借地権の地代は、固定資産税評価額の5~8%程度が目安です。
全国相場は、200m2で年間80万円程度とされています。

 

更地の土地価格をベースに定められますが、その更地の価格は、固定資産税評価額で計算されることが多く、不動産鑑定士が査定して決めます。
もしも、固定資産評価額でなく、路線価評価額で計算する場合は、路線価評価額は時価の80%程度のため、借り手側が有利です。

 

定期借地権の契約時には地代とは別に、保証金を支払う必要もありますが、契約満了時に問題がなければ、全額戻ってきます。
いわば、賃貸住宅における敷金のようなものですね。

 

以上、定期借地権を借りる際の費用は、期間限定の借地権という性格から、土地を購入した場合の6割程度が相場というのが結論です。

 

関連記事:固定資産税の仕組みを解説!いくら払うのか計算方法も紹介!

定期借地権のメリット・デメリット

定期借地権は、期限が決められている借地だからこそのメリットがある一方、長期間、途中解約や売却が一切できないという不自由さもあり、短期・中期の土地活用には向きません。

定期借地権のメリット

種類別のメリットを紹介する前に、定期借地権つき物件に共通するメリットについてまとめておきます。

 

第一のメリットは、所有権つきと比べて購入価格が安いことです。
土地であれば、保証金や権利金などの一時金がかかりますが、所有権つきの土地より安く購入できます。
マンションの場合は、将来の解体に備えてまとまった費用が必要ですが、それでも所有権つきマンションより割安です。

 

また、定期借地権つき物件は、地主に月々の地代を支払う代わりに、入居後の土地に関する固定資産税や都市計画税はかかりません。

 

以下は、種類別に見たメリット・デメリットを表にしたものです。

 

【種類別定期借地権のメリット・デメリット】

メリット デメリット
一般定期借地権 契約更新・期間延長がなく更地で返ってくる 短期・中期の土地活用には向いていない
事業用定期借地権 比較的短期的な土地活用ができる 利用者が事業所用に限定される
建物譲渡特約付借地権 30年以上安定した収入がある 将来、建物を買い取る費用が必要になる
一時使用目的 1年以内など短期間でも貸せる 自由度が高く契約で決める必要がある

ここからは、3つの種類別に、定期借地権のメリットを見ていきましょう。

一般定期借地権のメリット

一般定期借地権で借主が享受できるメリットは、なんといっても利用目的の制限がないことでしょう。
50年以上という超長期の契約ですから、借地権つきマンションで利用されることが多いですが、事業用の建物を建設しても問題ありません。

 

貸主にとってのメリットは、借主が建物を建てた場合、土地の固定資産税が大幅に下がる点や、建物買取請求権がないので、契約終了時に建物を買い取る必要がないことです。

 

更地になって土地が返還されるため、建物を解体する費用もいらず、次の借り手をすぐに探せる点もメリットといえます。

事業用定期借地権のメリット

事業用定期借地権のメリットは、土地を貸した事業者(借主)が自分で建物を建てて利用するので、貸主は初期費用がかからないという点です。
事業がなくならない限り事業者に借りてもらえるため、長期にわたって安定した収入が望めます。

 

契約期間も10年以上50年未満の範囲で調整がしやすく、長く貸す場合には更新もできるなど融通が利きます。

建物譲渡特約付借地権のメリット

建物譲渡特約つき借地権は、貸主が建物を買い取ったあと、その建物を再利用するか、更地にして新たな用途を探るかは貸主次第です。
この裁量権の大きさが、貸主のメリットです。

 

土地を返還してもらったあとでも、残ったアパートやマンションなどを運営していけば、安定した家賃収入が見込めます。
更地で返還されると固定資産が一気に6倍になりますが、建物が建っていることで節税が継続できます。

定期借地権のデメリット

定期借地権つき物件には、借主にはメリットの半面、デメリットもたくさんありますが、その多くは自分で物件を所有していないことに由来します。

 

共通する借主のデメリットの一つは、地主に毎月地代を支払う必要があることです。
土地の価格が上昇すると、地代も値上がりすることがあります。

 

一戸建ては、リフォームに制限があることもデメリットです。
増築や大規模な改修をする際、地主の許可が必要になることがあります。
借地条件に増改築などのルールが定められている場合、守らなくてなりません。

 

