老朽空き家の増加は、景観への影響や防災、治安面で社会問題となっています。
売却も難しく、解体にもそれなりにお金がかかるし、住宅用地に適用されていた固定資産税の優遇措置もなくなってしまうので、多くは放置されているのが現状です。
本記事ではこの問題を前向きにとらえ、空き家を解体するメリットと、費用を抑える方法、解体して更地となった土地の活用法等を提言しています。
この問題に悩む地主様はぜひご一読ください。
目次
空き家は解体すべき?
住まなくなった空き家、相続しても住まない家はそのまま放置しておくと、老朽化に伴うさまざまな問題が発生します。
しかし解体するには費用の工面や、更地にしたあと高くなる税金の支払いという金銭的問題が待ち受けています。
平成26年に制定された「空家等対策特別措置法」では、適切に管理されていない空き家を“特定空家”に指定し、改善の勧告や命令ができるようになりました。
これにより、命令に反すると50万円以下の罰金処分や、行政代執行(所有者の承諾を得ずに建物を解体し、その費用を所有者に請求すること)が行われる可能性があります。
もとより特定空家に指定されてしまうような建物は、維持・管理も売却も難しい老朽物件ばかりですから、お金がかかっても早急に解体処分するほかないのが現実です。
また、特定空家でなくても、売れない・貸せない・管理もできない老朽物件は全国で増加しており、景観・倒壊・治安面で大きな社会問題となっています。
空き家を解体するメリット
ここは前向きに考え、空き家を解体することを決めたと仮定します。
その場合、どのようなメリットがあるでしょうか。
以下で順に解説していきましょう。
メリット①老朽家屋の倒壊・治安リスクがなくなる
家を解体すると、倒壊リスクにおびえる日々から解放されます。
家は、人が住まなくなると傷みが早まるといわれています。
住んでいればわかる柱や梁などのシロアリ被害や、度重なる地震でひび割れが拡がっていたという経年劣化が、無人の家では気づけず倒壊のリスクが日々高まるというわけです。
また、一軒家に日常的に人がいる気配がなければ犯罪者や浮浪者のたまり場にされたり、放火犯に狙われたりする治安上のリスクもあります。
家を解体すればこうした対策にもなるので、近隣住民の不安解消にもつながります。
メリット②管理・維持コストを削減できる
家を所有していると管理・メンテナンスの費用が発生しますが、解体すれば管理費は消滅し、更地になった土地の維持コストだけになります。
家の解体後は、庭の手入れや家屋の掃除の気苦労もありません。
これにより時間的余裕も生まれることでしょう。
メリット③土地を売却しやすくなる
空き家を売却する際も建物を解体し、更地にしておいたほうが断然有利です。
老朽化した空き家が建ったままの状態で購入したら、建物の解体にかかる費用を自己負担しなくてはなりません。
このような“古家付土地”とよばれる物件は一部で人気があるとはいえ、なかなか買い手も見つからないため、売却までに時間を要し、売却価格もだんだんと低下する傾向にあります。
メリット④土地を新たに活用できる
空き家を解体して、すぐに違う土地活用法に転用すれば、固定資産税の上昇リスクを抑え、収益も生み出すことができます。
ただ更地にしておくより、実戦的な対処法ですが、新しく投資を始めるには資金的余裕も必要ですから「更地にするのにお金を使ってしまった」という方には難しいかもしれません。
空き家を解体する際の注意点
空き家になった実家を解体することを決め、いざ実行という前に、確認しておいてほしいことがあります。
これらを十分踏まえたあとで、かつての住まいを解体すべきかどうか決断してください。
注意点①固定資産税の減税が適用されなくなる
空き家を解体すると、住宅用地に対する固定資産税の減額が適用されなくなり、税負担が一挙に増えてしまう、という問題があります。
住宅用地の場合、固定資産税は1/6もしくは3/1に減額されています。
しかし更地にすると、この特例がなくなるわけです。
固定資産税の大幅増徴を回避したいのであれば、空き家を解体しないでおくというのも選択肢の一つですが、時間稼ぎでしかないのが苦しいところです。
注意点②解体費用が高額になる場合がある
解体工事の費用は、立地や建物の大きさ、建物の構造でおおよその相場が決まりますが、他にも物件ごとのさまざまな事情や理由が絡んで、思わぬ高額となることもあります。