期間終了後は、更地にして地主に返す必要があることも忘れてはなりません。
解体して更地にしたうえで地主に返さなくてはならないので、マンションの場合は居住者全員から解体費用を徴収して、毎月積み立てておく必要があります。
一戸建ての場合は、自分で計画的に解体費用を準備しなくてはなりません。

一般定期借地権のデメリット

借主にとっての一般定期借地権のデメリットは、書面による契約が必要なことと、契約の更新ができないことです。
契約を継続したい場合は、更新ではなく、もう一度契約を結び直すことになります。

 

貸主としては、50年以上の契約となるため、超長期にわたり土地を使用することができず、そのほかの活用は事実上放棄する必要があるので、短期・中期の活用には不向きです。

事業用定期借地権のデメリット

定期借地権のなかで、事業用定期借地権だけは必ず公正証書での契約が必要で、この手間がデメリットでしょう。
目的が事業用に限定されるため、近くに事業会社がなければ借手が見つかりにくいリスクがあります。

 

また、短期間の貸し出しでは、契約更新ができないなど、契約更新も契約期間によって異なります。

建物譲渡特約付借地権のデメリット

貸主にとってのデメリットは、買い取った建物が経年劣化などで価値がない場合、解体するしかなく、その費用負担が否応なくかかることです。

 

また、契約の更新はできないため、希望通りに貸して収入を得られない物件でも買い取るほかないのは辛いところです。

定期借地権は貸主・借主双方の権利を守る制度

他人の土地を借りて、自分の建物を建てて収益化する権利を借地権といいますが、定期借地権とは“契約で決めた期間がきたら、必ず地主に土地を返す”ことを義務づけたルールです。

 

借地権の種類によって、建物の用途が決められていたり、更地にして返納することが決まっていたり、満了後に地主に建物の買取を求めたりと、さまざまな取り決めがあります。
制度の趣旨は、貸主・借主双方の権利を守ることにあり、それにより土地活用の流動化を促すのが狙いです。

 

ユアーズ・コーポレーションの一括借り上げシステムなら、借地権、営業権が一切発生せず、解約がスムーズなコインパーキング経営が可能です。
短期間の土地活用ならぜひ、ご用命ください。

    

実はいろいろある!お金をかけない土地活用法

    

「うちの土地も何か有効活用できないものか」と、頭を悩ませている土地所有者は多いことでしょう。

 

この記事では、お金をかけず、あるいは少ない資金で行える土地活用の種類と、土地オーナーとして応分の利益を得る方法を数多く解説しています。
いろいろな方法があるらしい、と見聞きしていても、具体的にどこから検討してよいかわからないという方は、土地活用へ踏み出す第一歩としてお役立てください。

お金のかからない土地活用法とは?

お金のかからない土地活用方法には、どのようなものがあるでしょうか?

 

期間を定めて土地を貸す“定期借地権契約”や、建設協力金を受け取って建物を建てる“リースバック”、プロに土地を委託し運用してもらう“土地信託”など、その種類はさまざまです。

 

ここでは5つの方法を取り上げますが、暫定利用を除く4つは、不動産会社と土地オーナーのパートナーシップで実現します。

定期借地権契約

定期借地権契約とは、事前に決めた一定期間だけ、土地を貸し出す契約のことです。

 

従来土地というものは、「一度貸し出すと途中で必要になっても、なかなか戻ってこない」といわれていました。
しかし、定期借地のルールができたことで、契約期間が満了すれば速やかに返還されることが決まり、オーナーが安心して土地を貸し出せるようになりました。
これにより、土地取引の流動性が高まり、短期から長期まで柔軟な借地契約が結ばれる環境が整ったわけです。

 

定期借地権には、“事業用定期借地権”“一般定期借地権”“建物譲渡特約付定期借地権”の3種類があります。
事業用定期借地権は、短期の契約期間を設定でき、オーナーも比較的高収入を得ることが可能です。
主にホテルやオフィス、店舗や工場用を建てるために利用されます。

 

これに対し、賃貸マンションのような居住用建物の借地権は一般定期借地権とよばれます。

 

建物譲渡特約付借地権は、借り手が建てた建物を土地の所有者が買い取る契約です。
契約期間は30年以上で設定され、契約期間が過ぎれば、土地オーナーは、その翌年から賃貸マンション・アパートを買い取り、土地を取り戻すことができます。
購入資金には、土地の貸し出しで得た地代収入をためておけば、自己資金はいりません。
すでに入居者がいる物件ですから、土地オーナーがゼロから入居者を募集する手間も省けます。