一般的な解体工事費用が高騰する要因以外にも、費用が高くなりやすい事象やイレギュラー要因は数多く存在します。
施主としてはそのことも頭に入れたうえで、契約交渉に臨むことが大切です。
解体費用を少しでも安くしたいと考えるなら、自分でできることは極力自分で行ったうえで、項目を絞り込んで解体業者と契約するようにしましょう。
これについては後ほど説明します。
空き家を解体する際にかかる費用
前述したように、解体費用は建物の立地・規模(大きさ)、構造によって変わります。
建物の“立地”によって左右されるとは、どういうことかというと、解体作業を行うための重機が入っていけずに人力での作業が増える場合は料金が上がるというのがその一例です。
当然、建物の“規模”が大きいほど解体作業が大掛かりとなるので費用が高くなります。
また、建物が木造なのか鉄骨造なのか、1階建てか2階建てかの構造によっても費用は変わります。
このほか、建物の種類や地域などさまざまな条件によっても解体費用は異なりますが、大まかな目安は一般的な木造一戸建て(建坪30坪程度)で90万~150万円程度です。
構造ごとの解体費用
一軒家の空き家解体にかかる、構造別の費用相場は以下のとおりです。
建物構造ごとの解体費用
木造 | 3万~5万円/坪 |
鉄骨造 | 5万~7万円/坪 |
鉄筋コンクリート(RC)造 | 6万~8万円/坪 |
たとえば40坪の一軒家を解体する際の費用は、木造住宅なら120万~200万円、鉄骨造なら200万~280万円、鉄筋コンクリート造なら240万~320万円程度となるわけです。
付帯工事の費用
解体工事の付帯工事別の相場は以下のとおりです。
付帯工事費とは、解体工事費本体に対して、別に必要となる工事費用のことです。
塀や門扉、車庫、庭にある構造物の撤去がこれに当たります。
付帯工事の種類別費用
付帯工事の種類 | 費用 |
家屋内の残留物撤去 | 8,000~1万円/約1㎡ |
ブロック塀解体 | 1万円/1本 |
庭木の撤去 | 2,000~3,000円/約1㎡ |
庭石の撤去 | 1万円/約1t |
倉庫の撤去 | 2万~3万円/1個 |
門・フェンスの撤去 | 2万円/1組 |
アスベストの除去 | 2万~8万5,000円/㎡(300㎡以下) |
このなかで、発がん物質アスベストについては、労働安全衛生法の改正により使用禁止になった、2006年9月1日以前に建てられた家には使用されている可能性があります。
法律による事前の調査や、アスベスト除去作業が必要になることもありますが、その費用は処理面積200㎡の場合で400万~1,700万円と非常に高額です。
空き家の解体費用を抑える方法
空き家の解体で、費用を抑えるポイントを紹介します。
探せばいろいろあるのですが、ここでは以下の3つについて説明します。
補助金・助成金制度を活用する
自治体では、街の環境や景観を守るために、老朽化した建物や空き家を解体するための補助金や助成金制度を設けているので、問い合わせてみましょう。
市町村のホームペ―ジに未掲載であるケースもままあり、担当窓口もわかりにくいので、こちらからアクションを起こさないと辿り着けないのが難題です。
申請受付や工事完了時期の条件があるだけでなく、予算額に達したら終了といったハードルも待ち受けていますが、めげずに挑んでみる価値はあります。
工事費用の助成はかかった金額の2~5割程度ですが、固定資産税の減免を用意している自治体もあり、数十万円単位の節約につながることもあるからです。
具体的にどのような解体関連補助制度があるのか見てみましょう。
老朽危険家屋解体撤去補助金
「老朽危険家屋解体撤去補助金」は、老朽化により倒壊のおそれがある空き家の解体を促すため、自治体が国と連携して解体費用を支援する制度です。
申請の前に、自治体による現地調査があるため、まずは、管轄の自治体に問い合わせてみてください。
この補助金の支給額は、一般的に解体費用の1/5~1/2程度ですが、自治体ごとに異なるため、あわせて確認しておきましょう。
建て替え建設費補助金
「建て替え建設費補助金」とは、耐震面で問題がある建物を取り壊し、新しく建て替える際に受けられる補助金です。
解体費用だけでなく、建築費用も一部支給されます。
支給額や申請条件は自治体によって異なります。
都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金