 

関連記事:定期借地権とは?メリット・デメリットを詳しく解説

定期借地権契約のメリット・デメリット

定期借地権は、借りる事業者が建物を建築して利用するため、撤退リスクが低いというメリットがあります。
土地オーナーは建物を所有していないため、修繕費などのコストは発生しません。

 

デメリットは、土地を貸している期間は地代しか入ってこないことと、自己資金ができて賃貸不動産経営をやろうにも、地権契約の満了を待たないとならない点でしょうか。

暫定利用

暫定利用とは、本格的に土地活用をするまで、土地を遊ばせておくことにならないよう、一時的に活用する方法です。
新しい事業のチャンスがあれば、比較的早く撤収が可能なため、一時的措置としては有効な手段でしょう。

 

代表的なものには駐車場や看板設置、資材置き場、シェア農地などがあります。
特に、最低限の整地と砂利敷き、ロープで区画割りをするだけで始められる月極駐車場は、気軽な暫定利用法として人気があります。
管理を不動産会社や駐車場運営会社に任せるのであれば、毎月の手数料を払う必要がありますが、借主も業者が探してくれるので負担はかかりません。

暫定利用のメリット・デメリット

暫定利用のメリットは、初期費用がかからないもしくは少なくて済む手続きが難しくないすぐに始められる土地を手放す必要がないことなどです。

 

一方デメリットとしては、ほかの土地利用法に比べ収益性が低い点や、節税対策にはあまりおすすめできない点です。

建設協力金方式

建設協力金方式は、リースバックともいわれます。
出店を希望するテナントが現れた場合に、土地オーナーがそのテナントから出資を受けて建物を建設し、その建物をテナントに賃貸するという方式です。
主に、コンビニエンスストアやホームセンターなどのロードサイド型店舗の一棟貸しで使われる方法です。

 

建設協力金の借り入れは一般的な融資より金利が低く、借入期間も長期に設定できます。
賃料を払わない限り出資したお金が返済されないので、テナントの撤退するリスクは低いといえます。
万が一、テナントが撤退した場合に備え、残る融資額を撤退時に放棄させる契約を結ぶことも可能です。

建設協力金方式のメリット・デメリット

メリットは、借主(テナント)の撤退リスクが低い金融機関の融資を伴わない借主を見つければ即土地活用を始められることです。

 

デメリットとしては、撤退したテナントが債権を放棄すると税金が発生することや、返済が長期間となるケースが多く、その間は土地活用の転向ができない点が挙げられます。

土地信託

土地信託は、プロに土地の運用を委託する活用方法です。
メガバンク系列の信託銀行などに土地の運用を任せて、収益を上げてもらい、その運用益を配当金として得る方式です。

 

土地さえあれば、お金がかからず、知識も求められません。
ただし、信託会社や金融機関から、収益を上げられる土地だと判断される必要があります。

土地信託のメリット・デメリット

土地信託のメリットは、土地活用の知識がなくても始められること、信託受益権を売買できること、土地が建物つきで戻ることなどでしょうか。
万が一自己破産しても、信託財産は処分対象外というのもメリットといえるでしょう。

 

一方で、信託の手数料がかかることや、配当金が約束されないこと、土地活用方法が人任せになることなどはデメリットに挙げられます。
信託報酬が収益額を下回った場合に、損失をオーナーが負担しなければならないことにも注意が必要です。
また、先述の通り信託できない土地がある点も踏まえておきましょう。

等価交換

等価交換は評価額が高く、広い土地を有している場合に選択肢となる活用方法です。
土地オーナーが不動産会社などのデベロッパーを共同事業者として契約し、土地の一部を共有することで収益物件を建ててもらいます。
竣工後は、たとえばマンションを建設した場合は、マンションの所有権を出資比率に応じて(等価分)受け取る仕組みです。

 

不動産会社は土地の所有権を得ます。
土地の条件によっては、オフィスビルやテナントビルなどの収益物件を建てる場合にも利用される方式です。

 

不動産会社が建物の資金を全額負担し、建設後に建物と土地の価値を等価で交換するため、土地オーナーは資金を出す必要がありません。
所有権を得た建物を、賃貸物件として貸し出すこともできるので、家賃収入を得ることが可能です。

等価交換のメリット・デメリット

等価交換のメリットはなんといっても、資金ゼロで所有地に収益物件が建つことでしょう。
不動産会社というプロが選んだ土地ですから、収益性を重視した活用が可能になる確率は高いといえます。
物件を管理する手間がかからないところも、土地オーナーにとっては魅力的です。

 

デメリットは、土地を提供して建物を建てることから、土地と建物の権利が複雑化する点です。
特に区分所有ではなく共同所有の場合、売却には共同所有者全員の同意が必要になるので、対応が難しくなります。
相続が絡んでくると、余計にトラブルが起こりやすくなるので、注意が必要です。
また、土地信託同様、等価交換が可能な土地も限られています。

事業主に土地を貸して利用料を得る

土地活用といっても、アパートやマンション経営、店舗、太陽光発電など、選択肢は数多くあります。
そのなかでもここでは、自己資金が少ない場合におすすめの土地活用を紹介します。

一括借上げ方式のコインパーキング

コインパーキングは月極駐車場ほどではないにせよ、投資金額が比較的少なく、需要さえあれば狭小地でも変形地でも始められます。 

 

収益性は賃貸アパート経営などに比べると低いですが、時間貸しなので、常に需要がある駅前などの場所を確保できれば、アパートや月極駐車場のような退去リスクがありません。
ただし、近隣に競合ができると賃料が下押しされる可能性がある点には注意したいとことです。 

 

運営方法は自己管理、管理委託、一括借り上げの3種類があります。 

資金のないサラリーマンが副業で行うとしたら、管理運営を丸投げでき、安定した賃料が得られる一括借り上げがよいでしょう。 

太陽光発電

太陽光発電も、比較的投資額の負担が少ない土地活用です。
お金がかかるのは、太陽光パネルと架台のみです。 

 

設置場所は、日照時間が長く、発電パネルを敷き詰められる広い土地で、系統電源に接続できる環境など、条件が限られるので専門家に適性判断を依頼しましょう。 

 

収益性は、太陽光発電の買取価格が下がっているため、以前に比べると低くなってきています。
所有している土地が郊外でかつ広大な広さがあり、駐車場やアパートなどの需要がない場合に向いています。 

比較的少ない自己資金で安定した運営ができるため、田舎ではよくみかけるようになってきました。 

土地一括貸しのトランクルーム

屋外にコンテナを設置して運営するトランクルームサービスを、レンタルボックスといいます。

 

周囲にアパートやマンションがあり、ほかの土地活用に利用しにくい場合は、屋外型のレンタルボックスがおすすめです。
建築費用は必要ですが、内装にほとんど費用がかからないため、資金が少ない土地所有者にも向いています。

資材置き場

建設会社などに資材置き場として貸し出すことも、お金のかからない土地活用方法の一つです。

フェンスなどの簡単な囲いを設置するだけで始めることができ、長期契約が見込めるのがメリットです。

一方で、騒音や粉塵の発生の可能性、重機による地盤への影響があるため、周辺住民の理解を得る必要があります。

資材置き場を作るには、まず土地の地盤強度を確認し、周囲にフェンスを設けます。

必要に応じて簡易舗装を行い、監視カメラなどを設置しましょう。

利用規約を作成したら、建設会社や工務店への営業活動を始めます。

貸し農園

所有地を農園として第三者に貸すことで利用料を得るビジネスです。

貸し農園は市街地ではなく、調整区域など建物が建てられない地域や、駐車場経営も難しい土地など、かなり選択肢が限られた土地に向いた活用法です。

収益性が低く、節税効果もないため、地価が高い都市部や市街地で行うには適さないものの、田舎の土地を有効に活用することができる点は強みといえます。

休耕地になってしまっている農地などを、そのままお金をかけずに活用したいという場合には、検討の余地があるでしょう。

ドッグラン

ドッグランとは、高速道路のサービスエリアなどでみかけるペット用の運動スペースです。都市部や住宅密集地では、潜在的需要が多いので近くにあったら喜ばれることでしょう。