「都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金」は、街の景観を守るため、長いあいだ放置された老朽空き家の解体費用を補助する制度です。
支給を受ける条件として、空き家の所有者に、解体工事後に景観形成基準を満たす土地の利用方法が求められます。
支給額は解体費用の1/5~1/2程度といわれていますが、ほかの補助金制度と同様に、自治体に詳細を確認する必要があります。
不用品の処分を自身で行う
空き家に残した遺品や家具、家電などの不用品(残置物)は、解体工事会社経由で民間の専門業者に処分を依頼することもできますが、費用がかかります。
可燃ゴミや資源ゴミ、不燃ゴミについては、指定の曜日にゴミ回収場所に置いておけばよいので、たいした手間はかかりません。
粗大ゴミについても、自治体の定めた方法で搬出するか、トラックなどでリサイクルセンターへ直接持ち込めば費用はかからないので、自分で処分しましょう。
なお、民間業者の不用品の処理費用の相場は分量にもよりますが20万~30万円程度です。
建物滅失登記の手続きを自分で行う
「建物滅失登記」とは、法務局の登記簿から建物を解体しなくなったことを届け出す手続きです。
解体工事後、1か月以内の滅失登記が義務づけられており、違反すると10万円以下の過料に処されることもあります。
土地家屋調査士に依頼すると、4万〜5万円の手数料がかかりますが、自ら行う場合は登記簿謄本の取得費用(1通1000円)程度ですみます。
管掌の法務局に建物滅失登記申請書 (以下URLよりダウンロード)と各証明書を郵送するだけで済みますから、自分で行うのが得策です。
空き家を解体したあとの土地活用
解体工事後の更地をそのまま放置すると、最大6倍になった固定資産税の支払いに苦しむことになります。
一刻も早く土地活用を考えなくてはなりません。
ここでは主に3つの選択肢を取り上げます。
売却する
更地にしてから売却すれば、自由に建物を建築できるため、空き家がある状態より買い手が見つかりやすくなります。
建物の劣化がひどく、どのみち解体が避けられない場合や、土地の価値が高い場合に検討したい方法です。
ただし、売却は土地価格が変動するため実行タイミングが難しいのがデメリットです。
早急に売却したい場合は、不動産業者に直接空き家のまま買取を打診してみましょう。
買い手を見つける時間やコストがかからずに済みます。
ただし、空き家買取の相場は通常の仲介売却の約7割と安いため、空き家自体の資産価値が高い場合にはもったいない方法かもしれません。
リノベーションもしくは新たに家を建てる
SS
空き家を空き家として貸し出すことができれば、処分に困っていた不良資産の空き家が収入を生み出す資産に生まれ変わります。
空き家の状態や立地が良い場合、またリノベーションをする資金的余力がある場合は検討に値する方法です。
しかし、空き家の状態が解体するしかないほど悪く、立地の良さを活かせていない、建て替える資金的余裕がある場合は、解体後にすぐ新築という選択肢もあってよいでしょう。
駐車場として活用する
解体工事後の土地がどのように活用されているかといえば、よく選ばれるのが駐車場経営です。
特に、駐車スペースが限られる都市部などでは、コインパーキングの人気が高いといわれています。
一括借り上げ方式なら管理・運用は管理会社に丸投げして、毎月安定した賃料を手にできます。
駐車場経営の成否は立地がすべてなので、その土地がコインパーキングとして収益が図れるのか、まずプロの管理会社に査定してもらいましょう。
空き家はコストを抑えて解体し新たな土地活用を
誰も住まなくなった家、相続したものの使い道のない古い家は、そのまま空き家として放置しておくと、いずれ維持・管理が難しくなってきます。
手放そうにも難しく、解体するほかないのですが、少額とはいえない費用と更地にかかる固定資産税の増徴という問題も待ち受ける難しい問題です。
解体後の土地活用には、費用が安く、初心者でも簡単に始められるコインパーキング経営も有望な選択肢となるでしょう。
一括借り上げ方式なら運営・管理は駐車場運営会社が行うため、駐車場経営の知識がなくても毎月安定した賃貸収入を得ることができます。
活用しきれていない土地の駐車場経営の適・不適の査定は、ユアーズ・コーポレーションにご相談ください。