設置に必要な設備は、安全なフェンス、水飲み場とトイレ、日よけ・雨よけ付きの休憩スペース、排泄物処理のための袋とゴミ箱、利用者用の駐車スペースなどです。

ドッグランの運営は、会員制か都度利用制に分かれていますが、ペットの健康証明書の確認や定期的な衛生管理と設備点検が必要なので、専門家のアドバイスが必要になります。

ペットトレーナーによるイベントなども開催すれば、宣伝効果も見込めるはずです。

簡易キャンプ場

郊外で自然が豊かな地域なら、簡易キャンプ場を開設するのも一案です。

始めるにあたって必要なことは、テントサイトの整地や簡易トイレ、炊事場、駐車スペース、防火設備(消火器、水バケツなど)、案内板・注意事項の設置など。

行政と掛け合って地域のキャンプ場としてパンフレットに掲載してもらったり、地元食材を使ったBBQセットを提供したりといった誘客も、それなりに工夫しましょう。

これらのサービスにより、名前が知られるようになり、リピーターが増えていけば、安定した収益を得る道が開けます。

資金なしの土地活用の注意点

土地活用は、資金なしでも始められますが、最低限“自分の土地を所有している”ことが必要です。
この土地を、個人や企業にさまざまなかたちで貸し出したり、売却したりすることで収益を生み出すことができるのです。

 

つまり、資金なしの土地活用とは、“自己資金で建物を建てたり、設備投資したりする必要がない”ことを意味しているにすぎません。
“資金もない、土地もない”では、さすがにスタート条件が悪すぎます。

 

では、“資金はないが土地はある”状況で土地活用を進める際に、注意するポイントとはどのようなものでしょうか。

収益性が低い場合がある

お金がかからない土地活用を追求した結果、収益まであがらなくなっては土地を持ちつづけるのが難しくなってしまいます。 

固定資産税や管理費など、維持費が持ち出しになっては土地を持っている意味がないので、せめて維持費分ぐらいは捻出する必要があるわけです。 

 

お金のかからない土地活用は節税対策にもなりにくいので、税金分の稼ぎをあげるというのも実はそれほど簡単ではありません。 

 

そうしたなかで、土地活用で収益を出すには、土地の立地や特性に合った活用を選ぶことが第一歩であり、最重要ポイントといえるでしょう。 

ローンの利用にも自己資金は必要

土地活用で使えるローンには、“事業用ローン”と“不動産担保ローン”があります。
ただし、近年は融資が難しくなりつつあり、特にアパート経営などは、借入総額の10%の自己資金を用意しないと、ローンの審査を通ることは厳しいようです。

 

背景として、2015年の相続税制改正により、アパート経営が増加したための供給過剰や、2018年の“かぼちゃの馬車騒動”(サブリース事業の破綻)などが指摘されています。

 

所有不動産を担保にして融資を受ける不動産担保ローンは、土地活用の目的に限定されないので、さまざまな事業の融資に利用可能です。
一方で、ローンの返済が不可能になれば、担保の不動産が売却されてしまうリスクがあります。
事前にしっかりと審査基準や金利などを調べておくことは、ローン利用の鉄則です。

ローンを利用した土地活用の失敗例

ローンや融資の審査に通過したとしても、借入総額を増やしすぎて毎月の返済額が大きくなると、経営が火の車となってしまいます。
築古のアパート、修繕間近なマンションなど、リフォーム費用の積み立てがかさみ、かといって家賃も上げられないでいると、賃料と返済額の差がなくなり赤字に近づきます。

 

常に満室という前提でローンの返済計画を組んだりすることのないよう、資金計画は保守的にかつ念入りに検討しましょう。

土地の特性を見極めよう~用途地域の確認も~

土地にはそれぞれ、“どんな用途に適している”といった特性があります。
所有している土地が、そもそもどのような土地なのかを見極めないと、不動産投資は失敗します。

 

将来的にもアパート経営に適した土地なのか、そもそも店舗に向いているのではないか、などの土地の特性を理解して方向性を決めるのが、第一歩です。

 

専門家の意見を取り入れ、資金なしでも失敗しない方法を選びましょう。

 

また、日本で建築物を建築する場合は、建築基準法を遵守する必要があります。
建築基準法では13種類の“用途地域”が設定されており、建築できる建物の種類や用途が制限されています。

 

土地活用を検討する際には、必ず自分の土地がどの用途地域に該当しているか、事前に確認しましょう。
用途地域を調べる際は、“用途地域マップ”がインターネットに公開されているので便利です。

利回りとランニングコストも大切

土地活用をするのであれば、どのくらいの収益をどのくらいの期間で得られるのかを把握することが大切です。
仮に、借入金で土地利用を始めた場合、毎年いくら返済して完済までどのくらいかかるのか、という計画を立てるうえでも、これは重要です。

 

そのためには、土地の価格に対する収入の割合を示した“表面利回り”と、表面利回りに初期費用とランニングコストを加えた“実質利回り”の違いを理解しておきましょう。

節税効果が期待外れに終わることも

土地活用のなかでも、固定資産税や相続税などの節税効果が大きいのは、賃貸住宅系の土地活用です。
逆に、お金のかからない土地活用では、節税効果はあまり期待できません。

 

土地活用に相続税対策をする場合、初期費用をローンで調達してマイナス資産(負債)を作り、相続財産を目減りさせる手法がとられます。
しかし、お金のかからない土地活用では基本、債務を作らないため、相続財産を減らすことができません。

 

また、土地をそのまま貸す場合、固定資産税は更地の6分の1に、都市計画税が3分の1になるなど、大きな節税効果を生む“住宅用地の特例措置”の対象とはなりません。
定期借地のなかでも事業用定期借地権での契約では、用途を事業用と限定しているため、特例は適用外です。

お金をかけない土地活用でも節税できる?

お金のかからない土地活用で、一定条件のもと、節税効果を得られる税金は固定資産税と相続税です。

実際、これらの納税対策として土地活用に取り組んでいる方も多く、土地活用をするうえでは欠かせない視点となっています。

ここからは、その固定資産税と相続税について、お金をかけない土地活用の節税効果について考えます。

固定資産税を節税したい場合

定期借地権・建設協力金方式などで賃貸アパート、賃貸マンションを建てた場合は、住宅用地の特例が適用となるため、節税効果が生まれます。

収益で税金を納めることができれば、納税対策にはなるのではないでしょうか。

特例が適用になると、固定資産税は200㎡以下の部分が6分の1、200㎡以上の部分は3分の1に減額されます。

住宅用地の課税標準の特例

区分  面積  固定資産税  都市計画税 
小規模住宅用地  200㎡以下の部分  価格×6分の1   価格×3分の1 
一般住宅用地  200㎡超の部分  価格×3分の1  価格×3分の2 

 

ただし、定期借地のなかでも“事業用定期借地権”での契約では、用途を事業用と限定しているため適用外です。

イベントスペースやキャンプ場にも特例は適用されません。

固定資産税を減額したい場合は、あくまで居住用物件の活用方法に限定されるのです。

相続税を節税したい場合

相続が発生した場合、“小規模宅地の特例”によって相続税が節税できるかもしれません。

これは、相続する土地の評価額を最大80%まで減額できる制度です。

どんな土地が対象かといえば、故人の自宅の土地である“特定居住用宅地”や、貸し駐車場などの“貸付事業用宅地”で、前者は80%、後者は50%まで減額が可能です。

貸し駐車場の場合は土地上に建築物(構造物)があるのが必須要件なので、「停め板以外何もないのが駐車場なのに建築物?」と思われるかもしれません。

しかし、それほど難しい話ではなく、駐車場ではアスファルト舗装すればアスファルトが“構造物”として認められるため、小規模住宅地等の特例の適用を受けることができます。

トランクルームも同様です。

ただし、小規模宅地の特例の適用要件は限度面積が200㎡までと決められており、それを超えた土地部分は減額が適用されません。

250㎡の駐車場であれば、200㎡以下の部分は50%まで減額ですが、残りの50㎡の部分は減額なしとなります。

国や自治体からの補助金も活用しよう

土地活用には、国や自治体から補助金が出る活用方法もあります。

 

【公的な補助金を受けられる可能性がある土地活用法と補助金一覧表】

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅) 補助限度額 1,000万円新築補助率:1/10
保育園の運営 補助割合
国=整備費用の2分の1
自治体・事業運営者=整備費用の4分の1
太陽光発電の設置 自治体によって助成制度あり
空き家の解体 自治体によって助成制度あり

これ以外にも、サ高住には固定資産税と不動産取得税の優遇措置、保育園の運営には都市計画税と固定資産税が最長5年間全額減免などの、税制優遇措置が設けられています。

お金をかけない土地活用法はいくつもある

本記事では、お金をかけない土地活用法をテーマに、代表的な5つの方法とそれぞれのメリット・デメリットを解説しました。 

あわせて、土地活用で固定資産税や相続税が減税となるケースも紹介しました。 

 

手元に資金がなくても、利用価値の高い土地を所有していれば、不動産会社に出資と活用を任せて、その地代や運用利益のみを手にする方法はいくつもあります。
特に、コインパーキングや太陽光発電であれば、少ない資金で開業が可能です。 

 

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